皆様こんにちは、西村音響店の西村です。
この度もご覧いただき、ありがとうございます。
カセットデッキの基礎を学ぶ、「カセットデッキのいろは」、今回は第16回です。
第15回では、ドルビーノイズリダクションについてご紹介いたしました。カセットテープにとっては避けられないヒスノイズは、ドルビーにより少なくすることが可能な反面、音が少し変化してしまう副作用といったデメリットも持っています。
そのようなことから、「僕はドルビーは普通に使ってます。」という方と、「私は絶対にドルビーは使いません。」という方に分かれると思います。私自身は、どちらかというと前者よりですが、重要なのは必要に応じて使うということになるでしょう。
さて、今回のテーマは、キャリブレーション。
これは、より高音質な録音をすることが、一番の目的かもしれませんが、前回のドルビーにも関係してきます。正しく調節を行うことで、ドルビーを使っても、音の変化が少ない綺麗な音で録音できるようになります。
それでは、ご一緒にみていきましょう。
キャリブレーションとは何か?
キャリブレーション(Calibration)、日本語で校正するという意味になります。
カセットデッキにおけるキャリブレーションとは、低音域から高音域までバランスよく録音するための調整のことをいいます。
もう少し表現を変えると、例えばCDからカセットテープに録音するとき、CDと出来るだけそっくりな音で録音するために、キャリブレーションを行うといった具合です。
「いろは」シリーズの第8回でご紹介した、バイアスの調整も、一種のキャリブレーションです。
ところが、カセットデッキで俗にいう「キャリブレーション」とは、録音レベルとバイアスを調整するための、機能のことを指すことが多いかもしれません。
キャリブレーション機能の使い方
キャリブレーション機能が搭載されているカセットデッキの場合、キャリブレーションモードに切り替えるスイッチやボタンがあります。
このデッキの場合、「CAL」と書かれたスイッチを押すことで、キャリブレーションモードになります。
するとメーターが、LEVEL・BIASの表示に変わります。LEVELは低音域、BIASは高音域の強さを表します。
LOW・HIGHと表示される機種もありますが、こちらはLOWが低音、HIGHが高音です。
キャリブレーション機能の使い方は、機種によって異なりますので、もし取扱説明書があれば確認してみましょう。
それでは、実際にカセットテープを入れて、キャリブレーション機能を使ってみます。
カセットを入れたら、キャリブレーションモードにして、録音を開始します。すると、メーターが振れだします。
調整は、メーターに表示されている▲印に合わせます。▲印に合わせると、例えばCDを録音する場合でしたら、CDとそっくりな音で録音出来るようになります。
この状態ですと、▲印よりも大きく振れているので、低音、高音ともに、少しレベルが大きいことを表しています。
では、▲印に合うように調整しましょう。調整には、CALIBRATIONと書かれた2つのツマミを動かします。
調整の方法は、それぞれ好みがあるかもしれませんが、私の場合は、
低音域(LEVEL)⇒ 高音域(BIAS)
の順番で行います。
まずは、低音が少し強いので、LEVELを少し下げます。すると、LEVELのメーターが▲印に合います。
LEVELを調整すると、低音から高音まで、全域のレベルが変わりますので、LEVELとBIAS両方とも変化します。
ちなみに、LEVELを最小位置に設定すると、このようになります。LEVELとBIASともに、振れ方が小さくなりました。
次に、高音域(BIAS)を調整します。高音も少し強いので、レベルを下げる必要がありますが、今度はバイアス調整なので、バイアスを深くします。バイアスを深くするには、BIASつまみを時計方向(+方向)回します。
★いろは<a href="http://nishimurasound.jp/blog/archives/3150">第8回</a>の復習です。 ・高音域を強くするには―― バイアスを少なく(浅く)する。【時計回し】 ・ 〃 弱くするには―― 〃 多く(深く)する。【半時計回し】
LEVEL、BIASとも、▲印に合いました。これで、キャリブレーションは完了です。
BIASの調整は、高音域だけ変化するので、LEVELのメーターは殆ど変化しません。
殆ど変化しないと表現したのは、テープによっては、BIASを変化させると、LEVELが1目盛大きくなったり、あるいは小さくなったりする事があります。
これは、磁気特性によるものですので、異常ではありません。もし、BIASを調整して、LEVELも変わってしまった場合は、もう一度LEVELの調整を行いましょう。何度か繰り返し調整すると、▲印に合わせることができます。
キャリブレーションが完了したら、録音を停止して、CALスイッチを再度押し、キャリブレーションモードを解除しましょう。
最後に、録音レベルの調整をします。こちらは、第7回でご紹介したように、メーターに表示された最大レベルの目安を参考に、音が割れないよう調整します。
これで、録音の準備はすべて完了です。録音を始める位置までテープを巻き戻して、録音を始めて下さい。
3ヘッド方式であれば、録音した音を同時に聞くことができるので、CDの音とカセットに録音された音を聞き比べてみましょう。CDとカセット、殆ど音に違いがないと思います。
キャリブレーションを行うメリット
キャリブレーション機能が搭載されているカセットデッキは、低音域と高音域のバランスが、メーターで確認できるので、耳で聞くよりも正確な調整が可能です。
また、キャリブレーションを行うと、ドルビーの信号処理を正しく行うことができ、音が変化してしまう副作用も少なくなります。
ドルビーが正しく信号処理を行うためには、録音する信号と、再生する信号が、同じレベルであることが必要です。
例えば、CDから-20dBの信号を録音するとしたら、その信号を録音して再生したときに、-20dBで再生されたらOKです。もし、CDよりも大きい、あるいは小さい場合は、補正が上手く行えていないことになります。
どうしても避けられない誤差はあるかもしれませんが、理想としては
CDの音のレベル = テープの再生レベル
の状態がベストです。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
キャリブレーションは、高音質な録音のためだけではなく、ドルビーとも密接な関係があります。
メーターを見ながら調節を行うことで、正確な録音ができますが、最後はご自身の耳で確かめ、一番お好みの音で録音しましょう。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。