突然ですが、あなたはレンタルCDを借りてきました。
どのような方法で音楽を取り込みますか?
一番鉄板な方法は、パソコンにCDを入れて取り込んでしまう方法だと思います。ただ、今はもうCDから取り込む事すら一昔前のことになってしまっている気がしますね。今の時代は月額料金で聴き放題、いわゆる「サブスク」です。
ところが今みたいにデジタル家電が無かった頃は、カセットテープが大活躍していました。
パソコンでCDから取り込むには、開始ボタンをクリックするだけで、あとは勝手にやってくれます。しかしカセットテープは、録音レベルの調整が必要でした。
大きすぎては音が割れるし、小さすぎてはノイズが目立つ。
もちろんラジカセみたいに調整が不要のタイプもありますが、曲や使うテープによって細かく調整するのがイイ音で録るための腕の見せ所です。
そこで今回は、カセットテープの録音レベル調整(主に初心者向け)です。「今さら?」感が強いテーマですが、趣味でカセットテープを楽しむ人にとっては結構需要度が高いテープになると思います。
目次
まずはデッキのメーターを確認するところから
殆どのカセットデッキには、このようにレベルを示すメーターが付いています。そして多くの場合、テープの種類によって何dBまでレベルを上げて良いかがディスプレイに表示されています。
このデッキの場合、ノーマルテープをセットすると+2dBまでOKという表示になっています。「+2dBを超えないように録音してください」という意味です。
そしてこれも殆どのカセットデッキに当てはまる事ですが、0dB以上は赤く表示されています。いわゆるレッドゾーンです。クルマのタコメーターにもレッドゾーンがありますね。
レッドゾーンを超えるのはなんとなく怖い気もしますが、カセットテープの場合は大丈夫です。多少超えたくらいでは音割れしたり歪んだりしません。(もちろん大きすぎると音が割れます)
このような感じで、まずはディスプレイに表示された目安レベルまでメーターが振れるように調整してみましょう。曲の中で最も音が大きい部分(サビ部分など)で調整するとベストです。
実際にメーターが+2dBくらいまで振れるように調整して録音すると、こんな音になります。録音レベル調整の良い例です。
※できるだけ生に近い音でお届けするために、無圧縮音源(WAV形式)もご用意しています。通信環境が良い方は、ぜひ無圧縮音源でお聴きください。
良い例
【MP3(320kbps 3.5メガバイト)】
【WAV(96kHz-24bit 56.7メガバイト)】
悪い例①
逆に悪い例は、レベルが小さすぎor大きすぎの場合です。
まずレベルが小さすぎる場合、テープのノイズが目立つようになります。曲が録音されている部分にも関わらず、バックからノイズが聞こえてきます。
【MP3(320kbps 3.5メガバイト)】
【WAV(96kHz-24bit 57.0メガバイト)】
悪い例②
今度は逆にレベルが大きすぎる場合です。こちらはもう想像がつきやすいかと思いますが、音が歪みます。
当然ながら音が歪んでしまっては録音が台無しになってしまうのですが、カセットテープの音の歪み方はデジタル音源と少し違います。音の歪み方も併せて確認してみてください。
【MP3(320kbps 3.5メガバイト)】
【WAV(96kHz-24bit 57.1メガバイト)】
ということで、録音レベルの調整のポイントは、
大きすぎず、小さすぎず。
レベルが大きすぎると音が歪む点はデジタル音源と同じですが、カセットテープは常にヒスノイズと呼ばれる「シー」という音が鳴っています。音が入っていない部分を再生するとよく聞こえてきます。
このノイズができるだけ目立たないように、上手いことレベルを大きくしてあげる必要があります。
今回は割愛しますが、もう一つの調整項目があります。それが、バイアスです。詳しく説明しようとすると1記事書けてしまうくらい奥深いのですが、調整すると高音域の強さが変わります。
使うテープに合わせて録音レベルとバイアスを調整するのは、カセットテープならではのテクニックです。デッキによってメーターの表示や調整方法が異なりますので、もしあれば取扱説明書を見ておくと確実です。
カセットテープの限界を攻める
さて先ほどは、ディスプレイに表示されたレベルを目安に調整しましょう、とご紹介しました。基本はこの方法でOKです。でも次第に録音に慣れてきて中級者レベルになると、テープの種類だけでなく銘柄ごとに最適な調整をするようになります。
ご存知の通り、カセットテープにはノーマル・ハイポジ・メタルの3種類があります。種類が違えばテープの性能や調整の仕方も変わるのは、ある種当然の話かもしれません。
しかし実際のところはさらに奥深く、例えば同じノーマルテープでも、メーカー・銘柄・グレードによって性能に差があります。1本100円のテープと400円のテープでは、性能の差は大違いです。
それでは、同じノーマルでもグレードの違いでどれくらい録音レベルに差が出るかを実験してみましょう。実は先ほど使っていたのは、2021年現在も販売されている汎用テープでした。
こちらのテープともう1本、昔の音楽用テープ(ノーマルテープの中では高級グレード)と比較してみます。耳で聴いて音がギリギリ歪まないくらいまでレベルを上げて録音しました。
汎用テープ
【MP3(320kbps 3.5メガバイト)】
【WAV(96kHz-24bit 56.5メガバイト)】
高級ノーマルテープ
【MP3(320kbps 3.5メガバイト)】
【WAV(96kHz-24bit 56.5メガバイト)】
ノーマルテープでも高級グレードになると、録音レベルの限界も高くなります。今回使ったテープもそうですが、ものによってはメタルテープと同じくらいの録音レベルにも耐える性能を持っています。
しかし現在販売されているテープも、汎用とはいえ音楽の録音も十分可能です。録音レベルの目安は+2dBとなっていますが、+4dB程度までなら上げても問題なさそうです。
もちろん、高級グレードのような力強い音質ではありませんが、現在販売されてるテープの中では、唯一音楽の録音にも使えるテープです。他にも販売されているテープはありますが、ノイズが多いことなどの要因で音楽の録音にはあまり向いていません。
また、使うデッキによっても録音レベルの限界が変わってきます。いわゆるデッキとテープの相性という問題です。
基本はデッキで示されている目安レベルに合わせればOKですが、もしかしたらもう少しだけレベルを上げることができるかもしれません。特に3ヘッド方式のデッキの場合は、録音しながら音が歪んでいないかを確認できるので、テープの限界を探りやすいです。
2ヘッド方式のデッキでも「録音⇒巻戻し⇒再生」という操作を繰り返せば、限界まで調整を追い込むことはできます。ただ、一々巻戻す手間があるので、3ヘッド方式の方が便利ですね。
まとめ
今回は初心者向けに、カセットテープの録音レベルの調整方法を紹介しました。基本はデッキに表示された目安レベルとメーターを見ながら調整するやり方でOKです。
そこから突き詰めていくと、使うテープ1本1本銘柄ごとに調整したり、さらには録音する曲によって小さめに録音するのか大きめに録音するかという具合に、終わりのない旅に出掛けることになります(笑)
強者になると、調整していたら知らぬ間に30分経っていたという話もあるあるです。(もっと時間を掛ける人もいるかもしれません…)
どちらにしても、最後は自分の耳で確認しましょう。そして「イケる!」(テレ朝のミラクル9)と思ったら本番の録音をスタートさせてください。
ではまた(・ω・)ノ
使用機材
デッキ
・TEAC V-870 (1987年製) ⇒レンタルで提供中。詳しくはこちら。
テープ
・マクセル UR (2020年発売)
・SONY HF-ES
使用楽曲
・音作品創作工房ナッシュスタジオ MN-M-0427