西村音響店

SL-HF95D STK5484の故障か?キャプスタンが不安定

 

SL-HF95Dは、βⅠ-SHBモードを搭載した上級モデルで、この機体は1988年製です。本来サイドウッドが付いていますが、欠品でした。

内部は少しヤニ汚れがある様子です。それで状態ですが、ローディングが不安定、再生でキャプスタンモーターが暴走するという症状が見られます。ローディング不調の様子がこちらです。



動作のタイミングがおかしいです。恐らくは、カムスイッチが接点不良を起こしていると推測しました。


ローディングモーターの下に、このような部品が付いています。これが、キャプスタンの圧着、ブレーキの制御を行い、抵抗値の変化によって、どのモードになっているかをマイコンで判断してローディングモーターを制御します。エタノールを注入し、手で繰り返し回して接点不良をなくします。

続いてメカの点検になります。まずはリール台の取り外しですが、SL-HF95Dの下位にSL-HF85Dがありますが、両者でリール台の構造が異なります。95Dはキャプスタンモーターとリールモーターが独立していますが、85Dはキャプスタンモーターで、リールの回転も共用しています。ですので若干動作音が異なります。

メカは3か所のネジで固定されており、うち1つはこの基板の裏に隠れています。レベルメーターをラッチを押して取り外すと、基板を固定しているネジが現れ、その裏にメカ固定のネジがあります。


あとは、繋がっている配線を処理していき、持ち上げるとユニットが外れます。キャプスタンモーターが暴走するということは、やはり駆動回路に原因があるように思いました。

このタイプのメカは、表面実装型の電解コンデンサが使われており、経年で電解液が漏れ、パターンを腐食していくという事例があるようです。まずこの確認をしてみます。


キャプスタンモーターの回路です。黒いカバーが掛かっていますが、ラッチで固定されているだけですので簡単に外れます。銀色の円柱状の部品が、そのコンデンサです。

コンデンサの足元を見てみると、半田は通常は銀色をしていますが、変色しています。これが電解液が漏れている状態です。実際に半田ごてを当ててみると、臭いを発します。化学物質のような、体にはよくなさそうな臭いです。

既に不良になっていますので、半田ごてを思い切り当てても大丈夫です。むしろしっかり半田を溶かさないと、パターンを剥がしてしまうので、十分溶けた状態で、軽く少し上へ持ち上げるように外すのがポイントです。

コンデンサと、D.D.モーター駆動用のICを外しました。電解液によって半田が溶けにくくなっているため、外すのが苦労します。無理に剥がそうとすると、パターンを破壊しますので注意です。

もう既にこのような状態で、だいぶ腐食が進んでしまったと思います。一旦半田を全て吸いとって、再度はんだ付けをします。

リード型の電解コンデンサに交換して、メカを搭載して動作を確認してみますが、やはり暴走が止まりません。

ふと思い出すと、電源ランプが付かないことに疑問を思って、単なる接触不良ではないと確信し、もしかしたら電源IC壊れているのではと思い、電圧を測ってみることにしました。

STK5478の電源ICで、5番ピンから9Vが出力されるはずですが、出力されていませんでした。9Vはキャプスタンモーターの回転速度検知のFGセンサーの電源ですので、これが無いと回転が検知出来ませんので、回転していないと判断して、暴走してしまいます。

8番ピンが12Vの出力ですが、ここは正常です。ということで、正常なSTK5478電源ICに交換すれば、修理可能かもしれません。1つくらいは解体して部品を確保してあると思いますので、現時点では交換する他ないと思います。

STK5441が壊れることは多々ありますが、STK5478も壊れるとは予想していませんでした。ひとまず、ICを交換して直ればよいのですが、直らないとなると厄介ですね。

 

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