レンタルデッキ更新情報ー新たに4台追加&2台利用が可能になりました。

 

皆さん、こんにちは。こんばんは。西村音響店の西村です。

いつも音響店のブログをご覧くださり、ありがとうございます。


 

今回は、音響店のレンタルサービスに新たに追加となったデッキをご紹介します。

今回追加となったのは、

  • AKAI GX-R60EX (1986年製)
  • AKAI GX-R66 (1984年製)
  • SONY TC-V7 (1983年製)
  • Technics RS-2630U (1975年製)

以上の4台です。

 

AKAI GX-R60EX

 昭和61年(1986年)のオートリバースデッキです。

 2ヘッドなのに、ヘッド本体の中身が3ヘッドの構造をしている、ツインフィールド・スーパーGXヘッドを搭載しています。音質は3ヘッドを凌駕するくらい良く、しかもスーパーGXヘッドですから、摩耗にも非常に強いです。

 

…というのは、もうすでにご存じかもしれません。

 

ジャンク品だった時のGX-R60EX

 もともと、このGX-R60EXは、テープが酷く絡みついてカセットが閉じ込められている状態でした。まずは、カセットテープの救出から行いました。

 ベルト切れはしておらず、ヘッド回りを掃除すれば再生できる状態でした。ですが、潤滑油(グリース)の劣化も懸念されるため、オーバーホールです。

 この機種はGX-R70EXの1つ下のモデルですので、機械的な部分はR70とR60とも全く同じです。電子式のボリュームや、録音関係の機能の一部が省略されたのがGX-R60EXです。

 

 そしてオーバーホールが済んだと思いきや、こんな不具合がありました。

  • テープの再生はできるが、左側のメーターが振れない
  • 録音モードにすると、ライン入力の右側しか音が出ない

 電気系の原因だと思いつつ回路を辿っていくと、ライン出力/入力端子の近くにあるオペアンプに原因があるのではないかと考えました。

 しかし、最終的に判明した原因は、単なるはんだ割れ。クラックでした。

 

 同じ型番のオペアンプが2つ使われているので、入れ替えてみましたが改善は見られませんでした。ですので、オペアンプが原因ではないとここで判明します。

 その後、ケーブルの方を辿って確認してみたら、はんだに亀裂が入っているのを発見しました。はんだを吸い取って、はんだ付けしなおすと、あら不思議。何もなかったかのように音が出ました。

 ケーブルだけでなく、マイコンの端子にも亀裂が見られました。はじめは特に問題なく動作できていましたが、いつの間にか動作が不安定に。治ったり、おかしくなったりを繰り返すようになりました。接触不良が原因のときによく見かける症状ですね。


 

 ちなみに、疑ったオペアンプですが、一般的なオペアンプとは少し違う特殊なものです。入力が2系統あり、出力が1系統で、入力切替え用の端子があるというものです。

 外見は端子が縦1列に並んだSIPパッケージのオペアンプで、まだ電子部品屋で売っているもので代用できそうに見えます。ですが、残念ながら無理です。

 型番の「M5201L」で検索してみるとデータシートが見られます。例えば、オペアンプの中でも有名なNJM4580と回路を比較してみると、似て非なるものです。

 もし、M5201Lが壊れた場合は入手が難しいので、ほかのデッキから移植してくる手法をとることになります。別に入手も可能ですが、まとまった数(ロット)でしか入手できないため、1個、2個だけ入手するのは非常に割高です。

 そもそも、製造からまだ33年ですので、壊れるにしては少し早いのかなと思います。さすがに40年近くになると、故障するオペアンプも出てきます。′80年代前半の機種には多いです。

ピンクで囲んだICが、M5201Lです。

 



 

 

AKAI GX-R66

 同じくAKAIのオートリバースデッキ、昭和59年(1984年)のGX-R66です。

 この機種は、3つの面白いネタを持っています。

 

①カセットテープなのに、プレイリストが作れちゃう!?

 プレイリストとは、自分で好きな曲をどの順番で再生するかを決めるものです。今日ではもう当たり前の機能になっていますが、プレイリストの思想自体はカセットテープにもありました。

 例えば、「レンタルCDを借りてきて、好きな曲だけをテープに録音していく。」これも立派なプレイリストです。マイ・ベストコレクションなんて呼んだりもするのでしょうか。

 ただ、これではプレイリストを作るごとに新しいテープを用意しなくてはなりません。そこで、登場するのがGX-R66。デッキが自動的に曲数を数えて、希望の曲まで勝手に飛ばしてくれるという優れものです。

 上位機種に、GX-R88、GX-R99というデッキがありますが、この2台には同機能は付いていません。R66と、一つ下のR55だけの機能です。

 

②テンキーが付いている『変態デッキ』。

 プレイリスト機能があるだけでも十分『変態』かもしれませんが、GX-R66はテンキーが付いています。カセットデッキにテンキーが付いているのは、非常に珍しいです。

 

 カセットデッキの中に複数曲をスキップできるものもあります。この類は選曲ボタンを繰り返し押して曲数を指定します。例えば、「3曲飛ばしたければ、選曲ボタンを3回押す。」といった具合です。

 再生中の曲から数えて、何曲先なのか、あるいは前なのかで、選曲を行うというのがカセットデッキでは多数派です。

 

 しかし、このGX-R66は曲番号を入力するというユニークな選曲方法です。

 

 さらに、R66には曲の頭を次々に再生するイントロスキャン機能が付いています。この機能自体はさほど珍しくありませんが、テンキーが付いているR66しか不可能な事。それが、秒数指定です。

 テンキーで秒数を入力するという、まるでコンピューターのようです。普通は、機種によって曲の頭を何秒再生するか決められていますが、R66は自分で決めることができます。

 

 テンキーによって機能の自由度が高まったと思いますが、視覚的にもインパクトがあります。



 

③AKAIのカセットデッキで初のdbx搭載モデル

 調べた限りでは、AKAIのカセットデッキで最も早く搭載したのがGX-R66でした。

 上位機種のR88、R99には搭載されておらず、ドルビーB/Cのみです。また、下位機種のR55、R44にも搭載されていません。

 

 ですから、dbxが使えるのはR66だけ

 

 dbxというと高級機種に搭載されるイメージがあるかもしれませんが、別にそうでもありません。

 オートリバースデッキにdbxを搭載して、安価に音質向上を狙い、コストパフォーマンスで勝負をする戦略もあると思います。実際に定価5万円台でもdbxを搭載しているデッキが存在します。

 

 R66は定価7万円台でそれほど安価ではありませんが、先ほどご紹介しましたGX-R60EXは定価6万円台でdbxを搭載しています。下手に安価な3ヘッド方式を選ぶよりも、高機能なオートリバースデッキを選ぶ方がかえって音が良いこともあります。

 

 

SONY TC-V7

 昭和58年(1983年)のオートリバースデッキです。普通のオートリバースデッキかと思いきや、ちょっと変わっっています。

 面白ネタとしては2つ。

 

①リニアスケイティング方式

 カセットデッキの中では少数派の部類になりますが、ソニーでは案外普通かもしれません。ベータマックスでも同方式が採用されています。

 OPEN/CLOSEボタンを押すと、トレイ(正確にはメカ)が前にせり出してきます。

 

 TC-V7以外にも、TC-FX606RやTC-K88もリニアスケイティングです。

 

②録音はオートリバースできない!?

 オートリバースなので、録音も再生も、A面が終わったらB面も続けてできると思ったら、なんと録音は一方向しかできません。録音だけはA面が終わったら自分で裏返します。

 

 理由は、消去ヘッドの位置にあります。一般的なオートリバースのデッキでしたら、消去ヘッドも回転します。

 しかし、TC-V7は消去が固定されているのです。回転するのは、録再ヘッドだけです。

 

 なぜ、このような構造になっているか、僕も見当がつきません。

 『変態デッキ』です。



 

 

Technics RS-2630U

 レンタルデッキ初の、’70sカセットデッキです。

 製造年は昭和50年(1975年)で、2019年現在では44歳です。

 

 ’70年のカセットデッキというと、「音、悪いんじゃないか?」という印象があるかもしれません。ですが、それが逆に、これぞアナログという柔らかくて温かみのある音とも言えます。

 『カセットテープの音質』のイメージとしては、’70年代のデッキが最も近いのではないかと思います。

 実際に聞いてみると、そこまで音は悪くありません。’70年代の洋楽や、演歌にはとても相性がよさそうです。

 

 必ずしも、高音がしっかり出ているのが高音質というわけではありません。雰囲気も味わうのも、楽しみ方としてはアリですよ(^^

 アナログでしか味わえない音という視点で比べたら、’70年代のデッキが勝ります。

 

 ’90年代のデッキと一緒に使ってみて、是非、音を比べてみてください。まったく音の雰囲気が違います。



 

 

レンタルデッキの2台利用が可能になりました

 商品一覧のページに緑色で表示された機種は、2台利用が可能な商品です。1つのコンテナに収まる組み合わせであれば、2台同時にお使いいただけるシステムになりました。


 

 片道送料と消費税込みで、料金は7,560円。1台利用の料金に+1,080円で、同時に2台レンタルができます。

 

 2台利用をご希望のお客様は、専用の申込みページを設けましたので、こちらからお申込み可能です。

 

 1台目にサイズの大きな機種、2台目に一回り小さい機種が選べます。メニューから選べる組み合わせでしたらOKです。

 

 

今後のラインナップ予定

  • SONY TC-KA3ES(取扱説明書+リモコンをセット)
  • SONY TC-U4(変態デッキ)
  • AKAI GX-R88(クローズドループ・デュアルキャプスタン・バイ・ツインDD)
  • A&D GX-W930(ダブルカセットデッキ)
  • ヤマハ KX-W600(ダブルカセットデッキ)
  • パイオニア CT-Z99(ダブルカセットデッキ&変態)
  • ビクター KD-A6(歴史上重要なデッキ)
  • ビクター DD-5(変態デッキ)
  • ビクター TD-V66(メタパームヘッド)

僕の愛読書・阿部美春 著『カセットデッキ』◆この1冊から本質を学ぶ

 

皆さん、こんにちは。こんばんは。西村音響店の西村です。

いつも音響店のブログを見てくださり、ありがとうございます。


 

 今回は、本のご紹介です。恐らくこの本が無ければ、このブログの内容が薄っぺらいものになっていたことでしょう。

 

 日本放送出版協会から出版された、阿部美春 著『カセットデッキ』という専門書です。

 昭和55年当時の定価で1,200円ですから、現代で考えると良い値段の本ですね。

 

 カセットデッキ修理自体は、試行錯誤で何とかできそうかもしれません。ですが、僕がこれで修理をやってきた経験では、何とかならないです。

 自動車教習所でも、学科と実技の2つに分かれていますよね。それと同じで、実技の基礎に座学があることによって、修理でもより良い仕上がりになると考えています。

 業種によってはひたすら試行錯誤の方が良い場合もあるかもしれませんが、カセットデッキは座学と実技の両立が大切だと思っています。

 

 

講義中もひたすら読んでいた。

 幸いにも通っている大学の図書館に同じ本が置いてありました。僕が住んでいる市の図書館や、大小さまざまな古本屋を探してみましたが、どこにもありませんでした。ですから、本当に幸運でした。

 その本を借りて、時間さえあれば読み、講義がちょっと退屈だなと思ったら読む。そんな風に熟読していきました。何周したかは曖昧ですが、少なくとも10周はしたと思います。それでも、まだまだ理解しきれていません。

 

 図書館の本ですから、当然ながら返却期限があります。ですから、「一旦返してから、その翌日にまた借りる。」というのは極端ですが、何度も返しては再び借りていました。

 ただ、それですと面倒臭いですし、いずれ大学を卒業したら図書館は利用できなくなってしまいますので、本も読めなくなってしまいます。ですのでこの機に探して購入しました。

 昭和55年(1980年)の出版ですから、40年近く前の書籍になります。さすがに古すぎて入手困難かと思ったら、現代は本当に便利ですね。幸いなことにオークションで簡単に入手できました。

 

この本でカセットデッキのいろはを覚える

 この阿部美春さんの本では、デッキとテープの両方の知識が学べます。

 

「ワウフラッターとは何ぞや?」

「初透磁率とは何ぞや?」

「メタルテープでどのくらいバイアスが必要?」

 

 …様々疑問が出てきますが、この本で解決できます。

 ただ、内容が少し専門的で分かりにくい部分もあるかもしれません。

 ましてや初透磁率というキーワード自体、そうそう使わないと思います。ワウフラッターは覚えておくといいですね。日本語に直せば回転ムラです。音揺れに敏感なピアノ系の曲であれば0.02%台であると、カセットなのに殆ど音揺れを感じません。中には0.01%台という、カセットの中では異次元の性能を持つデッキも存在します。

 

少し話が脱線しました。

 

 この本1冊でカセットテープとデッキの全般は学べますが、特に重要な部分が、カセットデッキの基本構造です。

 カセットデッキは、メカニズム、制御回路、アンプ回路という3つで構成されています。ロジックで動作を制御しているデッキは殆どこの構成です。操作が機械的なものになると、制御回路を省略できるケースもあります。

 大きくこれら3つの要素があって、各要素をさらに細かく分類していくと、やがて小さな部品にたどり着きます。

 例えば、アンプ回路を細かく分類するのであれば、再生アンプ、録音アンプ、バイアス発振器、…という風に、アンプ回路といっても種類があります。さらに再生アンプを分類しようとすると、DCアンプ、ディスクリート構成のアンプ、オペアンプを使った構成のアンプ、…という風に、細分化が可能です。

 

 これまで、この本に助けられたことは言うまでもありません。「なぜカセットテープの録音にはバイアスが必要なのか?」という疑問も、この本で理解できました。ただ、この疑問は少し電磁気学の知識が必要で、他の本からも力を借りましたが、ここまで奥深い疑問も解決できます。

 

 そのほか、基本構造だけでなく、デッキの調整方法まで記載されており、理解しておけばカセットデッキがより面白く感じるようになると思います。

 厳密な調整方法については、その機種の技術資料(サービスマニュアル)を参考にするとよいですが、その前に調整の基本を覚えておくことが必要です。そもそも、基本が分かっていないと技術資料を読んでもわかりません。さらには、技術資料すらに入手できないことも考えられますので、基本をしっかり押さえて応用することも大切だと思います。

 インターネットで検索するとPDFファイルで載っていたりしますが、少しグレーかもしれません。この場で「ネットに落ちてますので使ってください。」とは申し上げにくいです。

 

 僕が特定の機種にこだわらず、新たな機種に挑戦しても修理を行えるのは、カセットデッキの本質を理解しているからこそだと自負しています。

 

カセットを極めたい方はぜひ目を通したい1冊

 カセットデッキとテープに特化したこの本ですが、本当にカセットの事しか書いてありません。

 「カセットが好きで好きでどうしようもない!」という方は、ぜひ読んでほしい1冊です。

 ちなみに、僕はカセットの事については日々勉強中ですが、アンプの事は殆どわかりません。A級?B級?と訊かれても答えられません(苦笑)

 

 古い本ですので、一部書かれていない事項もあります。

 例えば、アモルファスヘッド。1980年の出版ですから、まだアモルファスヘッドは実用化に至っていません。このように記載されています。

 

”第4のコア材として最近,
非晶質(アモルファス)合金が注目されています。”(同書p.76より)

 

この一文から、カセットデッキの技術進歩を読み取ることができますね。

 

 それよりも大変なことが、古いので入手が難しいことです。根気よく探すしかないと思います。現代はインターネットがあるので、自らの足を使って古本屋を回る必要はないでしょう。定期的に検索をかけていれば、そのうち見つかると思います。

 

さいごに

 カセットデッキ・カセットテープについて、ここまで詳細に書いてくださった阿部美春 氏には、心から感謝を申し上げる次第です。ありがとうございます。

 すでに記録媒体のスタンダードではなくなったカセットテープですが、『録音』という文化を広めた歴史的なメディアの1つだと強く思っています。そんなメディアを、今後も風化させずに残していくのが僕の世代だと、改めて感じました。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

出典:昭和55年 日本放送出版協会 阿部美春著『カセットデッキ』