今回は1990年製のSONY TC-K222ESGのご紹介です。大阪府の方より、「今まで一度も点検していないのでメンテナンスをお願いしたい」との事でご依頼を頂きました。
TC-K222ESGは、先代のESRシリーズまで採用されてきたメカニズムに代わって、新設計のサイレントメカニズムを採用したモデルです。
はじめに作業前の状態確認を行いました。確認項目を順番に正常か調べていきましたが、特に異常はありません。大事そうに使われているようで、外装状態もとても良好でした。
今回はフルオーバーホールをご希望という事で、メカ部分と電子部品の交換を行いました。サイレントメカを採用しているデッキではベルトが劣化して動かなくなる故障が多く、現時点では正常でも劣化が進みますので予防で新品に交換するメリットは大きいです。
まずはフロントパネルの取り外しをします。ボタンの信号線、ディスプレイの配線、ボリューム用の配線と、フロントパネルから伸びているケーブルは全てコネクタを抜きます。
その後、パネルを固定しているネジを外して手前に引けば外れます。ついでに、電源スイッチとタイマースイッチも外しておきました。
そしてメカを固定しているネジを外せば、メカの取り外しが出来ます。上位機種の333、555よりも基板が少なく内部がすっきりしている分、配線の取り回しも比較的容易です。
ここからはメカの分解作業です。
まずは、カセットホルダの取り外しです。外部電源でメカを動かしてオープン状態にし、カセットホルダを取り外します。そして再びクローズ状態にしたら、メカ上部にある部品を取り外します。この部品はオープンするときに、検出孔のスイッチを上へ持ち上げる役割をしています。
つづいて、リール関係の部品、ピンチローラー、ヘッドを取り外しました。ブロック分けをして作業を行っていますので、先ほどのカセットホルダを①、ヘッドやローラーなど前面についている部品を②とします。
②の部品を全て外した後、キャプスタン、メカを動作させるカムの部分、DCモーターおよびカムスイッチの、3つに分割しました。それぞれ③、④、⑤としました。
それぞれのブロックで、さらに分解を進めます。
完全に分解すると、これだけの部品数になります。きっちりブロック分けできることが幸いして、分かりやすい構造になっています。機種によっては、分け方が曖昧になってしまう場合もありますが、基本的にはこのように分けると作業が行いやすいです。
部品の脱脂洗浄を行いました。古いグリースを完全に落としました。
完全に脱脂をすると、この様に回転がとてもスムーズになります。この部分はグリースを塗布する部分ですが、その前に脱脂洗浄の効果を画像に残しておきました。
カムギヤの裏側、ヘッドとリールストッパーを操作する部分になります。特にヘッドの操作時は負荷が大きいので、グリースは必ず塗布します。
カムの部分の組み立てが終わりました。ベルトも新品に交換しました。カムギヤのこちら側からは、ピンチローラーの上下と、カセットホルダの開閉動作のモード切替をします。動力はリールモーター得ますが、その切替をカムギヤに接した部品が、右側の上から2番目のギヤを動かすことで行っている仕組みです。メカ用のベルトも新品に交換しました。内径20mmの角ベルトを使用します。
DCモーターの分解清掃です。特に整流子(コミュテーター)にある隙間に、回転で発生した汚れが多く付着しています。エタノールを付けた綿棒を、整流子と直角の角度で当てて綿棒の軸を回しながら、隙間にたまった汚れをふき取ります。やはりリールモーターの方が汚れが多く見られました。
DCモーターを基板に実装し、メカに取り付けます。
続いて、キャプスタンを回すダイレクトドライブモーターの回路ですが、2つの表面実装型の電解コンデンサがあります。こちらは、経年で電解液が漏れだす症状が多く見られます。漏れだした電解液により、パターンを腐食させてしまう恐れがあります。また一度プリント基板へ電解液が付着すると、コンデンサの交換の際にパターンが剥がれてしまうリスクが高まります。漏れていなくても早めの交換が安心です。
キャプスタンのユニットを組み上げました。ベルトも新品に交換しました。この機種で使われているゴムベルトは、劣化するとゴムが硬くなる傾向があります。内径70mmの平ベルトが適合します。
キャプスタンユニットをメカに取り付けます。
メカ前面の部品の取り付けです。リールストッパー、磁気ヘッド、ピンチローラー、リール台、アイドラーの順番で取り付けます。順番が違うと取り付けることが出来ません。ローラーの可動軸にはしっかりグリースを入れます。
ここまで組みあがったら、電源装置からモーターを動かして、メカが動作するかを確認します。確認できたら、カセットホルダなどの開閉関係の部品の取り付けです。オープン検出孔のスイッチを取り外しの時と同様に、クローズ状態で取り付けます。
カセットホルダを取り付けて完成です。カセットホルダも取り付け時と同様、オープンの状態にして取り付けます。
一度組み立てて動作確認を行います。ヘッド周りの調整もここで行います。メカの作業が終了した段階で、実際に再生してメカに異常が無いかを確認したのち、電子部品の交換に移ります。
電解コンデンサの交換は、オーディオ回路にはニチコン・FGシリーズを中心に、電源部分には同KWシリーズ、その他、両極性には同ESシリーズ、東信工業UTSJを使用しました。電源部分のコンデンサは、25V-2200uFと、25V-3300uFです。
予防のため、電力用のトランジスタを交換しました。
タクトスイッチも交換しました。計14個です。またボリュームも電子部品洗浄剤で洗浄しました。
交換が終わったら取り付けて動作確認をします。
動作確認後、再び全部品を取り外して、本体内部を掃除します。
フロントパネルの裏側にガビが付着していました。こういったものも逃さず拭き取ります。
最後にこのデッキの録音テープを作成し、最終確認を行って完了です。外装の状態もより綺麗に仕上がりました。
TC-K222ESGは、SONYの3ヘッド方式の中ではベーシックモデルになりますが、上位の333、555よりもお安く入手できます。当店でも機種ごとの作業料金を設定しておりますので、ベーシックモデルである222ESGもお得な料金で実施しております。廉価なデッキでも大変貴重な製品です。懐かしくても壊れているデッキがございましたら、修理をぜひご検討ください。