西村音響店

同じノーマルテープでも昔は性能によって区別されていた。

カセットデッキのいろは 第43回

 
こんにちは、こんばんは。西村音響店の西村です。

音響店のブログをご覧くださり、ありがとうございます。


 

この記事を読んでいる方でしたら、カセットテープの種類はもうご存知でしょう。

『ノーマル・ハイポジ・メタル』

メタルが主流になる前は、フェリクロームという種類もありました。

合計すると4種類。TypeⅠ,TypeⅡ,TypeⅢ,TypeⅣとあります。

 

 ところで、ノーマルポジションには3種類あったことはご存知でしょうか?

 実はカセットテープがまだ成長途中の1970年代、同じノーマルテープでも区別がありました。

 今回は『ノーマルテープの区別』について取り上げていきます。

 

 

性能によって区別されたノーマルテープ

 かつて、同じノーマルポジションのテープでも、性能によって3種類に細かく分類されていました。

 その3種類が、

  • スタンダード
  • ローノイズ
  • ローノイズ・ハイアウトプット

 

 分類の基準となる性能ですが、磁束密度、保磁力といった磁気特性で分けられます。簡単な表現にすると、録音に必要なバイアス量、ノイズの少なさ(SN比)、録音レベルの限界(M.O.L.)、が分類の基準です。

 

スタンダード

 『スタンダード』は、未だ音楽用としてカセットテープが主流でなかった頃のテープです。元々カセットテープは、音声を記録する目的で使われていました。

 それから、磁気テープが高性能になったことで音楽用としても使われるようになり、LNとLHの2種類が主流になっていきます。


西村家に唯一残っているスタンダードテープ。

 

ローノイズ(LN)

 略称で『LN』ともいいます。 各メーカーで、下のグレードにあたるテープが該当します。1970年代で挙げると、「ソニー CHF」、「TDK D」、「マクセル LN」があります。

 音声記録がメインで、一応音楽用としても使えるといった立場になるのかなと思います。

 
 
 IEC(国際電気標準会議)の規格によれば、、磁束密度が1200ガウス程度のテープがLNに分類されるそうです。

 ただ、1200ガウスと言われてもしっくり来ないと思います。そこで、バイアス調整つまみで例えると、目一杯浅くしても調整が合うかどうかです。キャリブレーションも厳しいかもしれません。

 実際に、1990年のデッキ(A&D GX-Z9100EV)とCHFテープでキャリブレーションを行ってみると、バイアス調整つまみを反時計回りに一杯に回してギリギリでした。

 

 となると、1980年代に登場するテープは殆どローノイズ・ハイアウトプット(LH)に分類されてしまうのではないかと思います。

【LOW NOISE】という表示も、いつの間にか無くなってしまいました。

 

マクセル LN

 

ローノイズ・ハイアウトプット(LH)

 略称で『LH』ともいいます。ノーマルテープの中では最も高性能なランクで、まさに音楽用テープです。

 TDKのADが有名ですね。ほぼ全員の方が使っていたのではないでしょうか。平成生まれの僕が言うのはおかしいかもしれませんが、音楽用テープのスタンダードと言ったらADです。性能や音質でも申し分のないテープだと思います。

 

 LNテープと大きな違いが、録音に必要なバイアス量です。LNテープに比べて、LHテープはバイアスを多く必要とします。実際に両者のテープをデッキで録音してみると、LHテープの方がバイアス調整つまみが(+)側になります。

 高性能なカセットテープになるほど、必要なバイアス量が多くなる傾向にあります。例えば、同じTDKのADでも、1970年代と1990年代のADでは、後者のほうがバイアスを深めに設定します。

 他のテープでも、同じ銘柄のテープなのに後の世代になるほど、バイアスの設定が深めになっていくはずです。これはしっかりテープの性能が進化している証拠と言ってもよいと思います。


TDK AD

 

過去にはデッキにLN,LHの切り換えがあった

 1970年代と1980年代の境目にあたる時期のカセットデッキには、LNテープとLHテープの切り替えが可能なモデルが存在しました。

 バイアスの切換スイッチに『LN・LH・ハイポジ・メタル』とあったのです。

 ところが、テープを入れただけで自動的に切り替える方式になってからは、LNとLHが分けられることがなくなりました。

 それだけテープが高性能になり、区別する必要がなくなったのではないかと考えています。


 

 1台見てみましょう。

 1980年の SONY TC-K75です。

 

 

 バイアスの切り替えスイッチが、LOW,MID,HIGH,METALとあります。

 その中の、LOWとMIDが、ノーマルポジションの位置です。ノーマルでも切替えが2つあります。

 使い方は、

  • LOW = LNテープ
  • MID = LHテープ & フェリクロームテープ

 

 スイッチを「Low」に設定すると、バイアスが浅めにセットされます。TC-K75にはバイアス調整つまみがありますが、Lowにセットすることで、さらにバイアスが浅くなります。

 ただ、手持ちのノーマルテープで色々試してみると、多くはMidに設定した方が良い感じです。Lowの方が良かったのは、ソニーのCHFくらいでした。

 

まとめ

 いかがでしたでしょうか。

 いつの間にか区別される事がなくなった、LNとLH

 区別されなくなったということは、両者とも音楽用に使えるほど高性能になったという意味かもしれません。

 現在販売されているマクセルのURテープでも、大昔のテープと比べたら性能は良いと思います。録音の仕方しだいでは、CDと遜色ない音で録音可能です。

 絶頂期のテープと比べたら敵いませんが、音楽用としては十分の性能を持っていると思います。僕もURをよく使っている一人です。

 今後の楽しみ方として、URで如何に良く録音するかを追求するのもアリかもしれません。

 

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

 

Return Top