【テクニクス RS-2760U】’70年代のフルロジックコントロール

 

こんにちは、西村音響店でございます。

カセットデッキの修理依頼を頂戴する機種は1980~90年代のものが多くを占めていますが、時々1970年代のデッキもやってきます。

今回のデッキはこちら。

1975年製のテクニクスRS-2760Uです。

1970年代のデッキというと、カセットを水平にセットする、このような容姿が多いです。

でもこのRS-2760Uは、1980年代からは当たり前となったロジックコントロールを搭載しています。付け加えて、キャプスタンの回転はダイレクトドライブ(D.D.)。

この類のデッキは初めてで、非常に新鮮味があります。当時としては豪華な装備が付いたデッキを早速見ていきましょう。

 

 

フタを開けて中を覗いてみよう

似たようなデッキとして、同じTechnicsのRS-2630Uを修理した経験があります。今回のRS-2760Uも分解の仕方は似ています。

まずはデッキをひっくり返して、底部を開けます。

 

底部を開けると、真ん中に黒色の大きな石みたいなものが姿を現しました。

これがD.D.モーターです。非常に物々しい雰囲気です。年代を追うにしたがって小型化されていくので、どデカいモーターが搭載されていると迫力があります。

右側の銀紙で覆われている部分がアンプです。外部からの電磁ノイズ対策もしっかり施されているように見受けられます。

 

D.D.モーターの傍には、小さなモーターが1つ付いています。これは早巻き用で、巻戻しと早送りの時に使います。再生時はキャプスタンから動力をもらうので回りません。

その左側にはソレノイドがついています。再生ボタンを押すと、ソレノイドが動作して再生ヘッドが上がり、テープに接触するという仕組みです。このあたりは、ロジックコントロールのデッキに多い構造となっています。

 

 

テープが数秒で止まってしまう原因

さて、今回の本題です。

このRS-2670Uは、再生、早送り、巻戻し、どの操作をしても数秒後に勝手に止まってしまうという故障を抱えています。

 

なぜだと思いますか?

 

その原因は回転センサーです。

カセットテープを使ったことがある方ならご存知だと思いますが、例えば巻戻しする時です。テープが最後まで巻かれると勝手に止まりますよね。勝手に止まるのは回転センサーのお陰です。

(もちろん、センサーを使っていないデッキもありますが…)

ではRS-2670Uの回転センサーはどこにあるかというと…

ここです。

カウンターの下にあります。この辺からベルトが出ているところがポイントです。テープが回ると、ベルトを介して回転センサーを回します。テープが巻き終わって回らなくなると、回転センサーが反応しなくなるので、「テープが最後まで来たな。」と機械が判断できるわけです。

 

では!

もしベルトが伸びて回転センサーが回らなかったらどうでしょう。

 

「テープが最後まで来たな。」と勘違いしてしまいます。

 

前置きが長くなりました。今回の最大の原因は、回転センサーを回すベルトが伸びたことによるものです。

対処方法は簡単です。

ベルトを交換するだけです。

ただ、ベルトを交換できる状態まで分解するのが大変ですけどね。特に水平タイプのカセットデッキは、分解の難易度も高めです。

 


実はこのような症状が発生するデッキには2つの共通点があります。

まず1つ目が機械式のカウンターを使っていること。

テープの回転をベルトで伝達してカウンターも一緒に回すという構造がポピュラーです。いや、ベルトでカウンターを回す方法しか無いと思います。

1980年代に入るとカウンターが電子式になって、回転センサーがテープの巻取り軸の裏に設置されるようになります。電子化が進んで部品の設置場所の自由度が増したことから、中にはベルトを1本も使用しないデッキも存在します。

 

もう一つが、テープの操作がロジックコントロールであること。

昔ながらの「ガチャッ」と指で強くレバーを押すようなものではないタイプです。

ロジックコントロールのデッキは、再生ヘッドを上げたり、モーターを回したりするなどの動作をマイコン(コンピューター)が電気的に行います。なので、テープが回転しているか否かも電気信号で伝えてあげたほうが都合が良いです。

なので、カウンターと回転センサーを併設すると便利になるというわけです。しかしデメリットとして、ベルトが伸びたりしてセンサーが回らなくなると、今回のような故障が発生してしまうということがあります。

 

では昔ながらの、テープが巻き終わるとレバーが勝手に「パコンッ!」と戻るタイプは? というと、こちらは機械的にレバーを戻すような仕組みがあります。

このタイプの場合、回転センサーは必ずしも必要ではありません。ただ、少数ですが回転センサーを使っているデッキもあります。

 

 

全分解は無理!でも可能な限り分解します。

カセットデッキの修理では、まずメカニズムをデッキから外すところから始まります。殆どのデッキはこのように、メカニズムをごっそり外すことができます。

しかし、「殆ど」という言葉があるということは、例外がいます。

 

そうです。

 

RS-2760Uは例外の仲間です。

 

このデッキは、部品がフレーム(枠組み)に直接取り付けられているタイプで、メカニズムだけ外すということができません。

なので、一つ一つ、ちまちま部品を外している方法しかありません。

このようなデッキは完全に分解することが難しいですが、可能な限り取り外します。

 

古くなったグリース(油)を落とす工程も地道に1カ所ずつ拭き取っていきます。本来ならば、パーツクリーナーをぶっ掛けて一気に落としてしまうところですが、流石にこのような類のデッキでは無理です。

部品を全て外て洗浄することはどのデッキも共通の目標ですが、分解の戦術はデッキによって臨機応変に変える必要があります。

 

正直なところ、ただ修理するだけであればベルトを交換するだけでも直せます。ただ、せっかく分解するには綺麗に清掃しておいたほうが気持ちがいいです。

 

 

まとめ

1980年代になると当たり前となったD.D.モーターやロジックコントロール。これらが1975年製のデッキにも搭載されていることには関心しました。

最も引き付けられたポイントは、1970年代前半ではスタンダードな水平にカセットをセットする容姿なのに、2つの豪華装備が搭載されていることです。レトロな容姿のデッキは、「ガチャッ」と重たい鍵盤状のレバーを操作するタイプが多数派です。

やっぱり少数派に属するデッキは個性が際立っていいですね。

豪華装備はあるけども音質は?と気になるところですが、音質もイイ! 2ヘッドなので再生できる音域には限界がありますが、それでも安っぽく感じさせない音のように感じました。しっかり録音されているテープであれば、高音域もしっかり再生されます。

今回のRS-2760Uはなんとワンオーナー品ということで、説明書はもちろん回路図も標準で付いているという、なんとも時代を感じさせる内容でした。

今年で製造から45年ですが、50年目を迎える2025年が待ち遠しいです。ぜひ今後も元気に動いてくれたら嬉しい限りです。

【RS-2760Uの音質】
1000ZXLで録音したスーパーメタルマスターを再生


使用楽曲:魔王魂,D’elf