今回はカセットデッキの音質にもっとも重要なアジマスについてのお話です。アジマスとは、ヘッドの水平方向の角度のことで、文章では説明しにくいところもありますので、Excelで作った簡単な図で解説いたします。
シングルキャプスタン・2ヘッド方式の略図になります。こちらはアジマスが正常の状態を示しています。録再ヘッドと、テープの走行方向が真っ直ぐ水平になっている状態です。そしてアジマスがずれた状態は、次の図のようになります。
少し極端に示していますが、このように録再ヘッドがテープに対して斜めになっている状態です。このような状態で再生すると、高域の低下、再生レベルの低下といった現象が起きます。記録された信号を正しくトレース出来ていない為に起こる現象です。アジマスは再生時だけに関係すると思われる方もいらっしゃるかといますが、録音時にもアジマスが合っていないと歪みやすくなる現象も発生します。
それではアジマスが合わないとどうなるか、もう少し詳しく見てみましょう。ホワイトノイズをフラットな特性で録音したテープと、スペクトルアナライザーを使ってみます。デッキは録音にYAMAHA KX-690を、再生にSONY TC-KA3ESを使用しました。録音レベルは、メーター読みで-20dBです。
こちらは、アジマスが正常時の状態です。KX-690は安いモデルながらも高性能で、ノーマルテープでも20kHzまでフラットに録音出来ています。ノイズリダクションを考慮して、16kHz~20kHzが少し強調されているのがベストです。
では再生機のTC-KA3ESを、わざとアジマスをずらしてみます。再生ヘッドのアジマス調整用のネジは左下です。アジマスを調整した後は、ドライバーから磁気が移ることもありますので、必ずヘッドイレーサーを掛けておきます。
こちらが、アジマスがずれた状態です。直線状にだんだん高域の出力が弱くなってしまうのがアジマスずれの特徴です。ホワイトノイズを再生してこのようなグラフになっている場合は、アジマスが合っていない可能性が高いです。
アジマスの調整には10kHzの正弦波をリサージュ波形に映して、真円になるように調整する方法がポピュラーですが、音響店ではホワイトノイズを使った調整方法を採用しています。多くのデッキと互換性を取るため、客観的に特性を見ることが必要です。検査終了にメンテナンスを終えたデッキでホワイトノイズを録音しておくのは、このためです。かなり専門的な部分になりますが、興味のある方は図書館などで専門書を是非読んでみてはいかがでしょうか。