西村音響店

カセットデッキの録音を質を決めるイコライザー調整

カセットデッキのいろは 第30回

 

こんにちは、こんばんは。西村音響店の西村です。

音響店のブログをお読みくださりありがとうございます。

今回は、録音の出来栄えをよくするためには欠かせない、録音イコライザーについて取り上げたいと思います。

略してEQとも言います。


 

 カセットテープに高音質な録音するために必要なのが、録音レベルバイアスの調整です。もうカセットデッキに使い慣れている方なら、身体で覚えていると思います。

 バイアスは高音域の強さを決めるもので、音質の調整には必須です。ある程度のグレードのカセットデッキには、バイアスの調整つまみが付いています。

 バイアス調整で音質を自由にコントロールする作業は、カセットテープの面白さの一つではないでしょうか。

 さて、録音レベルバイアスは録音の重要な要素ですが、それに加えてもう一つ付け加えて欲しいのが、今回の録音イコライザーです。

 

 レベル・イコライザー・バイアスの3点セットで覚えていただけたらと思います。

 L・E・B (レブ)と覚えましょう(笑)

 


 

イコライザーは中音域を調整します

 録音レベルが低音域、バイアスが高音域という役割であれば、イコライザーは中音域の役割に相当します。

 正確には、バイアスが8kHz以上の最高音域、イコライザーが1~8kHzの高音域に影響を及ぼしますが、ここでは簡便にイコライザーを中音域とします。

 

 実は、録音レベルとバイアスの2つを調整して、さらにキャリブレーションまで行っても、カセットテープの音質は同じにはなりません。

 なぜかと言うと、中音域の要素がないからです。

※キャリブレーション=メーターを見ながら低音域と高音域のバランスをとること。

 

 テープによっては、中音域が強めに出てボーカル(歌)が良く聞こえるとか、逆に中音域が少し弱いので重低音が良くなるという事もあります。テープに塗られている磁性体は、それぞれ特性が違いますので、それが音質の違いとなって現れます。それを補正してあげるのが、イコライザーです。

 しかし、どちらかというとイコライザーを調整する機能が付いていないカセットデッキの方が多数派です。バイアスを調整すれば、どんなテープでも同じ音質でなると思ってしまうかもしれませんが、同じにはなりません。

 逆に言うと、イコライザーの調整が出来ないからこそ、カセットテープの音質がそれぞれ違うという個性も守られているとも言えるでしょう。

 

実際にイコライザーを調整してみましょう

 では、イコライザーを調整をやってみます。

 使うデッキはSONY TC-K333ESLです。イコライザーは「LOW・NORMAL・HIGH」の3段階で調整ができます。

 ホワイトノイズ(ラジオでいう砂嵐)を使って、スペクトルアナライザーという測定器に通すと、どのように音質が変化するかがよく分かります。

 

 まずはキャリブレーションをとります。使っているテープは、1983年のTDK MA-Rです。

 イコライザーはLOWで調整が合いました。

 

 キャリブレーションをした後、ホワイトノイズを録音し、スペクトルアナライザーで確認します。すると、下ののような結果がでました。(画像をクリックすると拡大画像を表示します)

 

 

 ここからイコライザーを、LOW→NORMAL→HIGHの順で切り替えてみましょう。切り替えるにつれて高音域が強まっていきます。


(画像をクリックすると拡大画像を表示します)
 

 

 これだけでは、高音域だけが強まってしまうので、バイアスを少し深くして高音域を抑えると、中音域に違いが出てきます。

 少し分かりにくいかもしれませんが、イコライザーを高くすると中音域が強まって、グラフが平坦に近くなっていきます。遠目で見ると分かりやすいかもしれません。


(画像をクリックすると拡大画像を表示します)
 

 イコライザーを切り替えると、直接的には高音域に影響を及ぼしますが、バイアスの調整を併用することにより、中音域をコントロールすることができます。テープによっては、中音域の部分が盛り上がって山なりのグラフになります。

 ただし、中音域をコントロールする場合、キャリブレーションのメーターは高めか低めにずれますので、最終的には耳で聴きながら調整していく必要があります。

 

バイアスだけで調整できないときはイコライザー

 カセットテープによっては、バイアスを目一杯浅く、もしくは深くしても、調整が合わないことがあります。

 キャリブレーション機能を使う場合ですと、高音と低音のメーターの振れ方が同じにならないという時です。

 

 このような時は、イコライザーの調整を活用しましょう。

 

 ところで、デッキとテープには相性があるという話を耳にしたことはありませんか。

 例えば、Aのデッキではバイアスを浅めにすると調整が合うのに、Bのデッキは深めにしないと合わないという状況です。

 これは各々のカセットデッキに設定されているイコライザーが異なるためです。つまり、中音域を強めにしているのか、弱めにしているのかは、デッキによって違います。

 

 先ほど動画でご紹介したデッキ(SONY TC-K333ESL)は調整ができるので、どんなテープにも万能に録音をこなすことができるデッキと言ってよいでしょう。

 

まとめ

 録音レベルとバイアスは、カセットテープの録音における絶対要素ですが、忘れがちなのがイコライザーです。カセットテープの音質は中音域で決まるといっても過言ではありません。

 バイアスが浅すぎて音が歪んでしまう場合に手助けするのも、イコライザーの重要な役割です。

 イコライザー調整が可能なカセットデッキは限られますが、1台あると録音するときに非常に便利です。

 別の方法としては、別の装置を使ってイコライザーを調整するという方法もあります。

 カセットデッキとカセットテープの組み合わせは、実に数万通りありますから、実に面白いものです。

 

 最後までお読みいただきありがとうございました。

 

動画でもご覧いただけます



 

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