こんにちは。西村音響店でございます。
今回は、カセットテープの音質についてのお話です。聴き比べをしていただけるコーナーも用意しております。
さて、スマートフォンで、いつでもどこでも、ユビキタスに音楽を聞くのが当たり前の今日。曲を録音するとは言わず、ダウンロードすると言います。
CDと同じくらい高音質でダウンロードするにしても、安価なメモリーカード1枚あれば必要十分です。
ところで、カセットテープの時代は?というと、録音にお金がかかりました。確かにメモリーカードも同じですが、決定的に違うのは、価格に比例して音質が良くなることです。高価なメタルテープを使えば、相応の音質を手に入れることができました。
もう古臭くなりましたが、価格相応で音質が良くなるという考え方があったと思います。今振り返ってみると、良い思い出であったりもするかもしれません。
(僕はデジタル世代なので、想像で書いている部分もありますが…)
そこで今回は、価格相応で音質が良くなるという点にフォーカスしつつ、ご覧のあなたに音を聴き比べていただきたいと思います。
カセットテープは4種類あった
マニアの方にとっては至極当然な知識ですが、普通に使っていた方でも、ノーマル・ハイポジ・メタルの3種類が存在していたことはご存知かと思います。
フェリクロームを知ってる貴方は「ツウ」です。たとえテレビ番組でちょこっと特集されても、フェリクロームまでは出てきません。
ところで、カセットテープの録音では、どれをよく使っていましたか?
「やっぱりメタルは高いから、ハイポジまで。」
「いや、そもそもデッキがメタルに対応していなかった。」
「そんなに小遣いが無かったからノーマルで我慢した。」
いろいろエピソードがあると思います。
最近だと、
「高いテープは開封するのがストレスだから使いたくない。」
僕はこの理由が最も大きいです。
バブル期に発売されたようなカセットテープは、残念ながら中古でしか手に入りません。もう製造されることはなく、地球上に現存する分のみです。そんなテープが、オークションなどで取引されています。プレミアのついた物は、もはや資産の奪い合いです。
未開封品が、1つ、また1つと、フィルムが破られていくこと想起してしまうと、余計です。特に、高級なハイポジやメタルは、開封するのに勇気が要ります。ここぞという時には使いますけどね。
改めて音質を聴き比べてみる
ブログやYouTubeのお陰で、デッキやテープを持っていなくとも音質をチェックできるようになりました。インターネットが需要を奪ったことは否定できませんが…
インターネットに恨みがありながらも感謝して、改めてカセットテープの音質を種類別にチェックしてみることにしましょう。
種類ごとに何かしらイメージを持っていると思います。
「ノーマルは値段相応でそこそこの音。」
「ハイポジが価格も音質もちょうどいい。」
「一番音がイイのはメタルでしょ!」
「フェリクロームは?」
これらは僕の想像ですので、的外れかもしれません。一人一人持っているイメージは違うと思います。お持ちのイメージと照らし合わせながら聴いてみてください。
ノーマル (TypeⅠ)
ハイポジ (TypeⅡ)
フェリクローム (TypeⅢ)
メタル (TypeⅣ)
突然ですが、ここでテストを行います。
問題は、「メタルテープで再生しているのは、A?B?」
AとB、同じ曲と同じデッキですが、テープが違います。メタルテープで再生している方を当ててください。お正月に恒例の「○○○○チェック」のような形式です。
第2問と第3問は、違うジャンルので再生しますので、改めて音質をチェックしながらぜひ挑戦してみてください。
第1問
A
B
先ほど聞いていただいた曲です。ドルビーCをかけて録音していますが、判りますでしょうか?
デッキ:SONY TC-K333ESJ テープ:SONY(HF-S,Metal-ES)
第2問
A
B
メタルテープと、最低グレードのテープ。流石にこれは簡単かもしれません。ドルビーSで録音してもバレてしまうでしょう。アコースティックギターがメインの曲です。
デッキ:TEAC V-8030S テープ:TDK(D,MA-R)
第3問
A
B
最強のノイズリダクションdbxをかけて録音しています。ヒスノイズの違いは全く判りません。この問題が判った方は、まだまだ耳が若いです。オーケストラとdbxの組み合わせにも注目です。
デッキ:A&D GX-Z9000 テープ:TDK(AD-X,MA)
動画バージョンでも、違うデッキ、違う曲で出題しています。ぜひ挑戦してみてください。
カセットテープの録音には金が掛かる。
いきなり金の話になってしまって恐縮ですが、アナログの記録メディアはどうしても金が掛かります。
ここで、1分あたりの録音料金を求めてみましょう。
例えば、カセットテープ1本の値段は以下のように設定しましょう。メタルテープはプレミア付きです。
・ノーマル 60分 1本300円
・ハイポジ 60分 1本600円
・メタル 60分 1本1,200円
値段を分数で割ると、
・ノーマル 5円/分
・ハイポジ 10円/分
・メタル 20円/分
ざっとこのような計算結果になります。しかし、これを見ただけではしっくりこないかもしれません。
そこで、8GB 400円のメモリーカードと比較してみましょう。CDと同じ音質で録音すると…
49銭/分
円ではありません。『銭』です。さらにMP3などで圧縮すると、どうなるか想像がつくと思います。
実際に計算してみると、如何にカセットテープの録音料金が高いかを突き付けられます。でも、レンタルCDやレンタルレコードを録音していた頃は、これが当たり前でした。加えて価格に比例して音質も変わるということも、今では考えられないことです。
本当に便利な時代になりました。8GBが400円で購入できるようになったことには驚きです。
まとめ
価格に比例して録音時間が長くなることは、アナログもデジタルも一緒。でも、価格に比例して録音の音質が良くなることは、アナログだけ。
言い換えると、「できるだけ安いテープでイイ音を録る」という考え方は、カセットテープだけです。
録音にコストパフォーマンスを求めるのは、カセットテープくらいです。
メタルテープを使えば、もちろんイイ音で録れます。オークションでも活発に取引されているので、それだけ音質を求める方から需要があります。
しかし、メタルばかりではなく、コスパよくイイ音で録ることも、ぜひ頭の片隅に置きながらカセットテープを楽しんみてはいかがでしょうか。録音の腕が試されますよ。
【第1問】 A
【第2問】 B
【第3問】 A
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全問不正解・・三流
動画バージョン