西村音響店

TEAC C-3X

 


 

概説

 1980年に発売されたTEACの3ヘッドカセットデッキです。

 C-3Xの特徴を一言でいうと「ごつい!」 一見、業務用とも思わせるデザインです。針式のメータと、前面にある3つのボリュームの組み合わせは、業務用デッキでも採用されています。1990年代に入っても、業務用のTASCAM(タスカム)はこのデザインです。112MKⅡ、112R MKⅡ、122MKⅢまで引き継がれています。

 音質や性能もたいへん優秀です。録音/再生ヘッドには、摩耗に非常に強いフェライトヘッドを使っています。摩耗に強いだけでなく、人間がぎりぎり聞こえない音もこぼさず拾ってくれます。1980年のデッキとは全く感じさせない音で、CDの音とそん色ないくらいです。

 テープのポジション、バイアス、イコライザーなど、設定はすべて手動で、少々マニアックな側面も持っています。1980年初頭は。手動で切り替えるものが多いので、懐かしさも持っていることでしょう。

 そして、C-3Xで忘れてはいけないのが倍速録音です。テープを2倍の速度にすることで、人間の可聴域以上の音も録音できます。今で言うハイレゾの音域をカセットテープでやってのけることが出来るという、優れものです。

 

※テープを送る速度は、通常で毎秒4.76cm、倍速で毎秒9.52cmです。

 

よくある故障 <再生できない>


 C-3Xで再生できないという故障がありますが、原因の殆どは、ベルトが切れてしまう事によるものです。

 新品のベルトに交換することで修理ができます。ところが、ドロドロに溶けてしまったベルトがキャプスタンの重り(フライホイール)にこびりついています。交換する前にきれいに掃除しなければなりません。

 C-3Xは、もう1本カウンターを回すための細いベルトがあります。こちらも新品に取り換えます。

 

メカニズムをぜんぶ分解するとこうなります。


 1980年台初頭までのカセットデッキに多くみられる、大きくて重たいメカです。一つ一つの部品が大きいので、頑丈という側面では長所になるでしょう。

 写真は脱脂洗浄を行った後で、各部品をポリ袋に入れて保管しています。この後に、メカニズムを元通りに組み立てていきます。

 

「ガッチャン!」という動作音の正体はここです。

 
 C-3Xは再生ボタンを押すと、ガッチャン!という大きな動作音がします。

 1980年前半に発売された機種では、こういった動作音が大きいものが多くあります。その正体が、写真に写っている部品です。「ソレノイド」といいます。電気を流すと、鉄の棒が吸引されて、取り付けられているレバーが動きます。この原理を使って、ヘッドを上下させる動作などを行っている仕組みです。

 

C-3Xの中身。


 配線が複雑ですが、これも古いカセットデッキには多いです。

 修理をする時は、配線を間違えて接続したり、断線させたりしないように注意します。とはいえども、1本1本の線は太いので、よほど雑に扱わなければ断線の心配はないでしょう。仮に断線しても、修復は比較的容易にできます。

 

キャプスタンモーター分解中。


 キャプスタンを回すためのモーターは、常に同じ回転速度を保つための回路が内蔵されています。ここにも電解コンデンサーがあるので、分解して交換します。

 ちなみに、このモーターはガバナーモーターといって、回転速度を調整するためにコイルが1つ余分についています。ご興味がある方はこちらで詳しく紹介しておりますので、是非ご覧になってみてください。

 一度、このガバナーのコイルを基板に接続し忘れたことがありました。回転を制御できなくなったモーター物凄い速さで暴走しました。この状態で再生したらどうなるのか、もう想像はつくのではないでしょうか。

 

摩耗しにくいフェライトヘッド。


 C-3Xの録音/再生ヘッドは、摩耗にとても強いフェライトヘッドを使用しています。黒光りしている表面がそのが証です。

 

録音の強い味方。<左右独立キャリブレーション>


 TEACといったら、左右別々のキャリブレーションではないでしょうか。

 テープによっては、例えばじゃっかん左チャンネルの方が大きく録音されるといこともあります。こんな時は、左だけ録音レベルを下げれば問題ありません。TEACのキャリブレーションが強い味方になります。

 C-3Xはスイッチ操作で、規定値に設定するモードとキャリブレーションモードを切り替えます。

 キャリブレーションモードは、テープのポジションで自動的に設定は変わらないので注意が必要です。例えば、ノーマルテープで合わせておいたままメタルテープに録音しようします。通常は回路が切り替わってメタルテープ用の設定に変わりますので、そのまま録音は可能です。一方でC-3Xは、ノーマルテープの設定のまま変わりません。すると、バイアスが全然足りないので歪だらけの音で録音されてしまいます。

 

バックテンションは糸。

 カセットテープで良い音質を得るには、テープをヘッドにしっかり密着させることが大切です。

 そのために、左側のリールには少し抵抗力を与えます。すると、リールが僅かに回りにくくなって、テープが引っ張られた状態になります。これを専門的にはバックテンションと言います。身近なものでいうと、運動会の時に頭につけるタスキです。ピンと伸ばした状態で頭につけたと思います。上手く付けないと徐々に下がってきて、タスキが目隠しになってしまった経験、ありませんか。

  少々マニアックなお話になってしまいますが、C-3Xではバックテンション機構に糸を使っています。他の方法だと、フェルト、グリース、ベルトがあります。

 

 

 

 



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