西村音響店

カセットデッキのアジマス調整の前に。★やり方を復習しましょう

カセットデッキのいろは 第32回

 

こんにちは、こんばんは。西村音響店の西村です。

音響店のブログをお読みくださり、ありがとうございます。

今回は、カセットデッキのアジマス調整について取り上げてみたいと思います。


 

 録音/再生ヘッドにあるアジマス調整用のネジは、本当は弄ってはいけないのですが、ちょっと回すと音が良くなるということもあります。ですから、弄ってみたくなりますよね。

 僕も恐る恐るアジマスの調整ネジをほんの少し回したところ、高音域がすーっと爽快な音に様変わりして、それからアジマス調整に味を占めてしまいました。

 しかし、これが大変なことになりました…

 

 

アジマスとは?

 アジマスという単語をご存知の方がお読みになっていると思いますが、ここで一度アジマスについて簡単に復習しておきましょう。

 

 アジマスとは、ヘッドの角度の事をいいます。

 

 テープに記録されている音を正確に拾うには、ヘッドの角度を最も取りこぼさずに信号を拾える角度に調整することが重要です。

 アジマスがずれている時の症状として、音が濁って再生される現象があります。

 

アジマスがずれたままだと大変なことになります

 何が大変だったかというと、ちょうとカセットデッキに興味が出始めて別のデッキを買ったときでした。

 新しいデッキの方がグレードは高いにも関わらず、音がちょっと濁っています。これはアジマスを調整すれば良くなるだろうと、調整したら案の定良くなりました。

 それから、また新しいデッキを買ってはアジマスを弄り…当時、親のお小遣いで何とか動くジャンク品を買うので精一杯で、整備品などとても買えませんでした。

 

 ふとある日、アーティストのミュージックテープを何気なく再生してみると、「あれっ?」

 

「音がひどい! 
どんだけ音籠もってるんだ!」

「アジマス調整…いや待て。」

「ミュージックテープは、絶対正確に録音されているはず。」

「ということは…」

「…」

「あぁーやってしまった…」

 

 という経験がありました。

 アジマスがずれたままのデッキで録音してしまうと、本当に正確であるデッキでも綺麗な音で再生できなくなってしまいます。

 

 最近では、カセットデッキを複数台所有する方が多く見えます。複数台で互いに綺麗な音で再生するには、より正確なアジマス調整が必要です。

 そのため、安易に調整してしまうと、恐らく僕と同じ経験をすることになると思います。

 その後、今まで録音したテープを全部取り直しました。幸いにも、昔の貴重な音源ではなく、趣味で録音しただけのものだけで済みました。

 

極力テストテープを使いたいところですが…

 カセットデッキの調整にはテストテープ呼ばれる調整用のカセットテープを使います。

 しかし残念ながら、テストテープは大変希少なものとなってしまい、オークションではプレミアムが付くほどの高値で取引されています。1本15,000円になる光景も目にしました。

 ですので、テストテープの入手は難しいかもしれません。

 

 その代わりとして使わざるを得ないのが、レコード会社から販売されたミュージックテープです。ミュージックテープは、しっかり調整されて録音されているため、調整の基準として参考になります。

 ですので、何本かミュージックテープを持っておくと、カセットデッキの調整具合を調べるのに便利です。カセットテープとCDの両方で発売されたアルバムであれば、両方持っておくと再生速度のチェックにも役立ちます。

 

アジマスを調整するには

 録音/再生ヘッドは多くの場合、2~3個のネジで固定されています。

 2個のネジで固定されている場合は、スプリングが噛まされている方のネジを回すとヘッドが動きます。右側か左側かは機種によって違いますので、スプリングがどちら側のネジにあるかを確認してください。

ネジが2個のタイプ YAMAHA KX-580

 

 ネジが3個の場合は、左側に2個+右側に1個、もしくは左側に1個+右側に2個のパターンがあります。1個しか付いていない側のネジを回すとアジマスを調整できます。

 上下に2個付いている側のネジは、アジマスではなく高さとあおり角度を調整するネジです。ここは触らないようにしてください。不用意に触ってしまうとテープの走行に悪影響を及ぼします。

ネジが3個のタイプ Lo-D D-E90

 

 テストテープがある場合は、再生して信号出力が最も大きくなる位置に調整します。

 やむを得ずミュージックテープを使う場合は、音楽が一番綺麗に聞こえる位置に調整します。ネジを回しすぎると再び音が濁りますので、再び濁り始めるポイントを掴むのがコツです。

 ある程度調整ができたら、他のテープも再生してみて綺麗な音で再生されるか試してみてください。必要に応じて微調整を繰り返します。

 最後に、ネジ止め剤を付け、ヘッドイレーサーを掛けて消磁します。使うドライバーによっては先端が磁化しているので、ヘッドに磁気が写ってしまいます。ヘッドが磁気を帯びると、これもまた音質が悪くなる原因になるほか、微弱ではありますがテープに記録された音を劣化させてしまいます。出来ればヘッドイレーサーも準備しておきましょう。

 

アジマス調整だけでは解決しないことも

 アジマス以外にも調整する箇所があります。それがテープパスです。

 テープパスは、アジマスよりも重要な部分で、ずれていると音質が悪くなるばかりか、テープに傷をつけてしまったりすることもあります。

 特にクローズドループ・デュアルキャプスタンのデッキで非常に重要なテープパス調整ですが、基本的には難しいです。

 ミラーカセットという特殊な道具が必要で、こちらは先ほどのテストテープよりも入手する難易度が上がります。

 無理に調整すると、テープパスがずれるかも知れませんので、少しでも不安があれば触らない方が賢明です。

 そのほかの原因としては、ヘッドの摩耗や、アンプ回路の不具合が考えられますが、確率としては低いです。ですので、アジマスと併せて考えられるものとしてはテープパスが大きいと思います。

 

まとめ

 アジマス調整は、本当はサービスマン以外は触ってはいけないものです。しかし、既にメーカー修理は殆ど終了しており、自分で修理してみようという方が増えているのではないかと思います。

 僕としては、自分で修理に挑戦される方にも、音響店のブログが役立てたらと思っています。ただし、自己責任ということだけは肝に銘じておいてくださいね。

 下手したらせっかく10,000円も出して買ったジャンク品が、パーになってしまう可能性だってあります。仮にパーになってしまったら、なぜ失敗したのか考えて、次に活かしましょう。

 もし、これから自分で修理をやってみたい方は、ぜひ一度しっかり修理されたカセットデッキを試してみてください。先に正解を知っておくと、余計な試行錯誤をせずに済むと思います。

 

 最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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前回の記事:
第31回 キャプスタンモーターを細かく分類すると7種類。

 

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