カセットデッキのピンチローラーが表面つるつる。交換したほうが良い?

 

皆さん、こんにちは。西村音響店でございます。

 

今回はピンチローラーって交換したほうがよいのか?というお話です。

もちろん、交換した方がよいです。

ご存知の通り、ピンチローラーはゴムで出来ています。ですから、劣化してしまうのは当然です。

では、劣化品と新品ではどのような差があるのか、検証してみましょう。

 

実験に使うデッキは、1999年製のSONY TC-KA3ESです。

 

 

つるつるピンチローラー

さっそく、扉を開けてヘッド周りを見てみましょう。

一見きれいな状態に見えますね。分解修理(オーバーホール)したての状態ですから。しかし、左側のピンチローラーをよーく見てみてください。

何やら黒い帯みたいなものが付いていることが確認できると思います。この黒い帯、いくらクリーニング液やら無水エタノールやらで拭いても取れません。

このような状態のピンチローラーを「つるつるピンチローラー」と名付けました。帯になっている部分だけ、やたらテカテカ光っています。

 

そのピンチローラーを外して、マクロ撮影してみました。細かいですが亀裂も入ってしまっており、かなり劣化している様子です。

古くなった自動車のタイヤのように、ゴムは硬くなってしまっています。このような状態ではありますが、別に交換しなくとも、テープは普通に再生できてしまいます。(お勧めはできませんが…)

 

 

さて、今回は下記の3つの方法で、ピンチローラー交換の効果を検証します。

1.音質の聴き比べ

2.音揺れの強さを測定器で計測

3.テープの送り状態をチェック

 

 

交換して音質は変わる?

早速ですが、つるつるピンチローラーで再生した音と、新品のローラーで再生した音を聴き比べてみてください。

音揺れがわかりやすいように、ピアノの曲を録音しています。

【つるつるピンチローラー】

【新品ローラー】

 

どうでしょう、音揺れがわかりましたでしょうか?

この程度であれば普通に聞けてしまうレベルだと思います。僕でも差はまったく分かりません。もっと耳の良い方でしたら、判ってしまうかもしれませんが…

ピンチローラーが劣化しているとはいえ、まったくと言ってよいほど音に表れません。問題なく再生できてしまうように伺えます。

 

 

音揺れの強さを数値で測る

つるつる新品で、音の違いがはっきり判りませんでしたが、数値で測ってみるとどうなるか?やってみましょう。

どうやって測るの? - ワウフラッターメーターという、音揺れの強さを測る専用の測定器があります。音揺れが強くなると、針が大きく振れます。

音揺れの強さは、ワウフラッターという値で示します。説明書やカタログの「仕様」のページに記載されています。お持ちでしたら、ぜひ確認してみてください。値が小さいほど、音揺れが少ないことを表します。

ちなみに今回のTC-KA3ESは、0.022%(JIS規格による実効値)です。

測定方法はいくつかありますが、今回は録音再生総合法(別称:異時録再法)で行います。3kHzの正弦波信号を録音した後、巻戻して再生した時の値を取る方法です。この方法で、つるつる新品で、データを比べてみましょう。

 

まず、つるつるピンチローラーの状態で測ってみます。1分くらい、3kHz正弦波を録音します。

録音同時再生では、0.04~0.05%あたりをうろうろしている様子でした。

 

巻き戻して、録音した音を再生してみます。その時の結果がこちら。

再生直後はどうしてもテープの送り出しが不安定になるので、0.04%あたりを指していました。30秒ほど経過すると徐々に安定して、針も徐々に落ちてきます。

最終的には、最も少なくなった瞬間で0.027%平均0.033%といった結果になりました。


 

続いては、新品のピンチローラーで測定してみます。先ほどと同様に、1分くらい3kHzの正弦波信号を録音します。

録音同時再生のワウフラッターメーターがこちら。

録音同時再生では、0.03~0.04%をうろうろしていました。つるつるよりも、音揺れが少なくなっています。

では巻き戻しして、再生してみましょう。はたして結果は…

再生直後は0.03%。いい値です。もう少しすると安定するので待ってみると、最小で0.022%まで下がりました。その後も0.03%以下で安定しており、ローラー交換の効果がしっかり表れています。平均して0.027%といったところでしょうか。


 

実は、もう1つの新品ローラーがあります。先ほどは直径が10㎜で、純正の11mmより一回り小さいものでした。最後は、同じサイズの直径11mmの新品ローラーで測定してみましょう。

答えから申し上げてしまうと、もっと少なくなります。

同時再生で0.03%以下です。これはかなり期待できそうです。

再生直後でも、いきなり0.020%の辺まで針が落ちました。もう暫く待っていると、いよいよ0.01%台へ。

最小瞬間ワウフラッターは0.016%です。これは凄い改善です。

でも実際、本当に新品の状態って、どれくらいだったのしょうね。ともかく、中古の状態で0.02%台が出ればかなり優秀です。0.03~0.04%あたりになれば、良い方だと個人的には思っています。ピアノが入った曲の場合は、これくらいの性能が欲しいところです。

 

 

テープの送り状態をチェック

最後は、ミラーカセットを使ったチェックです。

ミラーカセットは一見普通のカセットに見えますが、テープが通っている部分に鏡がついています。ちょうど再生ヘッドを真上から見たような画が映って見えるという、調整に使う特殊なテープです。

これを使って、つるつるローラー新品ローラーで、テープが送られている様子を見比べてみましょう。

(※画像では非常にわかりにくいですので、ぜひ動画でご覧ください)

 

注目していただきたい部分は、テープ表面に反射している光です。

見比べてみると、つるつるの方は、光が少し曲がっている様子が分かります。

動画で見ると、テープが波打っていることがハッキリ判るくらい、光がふらふらと揺れている様子が確認できます。

この状態はどういうことを表しているのか。目には見えませんが、テープが蛇行して送られているのです。

つるつるで最も危険なのは、テープが蛇行してしまうこと。

 

 

つるつるローラーで経験したトラウマ

高級メタルテープのTDK MA-XGを再生した時のことでした。

最初は、素晴らしい音で聞けていました。メタルテープで聴くオーケストラは大迫力です。

しかし数秒後。急に音が籠りだします。

 

「ヤベーッ!!!」

 

気づいてから0.1秒で反応して停止ボタンを押しました。

テープの表面を見てみると、見事に傷が入っていました。斜めに入った傷は、テープが蛇行した証です。

 

そのとき、思わずこのように呟いてしまいました。

 

「120分テープの再生テストは意味ないわ。」

 

傷をつけたMA-XGは46分です。にも関わらず、この有り様になってしまいました。

そもそも、長時間再生させてチェックする目的は何でしょうか。

その1つに、モーターの寿命チェックが挙げられます。何往復か再生してみて、テープが途中で止まったら異常があることが分かります。そのような場合、モーターを交換することで修理可能です。もちろん、モーターの寿命以外で止まってしまうこともあります。

しかし、この作業は必ずしも120分テープでなくても問題ありません。90分でも60分でも十分です。異常があれば、10回に1回は必ず止まります。10分では流石に短すぎますけどね。

 

中古デッキの商品説明に時々書かれている「120分テープで再生確認しました」は、あてにできません。

120分テープが再生できればどのテープでも巻き込まない、とは限らないからです。

加えて、僕たちの大事なテープは、短いテープが多いでしょうから。

 

 

今回のまとめ

ピンチローラーを新品にすると、音揺れが少なくなりました。しかし、それよりも重要な効果は、テープの送り状態が安定することです。

音質を改善することよりも、録りためた財産を駄目にしないようにすることの方が大事です。

 

ピンチローラーの表面が異様にテカテカ光っていたり、つるつるしていた場合は、素直に交換した方が安全です。いくら無水エタノールで拭いても効果はありません。

お預かりしたデッキで、もしつるつるピンチローラーを発見した場合は、すぐ交換します。

中古デッキを購入されたときは、早速テープを再生する前に、ピンチローラーを確認してみてください。

 

 

動画バージョン