カセットデッキのいろは 第37回
こんにちは、こんばんは。西村音響店の西村です。
音響店のブログをお読みくださり、ありがとうございます。
今回は『自己録再ではカセットデッキは面白くない』というテーマでお話ししてみたいと思います。
まず初めに、『自己録再』という単語を初めて耳にした方も見えるかもしれませんので、ご紹介しましょう。
自己録再とは、
録音と再生を同じデッキで行うことをいいます。
自分で録音して自分で再生するという意味で、自己録再と呼ばれているのではないかと思います。
今回は自己録再をする目的と、自論にはなってしまいますが自己録再についての考えをお話しします。
ちょっとマニアックな話になってしまうかもしれません。もし初めての方は、「ふ~ん」くらいのノリで、一応こんな世界もあることだけでも知ってもらえたら嬉しいです。
自己録再をする目的
録音したデッキで再生をする自己録再。同じデッキで再生をするので、録音した音を忠実に再生できます。ということから、カセットテープを高音質で聞く手段の1つになっています。
なぜ自己録再をするのか考察してみますと、最も大きいのは調整の誤差ではないかと思います。他のデッキでもし調整の誤差などがあれば、良い音で再生されません。
もう少し深堀りすると、カセットテープの音質を決めるのは、再生ヘッドのアジマス調整です。アジマス調整がずれると、音が籠る原因になります。録音したデッキであれば、絶対に調整が合っているので音も良いはずです。このことから、自己録再が良いとされているのではないか思います。
目指すは自録他再。
個人的な意見にはなってしまいますが、僕は自己録再にあまり賛成ではありません。
理由は、再生能力と音質が各々のデッキで違うため、必ずしも自己録再した音が良いとは断言できないためです。
例えば、【A】と【B】の2台のカセットデッキがあったとしましょう。わかりやすく、録音と再生の能力を0~100までの値で示すとします。
【A】は、録音能力が100、再生能力が90です。
【B】は、録音能力が90、再生能力が100です。
この場合、録音能力の高い【A】で録音し、再生能力の高い【B】で再生するほうが、【A】で自己録再するよりも音は優秀です。
ただし、条件があります。それが、先ほど少し出てきたアジマス調整です。アジマス調整が合っていないと、自録他再は難しいものになってしまいます。
しかし、自録他再ができるようになると、各々のカセットデッキが持つ音の個性がよく出ます。
録音したデッキと再生したデッキの音の差がしっかり出るので、面白さが増します。
例えば、【A】で録音した音は普通だったのに【B】で再生したら重低音が出る、という具合です。
僕にとっては、このように音質が変化するところが、カセットデッキの一番の面白さだと思っています。
好みの音でお気に入りの曲を聴くと、やっぱり楽しいです。
それよりも、全部のテープとデッキで自己録再をやっているのが面倒です。デッキが1台しか無ければ必然的に自己録再になってしますが、複数台あるのであれば、1つのテープでどのデッキでも再生できた方が楽です。
同じテープを【A】用と【B】用に作っておく人が、ごく少数ですが見えるかもしれません。それもそれでアリだと思います。ただ、肝心の曲を楽しむことを忘れてまでテープを作ることに精一杯になるのは、僕にはできません。
ましてや、希少なメタルテープを無駄に消費はしたくありません。
あくまで曲を楽しむために良い音で聴くという事だけは、忘れないようにしたいですね。
自録他再でメドレーを作ってみました
今まで録り溜めたカセットデッキの音を幾つか連結して、メドレー形式にしてみました。
2番目に出てくる A&D GX-Z9100EV が録音したデッキで、いわゆる自己録再です。それ以外のデッキはGX-Z9100EVで録音したテープを再生する自録他再です。
1番目に録音した元の音源を入れています
もう少し良い音質で聴きたい方はこちらをお聴きください。動画と同じ音源です。
0:00~ ソース音源
0:33~ A&D GX-Z9100EV(録音デッキ・自己録再)
0:50~ A&D GX-Z7100EV
1:08~ A&D GX-Z9000
1:25~ TEAC V-8030S
1:41~ SONY TC-K333ESX
1:58~ SONY TC-K333ESJ
2:14~ SONY TC-K777
まとめ
今回は、少しマニアックなお話で、『自己録再』と『自録他再』について取り上げてみました。
自録他再は、より正確な調整が必要ということもあって難易度が高いかもしれません。ですので、まずは自己録再で楽しむことが第一歩じゃないかなと思います。
最初は、3ヘッドデッキの音を聞いただけでも感動してしまうくらいです。しかし、人によっては徐々に極めていくと物足りなくなってきます。
そういった方はぜひ、自録他再でいきましょう。カセットデッキの新たな面白さに気づくはずです。
恐らく、『自己録再』という単語を知っているくらいなら、複数カセットデッキを持っていると思います。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
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