西村音響店

ナカミチ581Z―再生状態から録音モードにできないのは何故?

 

皆さま、こんにちは。こんばんは。西村音響店の西村です。

いつも音響店のブログをご覧いただき、ありがとうございます。


 

今回は、カセットデッキのメカニズム的なお話をしてみたいと思います。

 

カセットデッキには、こんな機能があります。

テープを再生している最中に、録音ボタンと再生ボタンを同時に押せば、テープを止めずに録音モードへ移行できる。

特定の機種に限らず、多くのカセットデッキで可能な機能です。ご存知の方も多いと思います。

 

使えて当たり前の機能かもしれませんが、実は不可能な機種もあります。

今回ご紹介するのが、一旦停止しないと録音モードに移行できないデッキである、ナカミチ581Zです。

581Zに限らず、他のナカミチの機種にもあります。

 

 

停止せずに再生→録音は、物理的にできない。

早速ですが、なぜ581Zが再生→録音の切り替えが出来ないか、その理由をご紹介します。

 

切り替えられない最大の理由は、スイッチを操作するワイヤーです。581Zは一般的なトランジスタを使うのではなく、ワイヤーを巻き上げて操作しています。

再生モードと録音モードの切り替えを、アンプ基板にあるスイッチで行っています。メカニズムから離れているので、どうにか遠隔で操作する必要があります。その操作をワイヤーで行っているのが581Zです。

 

ちなみに一般的な方法としては、以下のとおりです。

  • ピアノの鍵盤のようなレバーを操作するタイプ
    ⇒機械的にレバーを連動させてスイッチを動かす
  • マイコンを搭載したタイプ
    ⇒ソレノイドでスイッチを動かす
    ⇒トランジスタやリレーで電気的に切り替える

いずれも再生状態から、そのまま録音モードに入ることができます。

 

 

スイッチ操作を詳しく見てみましょう

それでは、再生中⇒録音の切り替えが不可能な、581Zの謎を詳しくみてみましょう。

切り替え不可能な謎は2つあります。

 

まず始めに1つ目のポイントです。

本体の上側から見ると、下の画像のような光景が見えます。ポイントは矢印の部分です。小さな金具が付いているのが分かるでしょうか。

ここにワイヤーが引っかかっています。このワイヤーが、先ほど紹介したアンプ基板上のスイッチに繋がっています。

録音モードにすると、金具の付いたレバーが動いて、ワイヤーを引っ張ります。すると、遠くにあるスイッチを操作できるという仕組みになっているのです。

 

続いて、アンプ基板を覗いてみます。

黄色で囲んだ部分が、再生と録音を切り替えるスイッチです。

ワイヤーが掛けられている様子が見て取れると思います。

先ほどのワイヤーが掛かっていた部分と繋がっており、録音モードになるとこの部分が連動します。

 

スイッチがアンプ基板にあるのは、別に特殊な事ではありません。

そこで、2つ目のポイント。繰り返しになってしまいますが、581Zは録音モードにするときはワイヤーを引っ張ってスイッチを操作し、切り替えます。

ここで問題なのが、ワイヤーの引っ張り方です。


 

画像を見ていただくと、581Zのメカニズムには大きなギヤにあります。このギヤが、ヘッドを上下などを始めとしたメカニズムの動作を行っています。

ワイヤーを引っ張るには、ギヤを一瞬だけ右方向に動かします。すると、ワイヤーに連結されているレバーと、ギヤの突起が引っかかります。

 

その後、今度はギヤを左方向に動かすことで、ワイヤーが引っ張られるという仕組みです。

もし、一瞬だけ右方向に動かす動作をしなければ、ワイヤーが引っ張られません。つまり、再生モードにするときの動きになります。

 

 

ということは、いったん再生モードになってしまうと、ワイヤーを引っ張られなくなります。

一度停止してからでないと、録音モードに切り替えることが不可能ということなのです。

 

 

まとめ

多くのカセットデッキでは可能な『再生中に録音モードへ移行する』ですが、581Zでは物理的に不可能です。

少し不便だと感じることもあるかもしれませんが、よほど細かく編集作業をしないのであれば、気にならないと思います。

 

今まで、再生中に録音モードへ入れることが半ば当たり前だと、僕は思っていました。しかし、初めてのナカミチのカセットデッキ581Zで、この謎に出くわしました。

最初、デッキの中を確認したときに、ワイヤーが縦横無尽に走っているのが驚きました。

なぜカセットデッキにワイヤーがあるのか?と思いながら、暫くの間、興味津々で中の様子を眺めていました。

初めてのデッキに出会ったら、まずは何度も何度も動作をさせて、動きを覚えることから始めます。分解の前に、動きから構造を考察することが、修理において大事なことです。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 

動画で見てみましょう



 

 

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