「悪質業者」「悪徳業者」
できれば関わりたくないですよね。僕もカセットデッキを修理している一員として、とても胸が痛くなります。
塗装屋だったり車の整備工場だったりと、どの業界にも存在していそうですが、残念ながらカセットデッキでも存在します。
もちろんお断りしておきますが、単純に「技術力やノウハウが少ないから悪質」というわけではありません。最初は誰だって技術力ゼロ・ノウハウゼロの状態からのスタートです。徐々にステップアップしていけば何の問題もないと思います。
しかしながら残念なことに、明らかな手抜き作業だったり、アフターフォローが殆ど無かったりというケースがあるようです。
今回は、若干人の粗さがしのような感じでお伝えしにくい事ですが、過去にご相談をいただいた事例を2つご紹介します。どちらも他所の修理済みデッキを購入した後、相談していただいたケースです。
特に、新しくカセットデッキを入手しようと考えている方には、ぜひ頭のどこかに置いておいてほしいと思います。
※今回の内容は客観的な判断が難しく、個人的な独断と偏見が含まれている部分があります。「へぇーこんな事もあるんだ。」という程度で参考にしていただければ幸いです。
①動作品なのにこれはちょっと…
デッキはA&DのGX-Z7100EV。出所はオークションで、整備済みの動作品です。
「カセットの扉を閉めても若干浮いていて高域が下がる。」ということで、実際に確認してみると…
なんか曲がってる…
「いやぁ、経年でも普通こんなところ曲がらないでしょ…」という部分が曲がっています。これは、力業をやった臭いが濃厚です。
さすがにこれだけ曲がると、カセットが真っすぐセットされないので遊びが生まれます。指で触るとグラグラするほどです。
もちろん、ちゃんと修正すればよいのですが、残念ながらこの状態で出品されていたそうです。お客さんの方で気づいているので、これはちょっと…厳しいですがスルーしていると思います。
ちなみに商品説明には
「ベルト、アイドラーなどの交換済み。テープパス、スピード調整、ヘッド消磁クリーニング済みで、クリアーで安定した音です。」
などとあったそうです。
購入後しばらくして、他のデッキと比べると音がしっかり出ていないことから発覚したそうです。
(そもそもデッキを販売しているなら何台か在庫を抱えているでしょうから、さすがに気づくと思いますけどね…)
極めつけはこのフレーズ。
ノークレーム・ノーリターン
他にもデッキを出品しているということでチェックしてみると、揃って商品説明にこのフレーズがありました。ちょっと無責任な…(゚Д゚;)
機械は不具合や故障が付き物ですので、整備済みとして出品するのであれば万が一の時にも対応してもらいものです。
クレームが100%出ないような絶対的品質ならば別ですが(笑)
(さすがに僕でも無理です)
しかし、オークションは匿名で出品されている以上、アフターフォローをすること自体がなかなか難しいという事情もあります。
例えば「1年保証付き!」とあっても、鵜吞みにするのはちょっと危険かもしれません。というより、それまでに商品ページが削除されて取引メッセージが送れなくなってしまいますからね。
整備済みに限らずジャンク品でも、オークションは結構な博打だと思います。僕も経験済みですが、やっぱり当たりはずれがありますね。
②改善できる可能性があるって…
デッキはA&DのGX-Z9100です。とあるオーディオ専門店から購入したとのことですが、不具合があってお預かりすることに。
不具合の箇所はここです。画像の赤丸で囲ったモーターですが、別なモーターに交換されていました。
確かにAKAIの高級モデル・中堅モデルは、よくモーターが劣化して動作音がうるさくなっている症状を見かけます。
静かなモーターに交換するのは僕も良策だと思います。あまりにも動作音がうるさいと、どこか品がなくなった感じになります。ぜひ交換した方がよいです。
しかし、モーターの回転が速すぎて、早送りや巻戻しの時にヘッドが上下に激しく動く状態でした。
出荷直前は大丈夫だったのかわかりませんが…仮に大丈夫だったしましょう。(もし大丈夫ではなかったら相当ヤバい)
問題はその後です。
お客さんの方で異変に気付き、店に連絡したそうですが、返事がこれまたひどい…
「ヘッドの動きは故障ではないが、調整で改善できる可能性はある。気になるのであれば、送って欲しい。」
可能性があるなら最初から改善しとけよ!
実際に「である調」の文で送られてきたわけではありません。こんな感じで返事が来たということですが、手抜きしましたというのが伝わってきますね…
もしちゃんと作業していて、どうしても直らないのであればその理由が返ってくるはずです。究極は「原因がわからない」というのも理由の1つです。僕でも原因がはっきりせず、修理を断念することもあります。
お客さん側は別に悪質なクレームを突き付けてるわけではないのですが、残念ながら無責任な対応をされてしまったそうです。
ちなみに悪質なクレームの場合は丁重にお断りしたり、ひどい場合は一切対応しないという手段は悪くないと思っています。他のお客さんに迷惑なると判断した場合はやむを得ません。
例えば「違うメーカーのデッキでも、きっちりメーターが同じように触れるようにしろ。」なんていうのは無理です。設計が違っても同じようにテープが再生されるなんて夢のまた夢です。そういった方はDATをおススメします。
予感はしていましたが、やはり的中します。
渦巻きがはっきり見えるほど積もった埃。
一見すると何の変哲もないですが、臭っ! 非喫煙者からしたらかなり強烈です。
前面パネルの裏に溜まった埃と曇ったディスプレイの偏光板。せめて偏光板の曇りくらいは取り除いておいてほしいですね。綺麗にしておけば見栄えが良くなるのに。
ただ、販売価格が36,800円だったそうで、まぁこの価格なら多少手抜きされていても妥当と考えられなくもないので、難しいところです。
それにしても、あんな無責任な返事をされてはたまったもんじゃないですよね。
皆さんでも、もし素っ気ない対応をされて不信感を抱いたときは、ちょっと辛いですが途中でも取引を打ち切ったほうがよいと思います。
ヒートアップして要求を突きつけても無意味に終わる可能性が大です。店側にも技術力やノウハウに限界がありますので、最初に受け取った時以上の状態にしてもらうことは無理、と思ったほうがよいです。むしろ逆に悪質クレームと捉えられて、さらに面倒くさい事になるリスクも考えられます。
返品を受けてもらえるのであれば、返品が最も手っ取り早いです。せっかく入手できたのにもどかしい気持ちになりますが、改めて別なところから買うのも良策だと思います。
すべては信頼と実績
今回紹介した2つのケースは、さすがにちょっと…というレベルで、悪質と言われても仕方がないのかなと思います。
ただ、満足できないからといって、なんでもかんでも「悪質」と決めつけるのは良くありません。
美容師さんやお医者さんと同じで、修理する人によってノウハウや経験の量に差があります。
もし満足できなければ、もうショップや修理してもらう人を変えるしか方法はありません。いくら要求したところで、そのショップや人には限界があります。
例えば、僕が通っている美容室のスタイリストさんも決して超一流ではありません。それでも信頼できるから、いつも髪を切ってもらっています。
人によって考え方は違いますが、僕は最終的に人で選ぶことが大事だと思っています。会社ならば対応の良さといったところでしょうか。永くお付き合いしたいのであれば尚更です。
中小企業のCMによく登場する「信頼と実績」というフレーズ、まさにこれだと思います。