SONY TC-K500Rの修理―テープが閉じ込められた!なぜ?

こんにちは、こんばんは。西村音響店の西村です。

今回の主人公となるカセットデッキは、SONY TC-K500R。ここ最近のご依頼では、定価7万円以上の中・上級クラスのデッキが多くなりました。ですので、久しぶりのジェネラルモデルになります。

ご依頼のお客様は、今回で3台目ということで、いつも本当にありがとうございます。

 

 

テープが閉じこもったTC-K500R。

さて、今回のTC-K500Rですが、再生が出来ない症状のほか、早送りや巻戻しなど基本動作も全くできない状態です。
テープも閉じこもっています。イジェクトボタンも押せません。

テープが取り出せない原因というのは、2パターンあります。

  • テープが絡まってしまうパターン
  • ヘッドが下がらなくなるパターン

     

    今回は後者のパターンに該当します。

    はじめは前者を疑いましたが、ボタンを押すとテープが回ることが時々がありました。つまり、絡まってはいません。

    次に確認したのが、K500Rのメカニズムです。動作音からして、キャプスタンの回転を使ってヘッドを上昇させる構造であるということを推測します。詳しいメカニズムは後ほど。

     

    ということは、ベルト切れ?

    しかし、時々テープが回ることと、メカニズムの構造から、ベルトは切れていないことが分かります。

    消去法で残った原因が、キャプスタンモーター。最も厄介なところが壊れているようです。

     

     

    テープの救出作業

    では早速、修理に取り掛かりましょう。

    その前にまずは閉じこもったテープを出さなければ。

    カセットデッキの修理の掟である力業厳禁は、閉じこもったテープを出すときも一緒です。しかし、今回ばかりはやむを得ない状況でした。

     

    キャプスタンを回せばヘッドが下がるので、手動で回してあげれば出せるはずです。

    ということで手で回したいところですが、K500Rはそれができません。完全に部品で覆われており、手で触れないどころか外から見えません。

    そこで別の策として、モーターを手で回す方法を採りました。綿棒を隙間から差し込んで回そうと試みます。

     

    と思ったら、モーターが回らない!

    普通ならば手動で軽く回せるはずですが、なぜかビクともしない。ここで少々力業ですが、マイナスドライバーを使うと、やっと回りました。

    格闘すること、数十分。何事もなかったかのようにテープが取り出せました。

    テープは出せましたが、モーターの状態が懸念されます。相当固着しているように伺えました。

    電気回路に異常があってモーターに通電しない故障であれば、すんなり手で回せます。物理的に回らなくなってしまうのは珍しいケースです。

    仮に完全にモータ-が駄目になっていた場合は、他のデッキから移植します。それも想定しながら、修理を進めていきます。

     

     

    油切れでモーターが固着していた

    さて、ようやくメカニズムの取り外しです。取り外しの作業は特に難しくありません。上側から2カ所、下側から2カ所という、最も鉄板なマウント方法です。

    かえってグレードの低いカセットデッキの方が構造が簡単であることが多く、メンテナンスが比較的容易です。

     

    まずはカセットホルダーから。さくっと外していきます。プラスチックの強度がよくないので、ここからは力業厳禁。

     

    つづいて、メカニズムの後ろ側です。
    分解を進めていくと、やはりベルトは切れていませんでした。

    部品の形を見ると、実は他のメーカーでも使われている構造であるとわかります。過去にTEAC R-616Xというデッキを手掛けたことがあり、それとそっくりです。肝心のベルトに関しても、同じものが使われていると考えられます。

    他にも、3ヘッドのTEAC V-1010、2ヘッドのヤマハKX-580も、同様のメカニズムです。

    これらの機種では、今までベルト切れを見たことがありません。TC-K500Rもこのパターンに当てはまるでしょう。

     

    最後にメカニズムの前面を分解していきます。
    オートリバースデッキは、いつも以上にヘッドの取り外しが慎重になります。誤ってケーブルを切ったら一発アウトです。

    K500Rは普通のケーブルですが、もっと厄介なのはフレキシブルを使ったデッキです。切断どころか折り曲げ厳禁ですからハラハラします。AKAI GX-R88がフレキシブルを使っており、断線してしまった時は背中がびしょびしょになりました。

     

    ぜんぶ分解すると、このようになりました。

    オートリバースである分、多少部品は多めです。一方向であれば、ウェス3枚分に全部品が乗ります。

    ただ、高級デッキに比べたら少ないものです。その分壊れにくく、壊れても直しやすい点が、高級デッキにはない特徴です。

     

    さて、今回の最大の原因である、キャプスタンモーターですが、分解して確認してみます。

    手で回してみようとしますが、むちゃくちゃ固い。普通は軽く摘まむ程度で回るはずですが、ちょっとの力では回りません。

    どうも油切れが原因で回らなくなってしまったようです。

     

    そこで、シリコーンオイルを注入すると、固着がほどけました。しばらく通電してもしっかり回り続けてくれました。

    ひとまず、モーターが使用不能になるほどの故障はなかったので、このまま継続使用します。再び回らなくなるようであれば、モーターの交換も検討しなくてはなりません。

     

     

    なぜ動かなくなったのか?

    最大の謎である、キャプスタンが回らないと何故ヘッドが上下しないのか?という疑問を、ここで解決しましょう。

     

    TC-K500Rのメカニズムは、モーター×2、ソレノイド×1、カム×1で構成されるタイプです。比較的、安価なグレードに多く見られます。

    このタイプの大きな特徴は、キャプスタンにギヤが付いていることです。

    このギヤから、ヘッドを上下させるための動力を貰っています。つまり、このギヤが回らなくなればヘッドが動かなくなるというわけです。

    一生懸命モーターを手で回したのは、ここを回してヘッドを下げるためです。

     

    ギヤの付いたキャプスタンを直接手で回せれば、比較的すんなり救出できたことでしょう。

    しかし、TC-K500Rは指を突っ込んで回せる隙間もなく、残念ながらこの手は使えず…

     

    モーターが回らなくなって動作ができなくなるケースは稀ですが、ベルト切れの場合も同様です。

    繰り返しになってしまいますが、キャプスタンが回らなければヘッドが上がりません。

    そもそもヘッドが上がらない以前に、キャプスタンが回らなければテープは止まったままです。

     

     

    正常にもどったTC-K500R

    組立てが終わり、再び正常な状態となったTC-K500R。

    当時の定価54,800円のデッキですが、ナカミチ1000ZXLで録音したスーパーメタルマスターを再生してみるとどうなるのか。低音域から超高音域まで大レベルのEDM(エレクトリック・ダンス・ミュージック)です。

    音源『D’elf Overcome Difficulties』

     

    こちらは、MA-XGでオーケストラを再生したバージョンです。

    音源『魔王魂 シンフォニア第1番』

     

    今回はテープの救出作業がメインとなった修理でした。

    テープが取り出せない状況になると焦ってしまうかもしれませんが、まず落ち着いてください。

    無理やりこじ開けて出すのは、デッキの部品を破損させる恐れがあります。大事なデッキまで修理不能になってしまいます。

    どれだけ時間が掛かるとしても、力業を使わずに取り出すことがデッキとテープ両方を守るための最善策です。

    また、閉じ込めを予防するためにも、デッキのお手入れを行っておきましょう。