【カセットデッキ】キャプスタンモーターは1種類じゃない。4種類もある。


 

カセットデッキのいろは 第24回

 

 どうもこんにちは、こんばんは。西村音響店の西村です。

 今回はキャプスタンモーターについて取り上げましょう。カセットデッキに限らず、テープレコーダーには、テープを常に決まった速度で送るために、キャプスタンがついています。カセットデッキのいろはの第1回でお話ししました。

 そもそもこのシリーズを始めようとした理由というのは、基礎として座学をしっかり押さえたかったからです。クルマの教習所でいえば、学科ですね。学科で原理を頭に入れた上で、実技で練習することによってより上達します。マニュアル車なら、半クラッチをしないと発進できません。エンストしちゃいますよね。でも、マニュアル車の発進方法を事前に勉強しておけば、いざ練習の時にクラッチ操作に気を付けることができので、練習するうちにスムーズに出来るようになるはずです。

⇒前回のおはなし 安い物と高い物はここが違う!
第1回 カセットデッキの録音再生で重要な4つの部分とは?

 

 

 さて、今回読まれている方はキャプスタンの役目を既にご存知だと思います。では、常に一定のスピードで回さなくてはいけないキャプスタンに、どんなモーターが使われているのでしょうか。 今回はキャプスタンモーターに焦点を当てていきたいと思います。

 

キャプスタンモーターは1種類だけじゃない。

 どのカセットデッキにも必ず付いているキャプスタンですが、同じキャプスタンとはいえ、実は機種によってモーターが違います。

「全部同んなじにすればいいじゃん。」

と言いたいところですが、それはちょっと難しい問題があります。モーターによって得手不得手があるためです。

 この得手不得手があることが、カセットデッキに高いグレード、安いグレードというランク分けが生まれる要素の1つになります。とはいっても原理は単純です。コストを掛けて高性能を得るか、性能を抑えてコストパフォーマンスを高めるか、いわゆる部品のトレードオフです。

 では、キャプスタンモーターの種類を紹介していきましょう。

 

DCサーボモーター

 普通の直流モーターに、回転速度をコントロールする回路を内蔵したものです。普通のモーターというのは、秋月電子などの電子部品屋でよく売っているモーターですね。6万円以下の比較的安価なモデルに使われることが多いです。一部の高級機でもこの種のモーターが使われている機種があります。また、オートリバース対応のデッキは、構造上殆どDCサーボモーターが使われます。

 仕組みは、モーターに負荷が掛かって速度が落ちると自動的に電圧を上げて力を増し、負荷が少なくなったら電圧を下げるという動作を行って、決められた回転数をキープするように制御します。

 基板が内蔵されている関係で、温度変化によるスピードの誤差が発生しやすい点や、モータープーリーの径が小さいため回転安定性は劣るという短所がありますが、コストを抑えられるので、エントリーモデルの機種には欠かせないモーターです。

YAMAHA K-1XWのキャプスタンモーター。他の機種でも、DCサーボモーターは殆ど同じ構造をしている。

 

DCガバナーモーター

 速度制御にコイルの磁界を利用したモーターで、’70~’80年初期の古いモデルに採用が多いです。外見は先ほどのDCサーボモーターと同じような形をしています。

 コイルに電流を流すと電磁石になる原理を使って、回転が速やすぎるときは磁界を強めて回りにくくします。逆に、遅くなったときは磁界を弱めて回りやすくします。これを連続してコントロールすることで回転数を一定に保っている仕組みです。DCサーボモーターは電圧で制御するのに対して、ガバナーモーターは磁力で制御するところが違います。

YAMAHA K-1Bのキャプスタンモーター。DCモーターに余分にコイルが付いていたらガバナーモーターである。

 

ダイレクトドライブモーター

 ベルトを介さず、直接キャプスタンを回す方式です。フライホイールと呼ばれる真円の錘にマグネットが付いており、駆動用の基板に取り付けられたコイルの磁界で回す仕組みです。棒磁石のN極とN極は反発し合うのは皆さんご存知だと思いますが、ダイレクトドライブはこの原理を使っています。

 回転中は常にコイルの電流をON/OFFする事により回転を維持します。回転速度を速くしたいときはON/OFFのスピードを速くすればよく、もっと力が欲しいときには電流を多くすればトルクが大きくなります。常に騒音が少なく、回転ムラが非常に少ないという長所がありますが、専用の制御回路が必要でコストが高く、高級モデルを中心に採用されています。ON/OFFを繰り返すことをスイッチングといいますが、スイッチング用の回路が、どうしても高くなってしまうのです。
 
 高級機の多くは2つのキャプスタンを回すクローズドループデュアルキャプスタンなので、その場合は右側を駆動し、ベルトを介して左側も回します。


ソニーが1989年から採用しているダイレクトドライブモーター。名称が長いので、略してD.D.モーターとも呼ぶことがある。

 
 

BSLモーター

 これはソニーだけに使われているモーターです。先ほどのダイレクトドライブモーターと同じ原理を使っていますが、ダイレクトドライブではなく通常のサーボモーターのようにベルトを介して駆動します。高級機になると、テープの巻取りまでBSLモーターを使って信頼性を高める構造になっています。 

ソニーTC-K75のBSLモーター。1984年発売のTC-K333ESまで採用された。モーター本体の下にある基板が制御用の回路。

 
 

D.D.モーターでオートリバースは不可能?

 答えは、可能です。

 先ほど、オートリバース対応のデッキで、D.D.モーターは殆ど使われないとご紹介しましたが、もし、オートリバースでこの方式を使いたいのであれば、両側に駆動用のコイルを設ければよいです。

 しかし駆動用回路がさらに複雑になり、コストが非常にかかってしまうため、基本的には用いられません。採用例としては、赤井電機のGX-R99、GX-R88くらいです。この2台は、オートリバースでありながら、クローズドループデュアルキャプスタン方式となっており、音質、機能性ともに弱点なしのモデルに仕上がっています。究極の3ヘッドデッキですね。

 

 

まとめ

 いかがでしたでしょうか。前回のカセットデッキの高いもの安いものというお話の中で、キャプスタンモーターの違いよって差別化を図っているとご紹介しましたが、コスト掛ければ掛けるだけ高性能になります。

 しかし、高性能だけのモデル展開だけではニーズに応えられないですから、性能をほどほどにする代わりに価格を安めに設定することで、最高の音質で聴きたい方から最低限カセットが聞ければよい方まで、ターゲットを複数持つことができます。すると購入する人数も増えますので、利益の面でも有利になるでしょう。

聴きたい人から聞きたい人まで。
 
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。