ドルビーS 対 dbX!強力なノイズリダクションは副作用に注意!

 

こんにちは。西村音響店でございます。

今回はカセットデッキのノイズリダクションのお話です。

 

ご存知の通り、カセットテープは雑音の多い記録媒体です。何も録音されていなくても「シー」という音が鳴ります。いわゆるヒスノイズです。

これを低減させるために欠かせないもの、それがノイズリダクションです。民生用においてはドルビーのBタイプに始まり、Cタイプ、Sタイプと、強力な方式が開発されました。ドルビー以外にもdbx、東芝のadres、ビクターのANRSなど、ノイズリダクションだけでも何種類もの方式が存在しました。

極端のことを言えば、ヒスノイズを完全に除去できたら、それ以上に嬉しいことはありません。
(ヒスノイズも味の1つだ!と言われたらそれまでですが…)

もちろん、強力なノイズリダクションを使えばヒスノイズを皆無に近づけることは可能ですが、きちんとその代償があります。

今回は強力タイプの代表選手として、ドルビーSとdbXを取り上げます。

 

 

 

SN比80dBのドルビーS。100dBのdbX。

前者は1990年代に登場、後者は1980年代のデッキに多く使われた方式です。SN比で比べるとdbXの圧勝ですが、ドルビーSの80dBでも全然気にならないレベルです。後の聴き比べコーナーでチェックしてみてください。

その前に、両者がどのような仕組みでノイズを減らしているのか、仕組みを簡単におさらいしておきます。

 

高音域をやりくりするドルビーS

ヒスノイズは高音域(目安として10kHz付近)で目立ちやすい特徴があります。ノイズが目立つ分だけ音量を上げて録音し、再生するときには音量を下げればヒスノイズを減らせる、という方法がドルビーの考え方です。

ドルビーSは最終型の方式で、低音域までノイズを減らしてしまう優れものですが、原理的には古典的なドルビーBと類似しています。

 

でも、大レべルで録音したら高音域が歪んでしまうのでは?という問題が出てきますが、そんな心配はありません。

お手持ちのデッキを確認してみてください。メーターにドルビーマークが付いているはずです。

ドルビーマークを超えるレベルでは音楽でノイズが紛れてしまうので、わざわざ処理を行う必要がありません。一定のレベルを超える音には処理を行わない設計になっていて、非常に賢いです。

 

参考情報として、YAMAHA KX-580の取扱説明書にはこのように解説されています。

ドルビーC NRとくらべて、ドルビーS NRではノイズ低減効果が約40%向上し、さらに低域のノイズも約1/3に減少します。
低域用を含めて合計5つのノイズ低減ユニットを使用しており(低音用に2ユニット、高音用に3ユニット)、その全体の効果をモジュレーションコントロール回路で集中的に調整することで自然な音が再生されます。

 

ダイナミックレンジを圧縮するdbx

小さい音は2倍の音量で、大きい音は半分の音量で録音しようとするのがdbxの考え方です。

ドルビーと決定的に異なるのは、全周波数においてノイズリダクションの効果が発揮されるところです。

 

dbxの最大の特徴は、録音レベルの高さです。

デッキをdbxに切り替えると、「+12dBまで録音OK!」という風にメーターが表示されます。

個人的にはドルビーマークのように、dbxのマークもメーターに付いてたら便利だと思います。対数圧縮をしているので、音量を2倍にするか半分にするかの境目が必ずあります。難しい用語を使えば閾値となるレベルです。

もしこのレベルが分かれば、何dBまで耐えられるかが計算できます。仮に上のメーターで0dBが境目だったとすると、+12dBで入力したら実際にテープに記録されるのは+6dBです。ノーマルテープでは少し苦しい条件になることが推測できます。最大でも+8dBが限界でしょう。

 

ジャンル別に比較!副作用が強いのはどれ?

ノーマルテープは特にノイズが多い!
そこで、強いノイズリダクションを使いたいところです。

 

強力な効果を得る分には当然代償として副作用が発生します。例えば、余韻が不自然に消えてしまったり、不自然に高音域が強くなったりと、まず目立つのは音の不自然さです。

では、実際に副作用はどのように表れるのか、何種類か曲のジャンルを使ってドルビーSとdbxを比べてみましょう。

 

両者で得手不得手があります。。確かにdbxはヒスノイズが皆無に近くなりますが、音に違和感が出てしまうと厳しいです。

では、どんなジャンルの曲が得意なのか、それとも苦手なのか。比べてみましょう。副作用が出やすいように、ローノイズテープで録音します。

使用するデッキはこちら。

【ドルビーS】TEAC V-8000S (1991年製)

【dbx】A&D GX-Z9000 (1987年製)

両者ともフラッグシップのデッキです。とはいえども、副作用はしっかり現れます。元の音源のリンクも貼っておきますので、どれくらい音質が変わってしまっているかもチェックしてみて下さい。

アコースティック系

 ハイハットの音が歯切れよく録れているかに注目です。特に最初の部分。dbxは少し違和感が強いです。

【ドルビーS】

【dbx】

繊細な音を録音する状況では、ドルビーSに軍配があがると思います。立ち上がりが早い音を録音するにはドルビーの方よいです。

もしSタイプでも副作用が目立つようなときは、かえってCタイプの方が上手く録音できる場合もあります。実はこの曲、Cタイプの方が上手く録れます。

使用音源⇒https://maoudamashii.jokersounds.com/archives/bgm_maoudamashii_acoustic09.html

 
 

ロック系

アコースティック系より、両者ともに音の違和感は少ないように感じます。

【ドルビーS】

【dbx】

互角の勝負です。エレキギターが入っているので、曲ががやがやとしている分、副作用も目立ちにくいと考えられます。

ただ、いくらノイズリダクションが強力とはいえ、元々ヒスノイズの多いテープでは音質がイマイチになります。やはりLHグレード(音楽用)のテープが必要です。

使用音源⇒https://maoudamashii.jokersounds.com/archives/bgm_maoudamashii_neorock54.html

 

エレクトリック系

高音域がガンガン鳴る類の曲に関しては、dbxの方がイイ音で録れているように感じます。

【ドルビーS】

【dbx】

大レベルで録音するのはdbXが得意です。音圧の強い曲はdbxに軍配があがります。ドルビーは繊細さ重視、dbxはパワー重視といったところでしょうか。

ロック系と同じように、がやがやした曲は多少なりとも誤魔化せます。逆をいえば誤魔化せる曲でないとdbxは厳しいと思います。

使用音源⇒https://www.youtube.com/watch?v=5hqyXwP-oX4&rel=0&width=640&height=480

 

オーケストラ系

打楽器を使っていない分、ノイズリダクションの副作用は発生しにくいです。両者比べてみても、普通にイイ音で聴けます。 

【ドルビーS】

【dbx】

オーケストラの場合、曲の強弱が激しいのでノイズリダクションは必要です。ピアニッシモの部分を上手く録るかがポイントになると思います。出来るだけ録音レベルを上げようとすると、フォルティシモの部分でオーバーする恐れがありますからね。

どちらに軍配を上げようか迷うところですが、フォルティッシモの事を考えたらdbxの方が安心ですね。

使用音源⇒https://maoudamashii.jokersounds.com/archives/bgm_maoudamashii_fantasy14.html

 

ピアノソロ

革命、黒鍵、英雄、軍隊、子犬、蝶々。これらのキーワードとピアノと言ったら誰だか、もうピンと来ますよね。僕も最近はピアノソロを良く聴いています。とても癒されます。

しかし、カセットテープにとっては宿敵のジャンルです。強弱が激しい上に、ただ1つピアノの音が鳴るのみ。するとヒスノイズが非常に目立ちます。そこで強力なノイズリダクションに頼りたいところですが、dbxを使ってしまうととんでもない音になってしまいます。
 
【ドルビーS】

【dbx】

ドルビーSの圧勝です。dbxの方は、音が立ち上がるたびに、「シュワシュワ」という感じの音が乗ります。これがdbx最大の副作用です。

綺麗に録れるのは当然ドルビーSの方ですが、実はこちらも「シュワシュワ」という音が乗っています。耳を澄まさないと聞こえません。ノイズリダクションを使う以上、どうしても出てしまいます。こればかりはカセットテープの宿命です。

ピアノソロを録音するにはドルビーを。できれば、元々ヒスノイズが少ないハイポジを使う方がよいです。シュワシュワ音も低減します。

使用音源⇒https://maoudamashii.jokersounds.com/archives/bgm_maoudamashii_piano11.html

 

まとめ

一度聞くとノイズの少なさに驚かされるくらい強力なドルビーSとdbx。

カセットテープの宿命であるヒスノイズと戦ってきた足跡が、ノイズリダクションの進化として残っていると言っても過言ではありません。

しかし、面白いことに肯定派と否定派に分かれます。

肯定派「素晴らしい技術だから使わない手はない!」

否定派「音質が変わるから使わん!」

僕はノイズリダクション肯定派です。ただし、あまり強力な方式は使いません。その理由として副作用もそうですが、使えるデッキが限られることが挙げられます。

そうなれば、ドルビーBかCの二択になります。でもCタイプも少なからず副作用がありますので、結局はBタイプに落ち着きます。Bタイプで満足のいく録音をするには、やっぱりハイポジが欠かせません。

もう一つは、デンスケで聞くためです。TC-D5MのデンスケはBタイプしか対応していません。旅先で聞くためにデンスケは欠かせないお供ですので、やむを得ないところです。

ただ、携帯ラジオのような音で鳴る内臓スピーカーで聞くのであれば本末転倒です。