カセットデッキのいろは 第28回
こんにちは、こんばんは。西村音響店の西村です。
音響店のブログをお読みくださり、ありがとうございます。
今回は、カセットデッキは壊れやすいのかについて取り上げます。
新品のカセットデッキは、わずかながら現在でも生産されています。しかし、高性能で高音質なカセットデッキは、中古でしか手に入りません。
しかも、その中古の多くが壊れているという状況です。
では、カセットデッキって、そもそも壊れやすいものなのかを考えてみます。
目次
カセットデッキは壊れやすいです。
壊れやすいか否かで答えるならば、壊れやすいです。
カセットデッキは、アンプと違って機械的な部分がいくつもあります。その分、故障する確率も高まります。
アンプについては専門ではないので詳しい事は分かりかねますが、アンプは電気的に壊れることが多いと思います。例えば、トランジスタが故障して音が出なくなることが思いつきますね。あとは、ボリュームの接触不良、いわゆる「ガリオーム」でしょうか。
対して、カセットデッキは電気的に故障する確率は非常に低いです。スピーカーを鳴らすような電力を扱わないので、トランジスタが壊れる心配も少ないと思います。
確率が高いのが機械的な故障です。代表的なものとしては、再生が出来なくなる、取り出しが出来ないといった症状です。
カセットデッキ共通の故障原因
これまで、数多くカセットデッキを診ていると、故障の仕方にはパターンがあるということが分かりました。ごく一部特殊な故障もありますが、たいていは以下に挙げるものに当てはまります。
ゴムベルトの劣化(伸びる・溶ける・切れる)
カセットデッキが壊れる原因で思いつきやすいのが、ゴムベルトではないかと思います。所詮はゴムですから、劣化して当然です。
ベルト切れによる故障の症状は様々です。多くは、再生できなくなる症状ですが、取り出しが不可能になったり、操作がまったく利かなくなるデッキもあります。どのような症状が出るかは、デッキの構造によって変わります。
ゴムリングの劣化(硬化して空回りする)
ベルトと併せて劣化するのが、ゴムリングです。カセットテープを巻く動作をさせるための部品(アイドラー)に使われます。
巻戻しや早送りに時間が掛かる場合は、この原因である可能性が高いです。
ゴムリングは劣化すると、ゴムが硬くなって弾力と摩擦力を失います。すると、モーターが空回りするようになって、テープを巻き取ることが出来なくなります。
自動車でドリフトをするのに使う、磨り減って坊主になったタイヤと同じ状態です。
カセットデッキにはそんなタイヤは似合いません。グリップ力のあるレーシングタイヤが必要です。
この故障原因は、アイドラーにゴムを使っている機種のみに当てはまります。歯車を使っている機種の場合は、違う箇所に原因があります。
グリースの固着(接着剤に変化する)
1980年代前半に製造されたカセットデッキに多い故障原因です。
グリースとは、部品の動きを良くするための潤滑油の一種です。潤滑油という枠の中で半固体状のものをグリースと呼びます。
年数が経つと徐々に固まっていき、最終的には固体に変化します。固体になると潤滑の能力がなくなり、むしろ接着力が高まるため、動作がまったくできない状態に陥ります。
部品を一度取り外して、固まったグリースを洗い流さなくてはならないため、少々難度の高い修理が必要です。
まとめ
いかがでしたしょうか。
カセットデッキは電気的な故障ではなく、機械的な故障が多いです。つまり、カセットデッキの修理には、電子回路の知識よりも機械系の知識が大切になってきます。
オーディオというと電子回路への関心が深くなると思いますが、カセットデッキは電子回路とメカトロニクスの組み合わせです。異なる分野が入り混じっているので、壊れやすいという裏の顔を持っているのかもしれません。
機械部品の塊でもある自動車と似ていると思いますが、カセットデッキも点検なしでは使えません。特に、今回ご紹介した3つは、メンテナンスに気を遣いながら使っていく必要があります。
バッテリーが上がることと一緒で、カセットデッキも動かさないと逆に壊れますので気を付けましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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第29 カセットテープは食品ラップと同じくらい薄い
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第27回 中古動作品のカセットデッキは、高確率で修理されている。