カセットテープには主に3種類のテープが存在します。それが、
『ノーマル』『ハイポジ』『メタル』
実際に使っていた方は懐かしいかもしれません。逆に知らない方からすると、同じカセットテープなのに3種類ある事が謎に感じるかもしれません。
先に3種類の違い言ってしまうと、ズバリ価格と音質!…も一応正解なのですが、さらに重要な違いがあります。それが、
テープの原材料
もう少し難しい用語では磁性体(じせいたい)と表現しますが、これが違うためにノーマル・ハイポジ・メタルと分かれているのです。
というわけで今回は、知っている方も初めて知った方も、改めて3種類のカセットテープにそれぞれどんな特徴があるのかを紹介したいと思います。
ノーマルテープ
カセットテープの最も基本となる種類です。価格帯を問わず、すべてのカセットデッキ・ラジカセに使えます。
呼び方としては「ノーマルテープ」「ノーマルポジション」、英語では「TypeⅠ」という呼び方もあります。一番短い呼び方は「ノーマル」ですね。
原材料には主に酸化鉄が使われています。テープの色は、赤茶色や焦げ茶色が多いです。
価格は3種類の中では最も安いですが、ノイズがやや多めで音質はそこそこです。ただし音楽用に開発されたテープは、ノイズを減らす工夫や、大音量に耐えられるような性能になっていて、決して音質は悪くありません。
強弱が少ないポップス系の曲であれば、ノーマルテープでも十分な音質で録音が可能です。欠点であるノイズも、ノイズリダクション機能が付いているデッキであれば併用することで、ハイポジに近いくらいにノイズが減ります。
安い汎用のものから高価な音楽専用のものまで、ラインナップが幅広い点もノーマルテープの特徴と言えます。
※ノイズリダクション機能・・・無音状態で聞こえてくる磁気テープ特有の「シー」というノイズを低減するシステム。ドルビーか開発した方式がメジャーで、搭載されている機器には「DOLBY NR」の表示がある。
ノーマルテープの特徴
◎価格が安いので手軽に使える
◎すべての機器に使える
△ノイズがやや多い
△低品質なテープは大音量で音が割れやすい
ハイポジションテープ
続いてはハイポジションです。略してハイポジ。
英語では「TypeⅡ」と呼ばれます。「ハイポジテープ」という呼び方も出来ますが、個人的にはちょっとリズム感がいまいちですので、「ハイポジ」と呼んでいます。もしくは少し渋い呼び方で「クローム」です。
使われる磁性体は、コバルトと酸化鉄です。テープの色は、真っ黒もしくは黒褐色です。
しかし登場当初のハイポジは、二酸化クロムという磁性体が使われていました。このような経緯もあって、ハイポジ全体を「クローム」と呼ぶ人もいます。
ハイポジの音質で特徴的なポイントは、ノイズの少なさです。特にジャズ、クラシック、インストゥルメンタルなど、楽器の音がメインで比較的静かな曲を得意とします。
ハイポジを使うときに、注意するポイントがあります。それは、ハイポジに対応しているカセットデッキ・ラジカセを使う事です。
ノーマルとは磁気テープの特性が異なるため、録音や再生の時にはハイポジ用の設定が必要になります。取扱説明書に「ノーマルテープをお使い下さい」と書いてあった場合は、ハイポジは使えません。
それでも無理やり使う事はできますが、かえって音質を悪くするなどの逆効果になってしまいます。具体的には、高音が強く出すぎてしまったり、前の音を消しきれずに薄っすら残ってしまうといった現象が出ます。
再生の時は少し高音が強く出るくらいで然程大きな問題にはなりませんが、録音で前の音が残るのは大問題です。ちなみに前の音が残ってしまうのは、ノーマルに比べて1.6倍程度の強い電流が必要であることが理由です。
ノーマルよりは価格が高いですがメタルと比べると安く、個人的には最も使いやすいテープだと思います。さらに高級グレードのハイポジは、低価格グレードのメタルテープよりも音が良かったりもします。
ハイポジの特徴
◎ノイズが少ない
◎価格と音質のバランスがよい
△ハイポジに対応している機器が必要
メタルテープ
カセットテープで最強の性能を誇るのがメタルです。「メタルテープ」「メタルポジション」、英語では「TypeⅣ」と呼ばれます。
磁性体は鉄を主体とした合金です。ノーマルは酸化している鉄ですが、メタルは酸化していない鉄が使われます。テープの色は、光沢があるダークグレーです。
録音できる最大音量の限界が高いので、大音量の録音ができて力強い音になったり、オーケストラなどの強弱が激しい音源に向きます。音の迫力に優れるという点がメタルテープの音質の特徴といえます。
先ほどハイポジの節で対応している機器が必要と紹介しましたが、もちろんメタルも対応している機器が必要です。こちらも取扱説明書などで、メタルテープが使えるかどうか確認しましょう。
ただしメタル対応の機器となると、昔の高級なラジカセや本格的なカセットデッキしか対応していないことが多いです。2021年3月現在、現行製品でメタルに対応しているデッキは残念ながらありません。
またメタルテープの中でも非常に高い性能・高音質を誇る、中古価格でも1本1000円を超すような高級テープがあります。そのようなテープは、デッキも高級機種など相応のものでないと、テープの性能を十分に発揮できないことがあります。
メタルテープを使えば、最高の音質を手に入れることが出来ます。しかしテープの価格が非常に高いうえに相応の機器が必要になるため、上級者向けのテープと言えそうです。
メタルの特徴
◎音の迫力に優れる
◎音の強弱に強い(ダイナミックレンジに優れる)
△非常に高価
△メタル対応の機器が必要
△高級メタルテープはデッキも相応なものが必要
デッキはどうやって種類を判別している?
テープの原材料が変わると特性が変わるので、それに合わせてデッキ側の設定も変えなくてはなりません。ですが、基本的には何も考える必要はありません。デッキが自動で切り替えてくれます。(古いデッキでは手動で切り替えるものもあります)
カセットテープの頭の部分を見ると、テープの種類に合わせて穴が開いています。これによってデッキがどのテープかを判別し、設定を切り替えます。
ノーマルには穴が開いていません。ハイポジは録音防止用のツメの隣に、メタルはさらに真ん中あたりにも2つ穴が開けられています。
基本的にはデッキが使うものですが、穴の数を見ることでハイポジなのかメタルなのかが分かります。もし押し入れからテープが出てきて、頭の部分に穴がたくさん開いていたらハイポジかメタルです。
まとめ
ノーマル・ハイポジ・メタルの大きな違いは、原材料(磁性体)です。
磁性体によってテープの性能と特性が大きく変わります。それにより、デッキの設定もそれぞれに最適なものを用意する必要があるので、3種類に分かれているといった形です。
今回は3種類を紹介しましたが、実はもう1種類ありました。知っているかたは知っているフェリクロームです。メタルテープが登場するまでは最高グレードに位置していましたが、残念ながら幻になってしまいました。
メタルが最も良いテープに違いはないのですが、1本の値段がとても高いので使うことを躊躇してしまいます。中古で未開封品も出てきますが、封を切るにはなかなか勇気が要ります。
という希少価値が高いテープならでは事情もあって、僕は音楽用のノーマルテープもしくはハイポジに落ち着いています。でもここぞという時にはメタルテープを召喚します。
ではまた(・ω・)ノ