ビクターTD-V66◆ボタン交換だけで直るお手軽?修理

皆さん、こんにちは。西村音響店でございます。

 

カセットデッキの故障は、ベルト切れやグリースの固着が多いですが、もう1つあります。それが、ボタンの誤作動

例えば、停止ボタンを押したのになぜか録音になってしまったりですとか…このような症状はボタンを新品に交換することで直ります。

ただ、あらゆるデッキで症状が出ることはありません。発生するデッキは必ず発生しますし、絶対に発生しないというデッキもあります。

 

今回のデッキは、停止ボタンを押しても、なぜかイントロスキャンを始めてしまう状態になっています。

 

 

ボタンが間違って反応する理由

TD-V66の操作ボタンは計12個あります。向かって右側に10個、真ん中あたりに2個という配置で、今回誤作動が起きたのは右側の10個です。

ボタンの数が重要ですので、よく覚えておいてください。

 

では、なぜ誤作動が起きるのか?

ボタンと基板をつないでる配線を見てみましょう。

ケーブルの本数をよく見てください。赤白青の3本しかありません。ボタンが10個もあるのに、どうして配線3本で済むのか?

これは、複数の電圧を使い分けることで、どのボタンが押されたか判断できる設計になっているためです。

 

TD-V66でボタンを押したときの電圧は、以下の表のようになっています。

ボタンごとに信号の電圧が決まっています。押していない状態では4.95Vが掛かっており、ボタンを押すと決まった電圧まで下がって、マイコンがどのボタンかを判断します。

 

しかし、ボタンは劣化すると電流が流れにくくなります今回は、停止ボタンの電圧が0.65~0.85で押す度に電圧が変わる、不安定な状態になっていました。

停止かイントロスキャンかを区別する境目の電圧(閾値)は0.7Vくらいだと思われますが、閾値を下回らないとマイコンが勘違いしてしまいます。

 

対処方法はただ一つ、ボタンを新品に交換するだけです。はんだ付けが出来る方なら誰でもできます。


 

ここで少し余談です。

どのカセットデッキでもボタンの誤動作は発生するのか?と思いきや、実は絶対に発生しないデッキがあります。

ボタン1個につき1本の配線を使っているデッキです。

このような設計をしたデッキは、電圧の使い分けがON/OFFの2種類のみで済むため、原理的に発生し得ないのです。強いて言うのであれば、ボタンが劣化すると反応が悪くなるくらいでしょうか。

1980年代前半までのデッキはこのような設計が多いです。

ボタン1個につき1本の配線が与えられている例

TASCAM 112MKⅡの操作ボタンですが、配線が全部で11本あります。うち、2本がアース線、3本がLEDの配線です。

このような設計になっていたら、ボタンが誤作動することは100%ありません。

 

 

交換するのは簡単。分解するのが大変。

ボタンを交換するには、フロントパネルを外す必要があります。

ただ、TD-V66は普通の外し方と少し違うところがりますので、ポイントをご紹介しながら進めていくことにしましょう。

 

まず、ボリュームのツマミから取り外します。

OUTPUTとバランスのツマミは、ただ手前に引き抜くだけで簡単です。


 

問題はREC LEVELのツマミです。これを外すのにコツが要ります。

ツマミの下の部分にある隙間にマイナスドライバーを差し込み、テコの原理でグイッっと外します。爪で留まっているだけですが、なかなか固いです。

これを外さないと、フロントパネルが外れません。冷や冷やしますが、頑張って外します。


 

ツマミを無事に外せたら、底板を外します。- なぜ底板を?

本当は外さなくても、フロントパネルを外すことはできますが、組立ての時に困ることになります。


 

次は、フロントパネルを固定しているネジを外します。ひっくり返した状態のまま、下側のネジ2つを外します。

 

外したら、本体をゆっくりひっくり返して、今度は上側のネジです。

先にネジを外してしまっても構いませんが、僕はボタンの配線を先に抜きました。極力部品を動かないような状態で配線の取り回しをするためです。

(この順番でやらなきゃダメという縛りは全然ありません。)

コネクタのほかに、アース線もありますので忘れずに外します。

 

配線が処理できたら上側のネジを外し、フロントパネルをゆっくり手前に引けばOKです。

外すと、向かって右側にあるボタン基板のほか、真ん中あたりに小さなボタン基板が2つあります。カウンターリセットと、ピークレベル呼び出しのボタンです。ツメで留まっているだけですので、簡単に外せます。

ちなみにこの2つのボタンは、回路が別になっているため誤作動とは関係ありません。

 

残り、ボタンの基板を外せば完了です。フロントパネルの裏側に、ツメで固定されています。

ボタン基板のほかに、もう1つ、リモコン用の端子が付いた小さな基板があります。これも同様にツメで固定されているだけです。ツメを少し押し広げて外します。


 

ここからは、はんだごての出番です。新しいボタン(タクトスイッチ)に取り替えます。タクトスイッチは色々種類がありますが、TD-V66では、6mm四方、高さ4.3mmのものを使います。

はんだを吸い取って古いボタンを外し、新しいボタンをはんだ付けする。サクサク進めていきます。電動吸い取り器を使うと早いですが、もちろん吸い取り線でもOKです。

 

 

実はすべてのボタンが劣化している

組立ては、取り外しの逆順で問題ありませんが、ツマミの取り付けでコツが要ります。またしてもREC LEVELのツマミです。

まず、フロントパネルを取り付けるところまで済ませます。ネジもしっかり留めて固定しておきます。

そうしましたら、REC LEVELのツマミをこのようにセットして、カチッとはめ込みます。なかなか画像だけでは説明しにくい部分です。

ツマミの裏側には溝があって、ここにフロントパネルから飛び出ているツメを差し込みます。ツメを溝に入れたら、画像のようにラジオペンチ等をセットします。

この状態で、ツマミを押さえつけると、カチッと固定されます。なかなか固いので割れないか少し不安になるところです。

最初に底板を外しておいたのは、このためです。

 

底板を取り付ければ完成です。取り付ける際のネジに、1本だけ目が粗く長いものがあります。これは、フロントパネルに締めこむネジです。

他のデッキでも言えますが、樹脂部分に締めこむネジは、目が粗いことが殆どです。もしどこのネジかわからなくなっても、目の粗さでどこに留まっていたかが推測できることがあります。


 

動作確認は、テープを入れて停止ボタンを連打します。

ただ連打するだけではなく、押す力を変えたり、押す部分を変えたりと、いろいろ試してみても停止状態のままであればOKです。

新品のボタンに交換してから、押した時の「カチッ」という感触がよりはっきりした状態になっています。

 

ボタンの電圧測定をしてみましょう。

すべてのボタンにおいて、交換前よりも電圧が下がっています。停止ボタンは、繰り返し押しても毎回0.64Vで安定しており、これで安心して使えるようになりました。

今回は停止ボタンだけ誤動作していましたが、他のボタンも劣化していたことが、このデータから推測できます。

 

ボタンの劣化具合は、電圧をチェックすると細かく調べることができますが、現実的ではありません。新品の状態で測った電圧を知っていないと、はたして劣化しているのか否かが判断できません。

それよりも、カセットデッキはみんな年数経ってますから100%劣化しています。素直に全部交換してしまった方が楽です。

 

 

今回のまとめ

カセットデッキのボタン修理は、比較的簡単な作業です。新品のボタンも販売されていますので、困ることはありません。

ボタン交換自体は、はんだ付けができる方であれば簡単ですが、交換するまでが大変です。

もし、「停止を押しているのに巻戻しになる」といった様に、ボタンを押しても違う動作をしてしまう場合は、ボタンが悪くなっているだけです。マイコンが頭おかしくなったわけではありませんので、ご安心ください。

 

 

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