西村音響店

綺麗に録音するために…カセットデッキのバイアス調整

 

カセットテープの録音で欠かせない調整項目。

録音レベルとバイアス

録音レベルはきっとご存知かもしれませんが、易しく言い換えると「音量」ですよね。ところで、もう一つのバイアスって何でしょう?

実はバイアスにはかな~りディープな部分がありまして、何と説明したらよいか僕も困るほどの存在です。

わかりやすい説明としては、バイアスを調整すると高音域の強さが変わる、という説明ができます。デッキの取扱説明書にもそのように解説されている事が多いと思います。

ですので、まずは深く考えずにバイアスは高音域を調整するものと知っていただいて差し支えありません。

注意したいのは、高音域の強さが変わるのはあくまで付随的な効果であることです。バイアスの本質はもっと奥深いところにあります。

バイアスの本質についてはこちらの記事で、書道に例えて解説しています。興味のある方はぜひこちらもご覧ください。今回は深堀せず、基本的な部分であるバイアス調整のしかたに絞って紹介していきます。

 

 

「BIAS」と書かれたツマミ、ありますか?

本格的なカセットデッキになると、BIASと書かれたツマミが付いていることが多いです。具体的にどんな感じかというと、

バイアス調整つまみの例

こちらのデッキの場合は、矢印で示したツマミがバイアスを調整用です。

ただし、必ずしも本格的なカセットデッキだからといって、全部のデッキに付いているわけではありませんので注意が必要です。中にはそもそもバイアス調整を機能として搭載していなかったり、ボタン一つで全自動で調整を行う変態デッキも存在します。

 

別の機種も見てみましょう。

左側と右側で独立しているBIASツマミ

こちらのデッキの場合は、左用と右用でツマミが独立していて、それぞれ調整できます。多くは左右共通になっているのですが、このようなマニアックなタイプもあります。

 

左に回して高音UP。右に回して高音DOWN。

バイアス調整のツマミの回し方は、↑のタイトルの通りです。

厄介なのは、左回し(反時計回し)で高音が強くなるという風に、普通のボリュームとは回し方が逆であることです。これにはちゃんとした理由があるのですが、今回は割愛です(;´・ω・) 詳しくは冒頭で紹介した記事で。

ツマミを左に回して高音をUPさせることを「バイアスを少なくする」と呼びます。逆は「バイアスを多くする」です。

ツウな人ですと「バイアスを浅くする」「バイアスを深くする」という呼び方もしますが、カセットデッキの説明書では「少なくする」「多くする」の表現の方を多く見かけます。

どちらでも通じますが、ここではメジャーな方である「少なくする」「多くする」の表現に揃えたいと思います。

 

バイアス調整でどう音質が変わるのか

それでは実際にバイアス調整して録音すると、どんな音になるかを実験してみたいと思います。

テープはTDKのAD(音楽用グレード)を使用

 

まず録音する曲ですが、こちらを使います。元がどんな音質かを確認したうえで実験していきましょう。

元の音源

【MP3(320kbps 2.5メガバイト)

【WAV(96kHz-24bit 40.5メガバイト)

※できるだけ生に近い音でお届けするために、無圧縮音源もご用意しています。通信環境が良い方はぜひ無圧縮音源でお聴きください。

 

バイアス調整が適正

まずはバイアス調がちょうどよい場合です。上手く調整すると、どっちがカセットテープの音か分からないくらいの音になります。

BIASツマミを真ん中にして録音

【MP3(320kbps 1.5メガバイト)

【WAV(96kHz-24bit 25.6メガバイト)

今回使用したテープの場合、ツマミを真ん中した状態が最も良く録れる設定でしたが、使うテープによって最適な設定が変わります。ツマミを左に90度回すとちょうど良いテープ、右に45度回すとちょうど良いテープ、メーカーやグレードによって様々です。

 

バイアスが少ない

BIASツマミを左に回しすぎた場合、高音域が強く出すぎる、いわゆるハイ上がりの状態になります。ここで1つ注意したいのは、左に回せばいくらでも高音が強くなるわけではないという事です。使うテープによっては音が歪みやすくなることがありますので注意が必要です。(磁気記録の過程が影響しています)

BIASツマミを目一杯左に回して録音

【MP3(320kbps 1.6メガバイト)

【WAV(96kHz-24bit 25.2メガバイト)

 

バイアスが多い

今度は逆に、BIASツマミを右に回しすぎた場合です。この場合は高音域が出にくくなって、こもった音になります。どんどん右に回していくと、AMラジオみたいな音質に近くなっていきます。

BIASツマミを右に目一杯回して録音

【MP3(320kbps 1.5メガバイト)

【WAV(96kHz-24bit 24.9メガバイト)

 

バイアスを調整しながら録音

最後にBIASツマミを動かしながら録音してみました。音質の変わり具合がよく分かります。ちなみに3ヘッド方式のカセットデッキの場合、録音しながら音質の変化の様子をチェックすることができます。

【MP3(320kbps 1.5メガバイト)

【WAV(96kHz-24bit 25.0メガバイト)

 

ハマると面白いバイアス調整

高音域の調整というとイコライザーがふと思い浮かびますが、バイアス調整による高音域の変化は仕組みが全く違います。

イコライザーはその都度その都度調整できるのに対し、バイアスは録音のときしか調整できません。例えば、バイアスを少なめにして高音強めで録音したテープは、他のデッキで再生しても高音強めで再生されます。

一応テープによって最適なバイアス調整があるのですが、もちろん自分好みでアレンジすることもできます。「ちょっと高音を強めにしよう」「高音が強すぎるから少し絞ろう」全然OKです。

さらに高級機種になると、キャリブレーションという機能が付いていて、テープに最適なバイアス調整をメーターで教えてくれます。バイアス調整で味を占めると、恐らく必ずこの機能が欲しくなるはずです。

というわけでバイアス調整は、カセットテープの醍醐味の1つでもあります。

ではまた(・ω・)ノ

 

使用機材

デッキ

  • A&D GX-Z9000 (1987年製) ⇒ レンタルでご提供中。詳しくはこちら
  • テープ

  • TDK AD (1987年ごろ)
  • 使用楽曲

    ・音作品創作工房ナッシュスタジオ MN-M-0427

     

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