カセットテープは『録音』という当たり前の開祖である。

カセットデッキのいろは 第44回

 

こんにちは。こんばんは。西村音響店の西村です。

音響店のブログをご覧くださり、ありがとうございます。


 

 今回は、カセットテープの歴史に着目したテーマでお送りします。

 我々が何気なく行っている『録音』。CDからパソコンや携帯に取り込んだりする事は、もはや当たり前です。

 でも実は、この『録音』当たり前を作り出したのは、カセットテープだったそうです。

 

 

世界で初めて録音したのはエジソン。

 数々の家電製品の基盤を生み出した発明家のトーマス・アルバ・エジソン。音を録音し再生することを可能にしたのもエジソンです。

 1877年にフォノグラフが発明され、音は記録することが可能であることを世に知らしめました。『録音』のスタートはここからです。

 原理は現在のレコードと殆ど同じですが、録音するときは大きなラッパを音で振動させ、その振動で針を動かし溝を作ることによって記録するものだったそうです。

 ラッパは今で言うマイクロフォンです。ラッパから拾った音を増幅し、針を動かして記録していました。

 ※厳密には、エジソンが発明する以前にも既に研究がされていたそうです。

 

 エジソンのフォノグラフから始まり、蓄音機へと進化します。まだまだ蓄音機は現存していますが、かなり貴重な存在になったと思います。

 僕はまだ蓄音機の音を聞いたことがありません。

 そして今日、再びブームが戻ってきているレコードへと進化を遂げていくわけです。

 

 しかし、これらに共通していることがあります。

 

 それが、

素人が録音できるものではない。

 

 実際にレコード盤を作るのには、かなりの費用が要ります。専用の機械も必要ですし、レコード盤はプレス機によって量産されます。到底、僕たち個人が出来るものではありません。

 

磁気テープの登場で『録音』との距離が縮まる

 世界初の磁気テープレコーダーは、1935年のマグネトフォンと言われています。オープンリールの開祖となりました。

 それ以前にも、ワイヤーを使った磁気記録が1899年に発明されていました。しかし、すでに実用化されていた蓄音機に音質や録音時間の面で勝てず、磁気テープに移行することになります。

 

 さて、磁気テープへの録音が可能となったオープンリールですが、残念ながら『録音』の文化を広めることは難しいものでした。

 オープンリールは、レコーダーが大型で、テープもいちいち掛け替えなくてはならず、利便性としてはイマイチです。扱いにくさが普及しなかった原因であると思います。

 ただ、音を上書き録音できるのは磁気テープならではで、これは当時としては革新的な機能だったことでしょう。

 僕たち個人でも、録音機、テープ、マイクがあれば、すぐに録音することができ、録音がより身近になったと思います。

 

『録音』の当たり前を作ったカセットテープ

 扱いにくさが問題であったオープンリールですが、1962年にはいよいよカセットテープが開発されます。

 磁気テープをケースの中に収めてしまうことで、面倒なテープの掛け替えが不要となった画期的なメディアの誕生です。

 素人でも簡単に扱えるようになりました。

 

 レコーダーも小型化されたことで、『ラジカセ』という言葉も誕生しました。 ラジオ録音も、テープを入れて録音ボタン一つでOK。録音がぐっと身近になりました。

 「テープを入れる」というフレーズも、カセットテープが登場してから生まれたと思います。

 さすがにオープンリールでは「テープを入れる」という表現は似合わない感じがしますが、皆さんはいかがでしょう?どんな表現が合うでしょうかね。

 やはり「テープを掛ける」のほうが似合いますかね(笑)

 

 やがて、録音のメディアとして普及していったカセットテープ。『録音する=カセットテープ』という新たな常識を作ることになります。

 残念ながら今日では、もう古い常識になってしまいました…今は録音ではなくダウンロードです。

 

カセットテープが生み出した文化

 録音メディアとして普及したカセットテープ。小型で扱いやすいことから、オープンリールやレコードでは不可能な文化を生み出していきます。

 こんな言葉が流行っていましたよね。

  • 生録
  • エアチェック

 

 もちろんこれらの言葉は、僕(平成生まれ)が勉強してから知りました。

 

 生録の詳しい事情は分かりませんが、ソニーのデンスケを使って環境音や汽車の音を録音していたそうです。

 小型のカセットテープ+小型のレコーダーでしか不可能な、屋外での録音ができるようになりました。

 カセットテープが生み出した新たな文化の1つと言ってよいでしょう。

 

 もう一つ、FMラジオを録音するエアチェックがありました。

 お客様とお話しするときに、僕から「エアチェックやってるんですか?」と尋ねるとびっくりされる方も見えます。

 自宅には親が録りためた数百本のテープがありますが、探すとエアチェックらしきテープが出てきます。ただ、本格的ではなく、単にラジオを録るという感じの録音だったので、完全なエアチェックではありません。

 エアチェックが流行った当時は、少しでも良い音で録音するために、チューナーを調整したり、録音の技術を磨いたりしていたのだと思います。

 

 しかし今では、インターネットでラジオが聞けてしまいます。仮に録音しても要らない部分は簡単に削除できますから、曲がかかるタイミングを計る必要はありません。

 殆どデジタルになってしまいましたが、思い出としてまだアナログは残っていると思います。

 

 そのほかにも、ウォークマンの登場で、外で音楽を聞くという文化も浸透しました。昭和生まれの皆さんであれば、「ウォークマン=カセット」と反応してしまうのではないでしょうか。

 車の中で音楽を聞く文化も、カセットテープが生み出したことに違いありません。

 録音だけでなく、音楽を聞くハードルもぐんと低くなったことでしょう。

 

時と場所を選ばず音楽が聴ける。

 
今では当たり前ですが、この当たり前を作ったのがカセットテープです。
 

さいごに

 今回は、カセットテープの歴史に着目し、どんな文化を生み出したのかをテーマにお送りしました。

 今では趣味・娯楽として生き残っているカセットテープですが、改めて録音の歴史を勉強してみると、『録音』という当たり前を作ったことに気づきました。

 音質と利便性を両立した究極のアナログメディアだと思います。

 

 少しプライベートな話になりますが、祖父が日本舞踊と三味線の先生でした。お弟子さんに稽古するときもカセットテープが活躍しており、稽古に使われたテープが自宅にあります。

 習い事の道具としても、カセットテープは一役買われたものだったとことでしょう。

 

 最後までお読みくださり、ありがとうございました。

 

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第43回 同じノーマルテープでも性能によって区別されていた。