カセットデッキのいろは 第29回
こんにちは、こんばんは。西村音響店の西村です。
音響店のブログをお読みいただきまして、ありがとうございます。
今回は、カセットテープの薄さについてのお話をやってみたいと思います。
カセットテープを使ったことのある皆さんであれば、こんな経験ありませんか。
「お子さんにやられてしまった」とか、「俺、やって怒られたなー」という方、いらっしゃるのではないでしょうか。
カセットテープって少し引っ張り出しただけでも、寝ぐせのようにカールしてしまいます。
それくらい、カセットテープは薄いです。
カセットテープの薄さは何ミクロン?
カセットテープの薄さを数値で表すと、9~18ミクロンです。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、テープの分数が長いほど薄くなります。
※「ミクロン」はひと昔前の単位で、今は「マイクロメートル」と呼ぶ方が主流です。
薄いテープの代表でもある120分テープは9ミクロンです。続いて、90分テープが12ミクロン、60分テープが18ミクロンとなっています。
書籍に記載された数値ですので、テープのメーカーや種類によっては多少異なるかもしれません。
数値だけではしっくり来ないと思いますので、身の回りのものを探してみると、食品用ラップが約11ミクロンだそうです。
つまり、カセットテープの幅(3.81mm)にカットしたラップを、再生中は常に走らせているというイメージになると思います。
ちなみに、カセットテープの両端についている透明なリーダーテープは、38ミクロンです。
38ミクロンはどんな物に相当するか、「38マイクロメートル」と検索してみました。すると、プリンターで印刷して作るラベルシールが出てきました。
薄いテープは極力使わないようにしましょう
カセットデッキの説明書に、120分テープは大変薄いので使用しないでくださいとよく書かれています。
片面で1時間も録音できて、ラジオ番組の録音(エアチェック)には非常に便利です。その代わりに欠点も増えます。テープが薄いのでダメになりやすかったり、デッキによっては絡まってしまったりする危険があるため、推奨していないことが多いです。
かといって、それほど気にしなくてもよいと思います。
完璧に近い音質を求めるのは難しいでしょうけど、BGMkとして流すのであれば、120分テープは有力だと思います。120分テープでも、まぁまぁ綺麗な音で録音できます。
ただ、しっかりデッキの手入れをしていないと、突然ぐしゃぐしゃっと絡まってしまうかもしれません。
修理に120分テープは必須?
欠点の多い120分テープですが、実はカセットデッキの修理において強い味方でもあったりします。
先にご紹介したように、テープが薄いので再生中に絡まってしまう可能性が高いです。しかし、それを利用して、カセットデッキの精度がどのくらいかを調べることができます。
とあるカセットデッキの技術資料にも、「120分テープで確認する」と書かれており、修理した後の動作確認には有効だと思います。
音響店でも、チェック項目に120分テープを使ったテストがあります。テープには曲が録音されており、実際に再生しながら、音揺れ(ワウ・フラッター)や、音量の変化(出力変動)をチェックします。
再生中に、突然音がビブラートしたり、周期的に音が籠ったりすれば、どこか問題がある可能性が高いです。
現在でも120分テープは生産されていますが、出来れば昔売っていた日本製のテープ、せめて中国製以外のテープを使う方がよいです。
中国製はテープの質が良くないため、すぐにヘッドやキャプスタン、ピンチローラーを汚してしまいます。いくら綺麗に手入れがなされていても、安定した再生は難しいので、控えたほうがよさそうです。ハーフの作りも、再生の安定性に影響してきます。
さいごに
これほどまでに細くて薄い磁気テープに、CDにも負けないような音で録音できる技術は、日本人ならではだと思います。カセットテープはアナログですが、デジタルだとDAT(デジタル・オーディオ・テープレコーダ)があります。DATは、カセットテープ以上に高い精度を求められるそうです。
今回はテープの薄さを、数値を見ただけでは理解しにくいので、日用品を例にとってご紹介しました。食卓で使うラップが、カセットテープの薄さに近いことには、僕自身もとても納得です。
最後までお読みいただきありがとうございました。