西村音響店

カセットデッキの修理に必須なベルト。サイズはきつめ?ゆるめ?

カセットデッキのいろは 第33回
 

こんにちは、こんばんは。西村音響店の西村です。

音響店のブログをお読みくださり、ありがとうございます。

今回は、カセットデッキの修理には欠かせないゴムベルトをテーマにしてみたいと思います。


 

 自分でカセットデッキを修理しているという方であれば、一度は買ったことのあるゴムベルト。幸いにも、秋葉原の千石電商さんが、様々なサイズのゴムベルトを販売しています。

 カセットデッキにとって、ゴムベルトは命綱とも言ってよいほど大事な部品です。

 大事な部品なので、各々のカセットデッキに最適なゴムベルトを選ぶ必要があります。

 それが、今回の題目となっている、サイズはきつめ?ゆるめ?という事についてです。

 

どっちのベルトも使えるけど…

 たとえば、キャプスタンベルトを交換する場合で考えてみましょう。

 キャプスタンベルトの多くは、きし麺みたいなベルトを使います。そこで、直径60mmのベルトと直径65mmのベルト、両方使える時に皆さんはどちらを選びますか?

 

 この場合は、65mmを選ぶのが正解です。

 

 キャプスタンは、再生の安定さを決める重要な部位で、できるだけ回転に慣性力を持たせなくてはなりません。

 60㎜にしてしまうと少し無理が掛かりますが、一応使えます。しかし、ベルトを強く張ってしまっているため、回転に強いブレーキがかかります。

 窮屈なベルトを取り付けると、キャプスタンが矢印の方向に引っ張られます。

 自動車に例えると、ブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいるという状態です。その状態から、少しアクセルを緩めると即座に減速すると思います。もし、アクセルだけで調整していれば、多少緩めたって即座に減速することはありません。惰性でクルマは進んでいきます。

 カセットデッキでも同じです。再生の安定性で重要となるのが、キャプスタンの慣性力です。1970年代~1980年代初期に製造されたカセットデッキでは、キャプスタンのフライホイールが大型になっていることが多い傾向にあります。

 フライホイールを大型する目的こそ、回転に慣性力を持たせるために採っている手段です。このことから、キャプスタンの慣性力の重要性を読み取ることができます。

 

 キャプスタン以外にも、窮屈な寸法のベルトを使ってはいけない部分があります。それが、カウンター用のベルトです。

 機械式のカウンターを使っているカセットデッキは、カウンターを回すためのベルトがあります。数秒再生して勝手に止まる症状の故障は、カウンターに原因があることが多いです。

 もちろん、カウンター用のベルトが切れたら交換が必要ですが、キャプスタンと同じく窮屈なベルトは使わないでください。ご紹介したように回転にブレーキをかけてはいけない部分です。

 カウンター用のベルトはリール台と繋がっています。リール台はテープの巻取りを行う部分なので、ブレーキを掛けると巻取りに時間が掛かったり、巻き取り切れず途中で止まってしまうこともあります。

 多くの機械式カウンターは、軽い力で回るようになっていますので、多少ゆるめでも問題ありません。むしろ、少しゆるめくらいが適切です。

 

 逆に、少し無理がかかった状態が適切である場合があります。その1つが、再生などの作動を行うベルトです。「モードベルト」などと通称されたりします。

 このベルトは強めに張らないと上手く動作しないことがあります。モーターを決められた位置で停止させなくてはならないので、オーバーランしないよう常にブレーキを掛けておくことが重要です。

 もし緩めにしてしまうと、仮にオーバーランした場合は後退しなくてはならず、そして後退後も再びオーバーランして…の繰り返し動作が発生する可能性があります。結果的にモーターが小刻みに動いてしまい、デッキには良くありません。

 

 ゴムベルトの寸法を選ぶときは、単に使えるかどうかだけではなく、上手く動くかどうかで選びましょう。

 ゴムベルトの交換で大事なポイントは、
「ゴムベルトを強く張ると回転にブレーキがかかる」です。

 

さいごに

 ゴムベルトは1本163円~326円で購入できます。様々なサイズのベルトがあり、どれが合うのか迷うかもしれません。そういったときは、迷ったものを全部買ってしまいましょう。

 キャプスタン用のベルトであれば、3本買っても978円です。1本ずつ買っていると、送料ももったいないですから、初期費用と割り切ってまとめて買っておくことをお勧めします。

 据え置き型のカセットデッキですと、キャプスタン用ベルトは直径60~90mmの平ベルトを1本ずつ持っておけば、殆ど対応できます。キャプスタン以外の用途には、直径20~80mmの太さ0.95mm角ベルトがあれば大丈夫です。

 一部、太いベルトを使うこともありますので、必要に応じて購入しましょう。

 ぜひ適切なベルトに交換して、カセットデッキの性能を少しでも引き出してください。

  

 最後までお読みいただきありがとうございました。

  

前回の記事:
第32回 カセットデッキのアジマス調整は慎重に!

 

 

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