西村音響店

メタルテープの録音はバイアス調整で音質を変えてはいけない。

カセットデッキのいろは 第35回
 

こんにちは、こんばんは。西村音響店の西村です。

音響店のブログをお読みくださり、ありがとうございます。

今回は、メタルテープの録音では、バイアスで音質を調整してはダメ!というテーマでお話ししてみようと思います。


 

 カセットテープに録音するとき、バイアスを調整すると思います。バイアス調整で音質を好みにコントロールすることができる事は、ご存知かと思います。

 バイアスを浅くすれば高音域が強くなって、逆に深くすれば絞ることができますね。カセットテープの大きな魅力の一つです。

 

 ですが、それが可能なのはノーマルとハイポジだけです。

 


 

メタルテープはバイアスが命!

 まずは、ノーマル・ハイポジ・メタルで、必要なバイアス量の違いを復習します。

 ノーマルテープが必要とするバイアス量を基準とすると、ハイポジは1.6~2.0倍メタルは3.5倍必要です。

 カセットテープは磁気で記録する事はもうご存知かと思いますが、記録するためにはエネルギーが要ります。

 そのエネルギーがバイアスです。メタルテープは記録するには、ノーマル・パイポジよりも強いエネルギーが必要です。

 

 つまり、エネルギーが不足すれば録音ができなくなってしまいます。

 『バイアスは録音に必要なエネルギー』ということを、ちょっと覚えておいてください。


 

 では、メタルテープに録音するときに、バイアスで音質を調整をしてはいけないかの理由です。

 
 それは、

 

少しバイアス量を変えただけでは音質は変わらない。

 

 バイアス調整が可能なカセットデッキをお持ちでしたら試してみてください。

 例えば、少し高音域を強くして録音しようとします。

 まずはノーマルテープで、一目盛、二目盛つまみを(-)側に動かしてみてください。音質の変化がはっきりわかると思います。

 同じようにメタルテープでも試してみてください。ノーマルよりも音質の変化が少ないはずです。

 

 ということは、メタルテープで高音域を強めようと思ったら、バイアスを調整する量を多くしなければなりません。

 しかし、これをやってしまうと、先ほどご紹介した『録音に必要なエネルギー』が不足します。

 不足すると音が歪みやすくなってしまい、そこそこ良いノーマルテープに音質面で逆転勝利されてしまいます。

 

 逆に、高音域を弱める場合はバイアスを深くするので、エネルギーが沢山入ります。しかし今度はエネルギーが多すぎて消去作用が働くため、音が小さめで録音されてしまいます。


 

 よって、メタルテープの録音でバイアスを変えてはいけないのは、

 

★音質を変えるには、バイアス量も大きく変える必要があること。

★大きく変えると、録音に最適なエネルギー量ではなくなること。

 

 この2点がポイントです。

 

メタルテープはイコライザーで調整しましょう。

 エネルギーとなるバイアスを減らすことができないのであれば、録音イコライザーで調整するしかありません。

 録音イコライザーも、高音域を強めたり弱めたりすることができます。バイアスと違うのは、デッキに入力される音を変える点です。

 つまり、エネルギー量は変わらないので、直接的に録音能力が低下するという影響は出ません。

 バイアスとイコライザーを上手く組み合わせる事が、メタルテープの録音では重要になってきます。

 

バイアスとイコライザーの違いを表にまとめてみました。

 

 何度も繰り返しになりますが『バイアスは録音に必要なエネルギー』です。これさえ覚えておくだけで、あなたの録音技術はぐんと上がります。

 

 さて、録音イコライザーの調整方法ですが、実は調整できるカセットデッキが少数です。多くは調整ができません。

 ソニーは調整可能なデッキが多くありますので、1台あると便利です。

SONY TC-K333ESJ
録音イコライザーを3段階で切り替えることができます。

 恐らく、これから新品のメタルテープに録音してみようと考えている方も見えると思います。もし、お持ちのカセットデッキでメタルテープに上手く録音出来なければ、相性という問題があります。

 相性は、デッキの録音イコライザーの設定によって生まれるもので、必ずしも全部のメタルテープで上手く録音出来るとは限りません。カタログに推奨テープが記載されていることがありますが、その理由が相性です。

 もし、メタルテープでバイアスを調整しても歪みが多くなってしまう方は、ぜひ違うデッキで試してみてください。

 音響店ではデッキの貸出しも行っています。お持ちのデッキでは、もしかしたらメタルテープが持つ性能を十二分に発揮できていないかもしれません。

 

まとめ

 メタルテープは、バイアス調整で好みの音にすることが少し難しいので、少し不便なところはあるかもしれません。

 しかし、メタルテープの性能をしっかり発揮させることができれば、CDなどのデジタル媒体では出せない力強い音になります。

 オークションではプレミアムが付くほど、希少価値の高いメタルテープ。1本1本、大事に使っていきましょう。

 

 もし、いきなり新品のメタルテープに録音することに抵抗があれば、使用済みのテープで練習してみるのも手です。

 カセットテープの録音は技術です。練習することでどんどん上達していきますよ(^^

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

 

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