SONYのカセットデッキが壊れた時の応急修理【機種限定・悪用禁止】

 

こんにちは、西村音響店でございます。

今回はSONYのカセットデッキで、ちょっとした修理のネタをお送りします。

中古カセットデッキの中でも、やっぱりSONYは人気です。特に3ヘッド方式の上位モデル(型番に555や333が付く)は、壊れていても数万円します。20年以上前のデッキとはいえ、根強い人気があると思います。

SONYだけでなく、近年は中古カセットデッキの相場が高騰傾向にあります。

 

さて、人気のあるSONYのカセットデッキ。少し言葉が悪いですが壊れやすいです。カセットデッキは機械的な部分が多いので壊れやすくて当然ですが、設計の問題からもっと壊れやすいデッキも存在します。

よくある故障としては、再生ボタンを押しても再生されない症状です。オークションの商品説明によく書かれていることはもちろん、もしSONYのデッキをお持ちでしたら故障を経験されているかもしれません。

頻繁に壊れて修理代が出てしまうのは痛いと思います。そこで今回は、修理代を浮かす方法をご紹介します。

 

 

応急修理が使える機種

はじめにお断りしておきますが、流石にSONYのカセットデッキ全てで手法が使えるわけではありません。年を追うごとにデッキの設計も変わっています。1979年製と1991年製では、同じSONYでもテープを回す仕組みが全く異なります。この点だけご留意くださいね。

今回ご紹介する手法が使えるのは、

1989年以降に製造されたモデル

です。

 

キャビネットを開けて、メカニズムの部分がこのような構造になっていれば使えます。

3枚の写真はすべて違う機種です。TC-K333ESJ(1994年),TC-KA3ES(1999年),TC-K222ESG(1989年)ですが、メカニズムの部分は同じ形をしています。

特徴は中央と右側に配置された2つのモーターです。カセットデッキオタクの方でしたら、TC-200Dと言えば通じると思います。

構造が同じということは、壊れ方も同じです。ではどこが故障の原因なのか、メカニズムを右側から眺めてみましょう。

桃色で囲った部分に黒いものが見えますが、これはゴムベルトです。再生するときはこのベルトが回って、その先にある歯車を動かすことによりヘッドが上昇するという仕組みです。

例によってカセットデッキオタクの方でしたら、モードベルトだったりカムベルトと言えば通じるでしょう。

このベルトが厄介者です。細くて直径が小さいので劣化しやすく、伸びたり切れたりして壊れます。殆どの場合、このベルトが原因で故障します。稀にモーターが駄目になるケースがありますが、再生不可能になる原因の多くはこのベルトです。

 

 

松脂でベルトが滑らないようにする

実はベルトがぷっつり切れて故障していることは少ないです。多くはベルトが伸びてしまい、モーターは回っても滑ってベルトが回らない状態になっています。

じゃあ、滑らないようにすればよい。

そこで登場するのが、こちらのベルトワックスです。

主成分は松脂です。球技においてボールに滑り止めをするために使われます。本来は固形ですが、このベルトワックスはスプレー式ですので、ボタンを押すだけで松脂が噴射されます。

 

ベルトワックスを、モーターのプーリーの部分に数滴垂らします。多量に吹きかけると周りの部品に付着してしまいますので、慎重にスプレーのボタンを押して1滴ずつ垂らす程度で十分です。

うまく垂らせたら、再生ボタンをテープが回りだすまで押し続けてください。1回だけ押すと数秒で停止状態に戻ってしまいますので、押しっぱなしにして状態を維持してください。

最初はモーターとベルトが滑りますが、暫くすると摩擦力が増して再生ヘッドが上がります。

 

無事にヘッドが上がったら、今度は「再生→停止→再生→停止→…」と操作を繰り返して、スムーズに状態が切り替わるか確認してください。問題なければ応急処置成功です。

数万円する修理費が、わずか1,000円ちょっとで済んでしまいます。

 

ただし、失敗する場合もあります。
ゴム自体の劣化が激しく、柔らかくなっている場合です。

特に、過去に一度も修理されていないデッキは失敗します。ベルトがプーリーから外れるか、切れてしまいます。

失敗した例です。ベルトが暴れています。

滑り止めは出来ましたが、ベルトのゴム自体が劣化で柔らかくなっているため、負荷が掛かった途端に伸びてプーリーから外れてしまいました。

このようになってしまったら、もうお手上げです。分解してベルトを交換するしかありません。

逆にいえば、一度修理の手が入ったデッキのほうが成功率は高いです。

 

 

悪用はしないでください

今回の応急修理のポイントは、修理代が安く上がるだけでなく、ものの数分で直せてしまうところです。しかし、これを悪用しようと思えばできます。

何に悪用するかというと、

転売です。

仕組みはこうです。

まず転売屋がジャンク品を仕入れます。

ご紹介したようにベストワックスをスプレーすると、再生できるようになります。一応再生はできるので、「動作品!」としてオークションに出品します。動作品ですから入札額も高くなります。

そして落札されます。しかしベルトは既に劣化しているので、いずれ壊れます。きちんと修理するのであれば新品に交換すべきです。

壊れたらどうするかというと、またジャンク品として出品します。するとまた転売屋が仕入れます。

この流れをベルトが完全に伸びきるまで回します。

 

理想像にすぎないかもしれませんが、あり得る話だと思います。壊れやすいが故、良くも悪くもモノとカネが回ります。

「でも、壊れたら出品者に連絡すればいいじゃないですか?」と思うかもしれません。

しかしオークションには恒例のフレーズがあります。

 

ノークレーム
ノーリターン

 

予測変換に出てくるくらいの鉄板の文句です。パソコンで「ノーク…」まで打つと出てくると思います。

このようなこともあって、音響店にも元々オークションに居たデッキが入ってきます。多いのはオークションで買ってから数年経ってご依頼されるパターンです。

 

SONYのカセットデッキに限らず、オークションで頻繁に動作品を出品している人は、大抵このような流れで回しています。

出品者の良し悪しにもよりますが、買った後は基本的に知らんぷりされると思っていたほうがよいです。

 

 

まとめ

今回ご紹介した修理方法は、あくまで応急修理です。実際はしっかりとベルトの劣化が進んでいます。

新品のベルトは直径20mmですが、時間が経つにつれてゴムが伸びていきます。使用の有無に関わらずです。むしろ使わない方が壊れます。

いずれ壊れる時が来ることに変わりはありませんが、新品に交換していない状態では故障も早く来ます。

その場しのぎは全く問題ありませんが、そろそろ部品交換する時期が来ていますので、修理を検討する際の目安にしていただければと思います。

ちょっとした事で直る症状でも、修理に出してしまうと痛い出費になるかもしれません。往復の送料が掛かることも厄介ですね。何しろデッキは大きいので、運賃も高いです。

そんな時に、応急修理がちょっとしたお守りになります。