西村音響店

カセットテープ新発売!マクセル新型UR 前モデルからの進化点を探る

カセットテープ新発売!マクセル新型UR 前モデルからの進化点を探る

 

こんにちは、西村音響店でございます。

いよいよ2020年、マクセルのURテープが新型にモデルチェンジされました。カセットテープファンにとっては非常に嬉しい報せだと思います。僕自身もモデルチェンジの報せを耳にして、まだまだカセットテープは終わっていないという気持ちが湧きました。

さて、モデルチェンジというからには、やはり旧型と比べてどう進化したのかが気になりますよね。

今回は新型URがどのように進化したのか、詳しく見ていきましょう。

 

 

パッケージは音楽用を思わせるデザインに。

まずは外観からチェックしていきましょう。パッケージのデザインが一新されました。

旧型は主にカラオケ用だったりテープ起こし用といった、いわゆる汎用品をイメージさせるデザインでした。新型ではラジカセが描かれたデザインで、音楽用テープのイメージが大きくなっているように感じます。

昔のテープを思い出してみると、音質や性能が良いテープってデザインが結構派手だったと思います。何となくパッケージのデザインでテープを選んでいた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

音質も大事ですが、手に取りたくなるようなデザインも大事ですね。若者をターゲットに絞ったAXIAのテープが良い例だと思います。

 

今度は裏面を見てみましょう。

テープ分数のラインナップが変更されました。今まであった30分・46分がラインナップから外され、10分・20分・60分・90分の4種類となりました。

原産国は旧型と同じインドネシアです。型番にあるNは世代を表すアルファベットですが、1番目のAから数えれば今回は14代目となります。もう立派なロングセラーテープです。

デジタルデータで音楽を聞くのが当たり前になっている中、ただ一人仁王立ちして残っている様は、あまり例えが良くないかもしれませんが長坂橋の張飛みたいです。

 

それでは、開封していよいよカセットテープ本体を見てみましょう。

インデックスカードは、印刷がグレースケール調になってシンプルだけど落ち着いた印象です。文字の色が変わっただけでも、だいぶ雰囲気が違ってくると思います。

カセットの本体(ハーフ)に貼るシールは、予備の1枚が追加されて3枚になっています。予備のシールが必要かどうかは意見が分かれるところかもしれませんが、あると書き間違いしたときに安心ですね。「最初から鉛筆で書け!」と言われたらそれまでですが…

 

次はテープの部分を比べてみましょう。

リーダーテープにある矢印の色が変わっています。これは磁気テープも変わっていることに期待です。色が変わっているのを見てワクワクしてきました。

 

おぉ、しっかり変わってるじゃないですか!

旧型はこげ茶に近い色でしたが、新型は赤茶色っぽくなりました。これは音質も変わっていること間違いなしです。

 

その他のチェックポイントとして本体(ハーフ)の質感がありますが、これは新旧とも概ね同じような感じです。再生させるだけでもヒヤヒヤする中国製テープのような質感は皆無なので、いままでのURと同じ感覚で扱えると思います。

 

 

音質比較!旧型UR vs 新型UR

さて、モデルチェンジされてやはり気になるのは音質です。まずは手始めに、旧型と新型それぞれで曲を録音してみましょう。

テープの性能や磁気特性が変わると音質も変化します。というわけで、まずは手始めにダブルカセットデッキで旧型と新型それぞれに同じ曲を録音してみました。

【旧型】

【新型】

バイアス調整はできないデッキですので、テープの特性の違いがしっかり出ていると思います。

このデッキでは旧型の方が良い音で録音できていると思います。新型はやや高音域が出にくい様子ですが、大きな問題ではありません。後ほどご紹介しますが、バイアス電流を少なく(浅く)調整すれば高音域がしっかり出るようになります。新型は旧型よりも録音に最適なバイアス電流が少なくなっているだけです。

音質が変わっているという事は、磁気テープがしっかり分かっている証拠です。

 

 

新型になってどう変わった?詳しく検証みよう。

旧型と新型、音質の違いを感じていただけましたでしょうか。

しかし!

ただ音質が変わったことだけ分かってもしっくりきません。そこで、もう2台デッキを用意して、テープの特性を詳しくチェックしてみたいと思います。3つの実験を用意しました。

 

実験1:キャリブレーション

テープの特性が変われば、レベル調整やバイアス調整などにも影響が出てきます。特にキャリブレーション機能が付いているデッキでは、しっかり調整が合うかがとても大事なポイントです。

そこで1つ目の実験は、キャリブレーション機能での調整方法の違いを見ていきましょう。メーターの▼に合わせるためにツマミをどのように回せばよいかに注目します。

デッキの機種や調整状態によってツマミの回し具合が変わりますので、あくまで目安としていただければと思います。最も注目するのは、両者でツマミの回し具合がどれだけ違うかです。

 

まずは旧型から。

▼に合わせるためには、レベルを少し大きくする必要がありました。バイアスはほぼ無調整で良さそうです。

 

続いて新型

レベルは真ん中で▼に合わせることができました。一方、バイアスは旧型よりもかなり浅くする必要があるようです。

先ほどのダブルデッキで音質を比べたように、新型の方が高音域がやや弱かったですが、バイアスを浅くすることで音質を整えることができます。

むしろ、旧型よりもレベルを低く設定し且つバイアスを少なく(浅く)設定するということは、少ないパワーでも音が記録されると捉えることができます。

 

ここで、このデッキ(TEAC V-8000)で録音した音を聞いてみましょう。今度はキャリブレーション機能を使って調整を合わせているので、両者とも同じような音質で聞こえると思います。

【旧型】

【新型】

 

ところで、新旧を比べている途中で1つ心当たりのある事が思いつきました。

「たしか、ULも結構バイアスを浅くする必要があったよね…」

ULは一時期家電量販店やディスカウントストアにも並んでいました。ところが100円ショップに行くとまだまだ置いてあります。(店によって品揃えが違いますが、置いてある店は置いてあります)

一応ULとも比較してみました。はたして結果は…

バイアスを最少にしても合うか合わないか際どいところでした。

途中でULも加わって3本のテープで比較しましたが、すべて別物であることがわかりました。ツマミの回し方に違いがあることからも、磁気テープの特性が変化していることが見て取れます。

 

実験2:大レベルで録音

2つ目の実験は、どれくらい大きな音に耐えられるかです。実験方法はシンプルです。録音レベルを少しずつ上げていき、何dBくらいで音がひずみ始めるかをチェックします。

正確に測定するとしたら何dBの時に歪み率が何%だ、MOL(Maximum Output Level)が何dBなどという話になってきますが、難しく考えず適当に曲を録音してみましょう。

 

この実験をするにあたっては、テープの性能を限りなく引き出せる状態で行いたいところです。そこで、レベルやバイアスに加えて、録音イコライザーまで調整できるデッキを使います。

どちらのテープも事前にキャリブレーション機能で調整をしておきます。

 

それでは実験スタート。

REC LEVELのツマミは「2」からスタートし、3秒ごとに「0.5」ずつレベルを上げていきます。

パソコンに取り込む際の信号レベルは、どちらも同じ設定にしています。徐々に音量が大きくなっていきますので、ボリュームに気を付けてお聴きください。音量が大きくなっても音のひずみが感じられなければ、大レベルの録音に耐えられるということになります。


時間経過と録音レベル
7秒:「3」→ 14秒:「4」→ ・・・ →42秒:「8」→ 以降は丁度良いレベルで録音

【旧型】

【新型】

 

いかがでしょうか。どちらのテープがより大レベルで録音出来ていたと思いますか?

この実験は、新型に軍配です。

旧型の方はメーターの+8dBで頭打ちになってしまいました。録音レベルを7.5にしたあたりで+8dBに到達しましたが、それ以上録音レベルを大きくしてもメーターの振れ幅が大きくなりませんでした。録音レベルを3.2に合わせると良い感じになります。メーターでいえば+2dBが上限に来るように調整するといったところでしょうか。

一方、新型は驚くことにメーターが振り切れました。録音レベルを7にしたあたりで+10dBに到達し、さらに8にするとメーターの目盛が全点灯する場面も見られました。これにはとても驚かされました。丁度良い録音レベルは3.8で、メーターの+4dBくらいまで振れても大丈夫な様子です。

新型のURは大レベルでの録音性能が非常に上がっているということが見て取れます。たかが2dBといえど、カセットテープの録音では1dBの差が音質に大きく響きますので、これは非常に嬉しい改良ポイントですね。

 

実験3:ノイズリダクションONで録音

ノイズリダクションをONにした時にどんな音質になるかも気になるところですが、それよりも気になるのはヒスノイズです。磁気テープである以上ヒスノイズは避けられませんが、できれば少ない方が理想です。

結論からいうと、ノイズの多さに関しては新型も旧型も大差はありませんでした。

 

しかし!

 

ノイズリダクションをONすると差が開きました。

 

ヒスノイズが目立ちやすいピアノ曲を、ドルビーBとドルビーCで録音しました。ノイズリダクションでノイズが非常に小さくなっていますので判りにくいかもしれませんが、ピアノ曲を録音する時のイメージトレーニングになればと思います。

【旧型・ドルビーB】

【新型・ドルビーB】

【旧型・ドルビーC】

【新型・ドルビーC】

 

ピアノ以外にも特に音の強弱が大きいクラシック系の曲は、どれだけ大きい音に耐えられるかだけでなく、ノイズがどれだけ少ないかも重要です。

僕が聞いた印象では、僅かですが新型になってノイズが低減されているように感じました。同じヒスノイズでも、テープによって高音が強いノイズだったり中音域のノイズが強かったりと、磁気体によってノイズの音にも差があります。今回のモデルチェンジで磁気テープも変わっていることから、やはりノイズにも差が出ていると思います。

元々ヒスノイズが多いノーマルテープですから、ノイズリダクションを上手く使って録音してあげることが必要になります。もちろんノイズリダクションをONにするか否かは人によって分かれますが、ONにしてそれなりに良い音で録音できるのであれば希望が持てます。

旧型はノイズリダクションONでも何となくヒスノイズが目立っていたので、これも嬉しい改良ポイントですね。

 

 

まとめ

今回ご紹介した新型のUR。オーバーな表現かもしれませんが、カセットテープの生き残りを掛けて進化を遂げたと言ってよいと思います。

進化したポイントを一言で表すと、

ダイナミックレンジ!

特に録音レベルの高さには驚きました。いままでよりも更にパワフルな音で録音ができることと思います。カセットテープの存続が厳しくなっているにも関わらず、パワーアップしてきてくれて心から嬉しい気持ちになりました。

1本あたりの販売価格は100円台から200円台に上がっていますが、進化を遂げてくれた対価として考えれば納得です。

皆さんも電気屋さんに足を運んで、新しいURをお持ちのカセットデッキで試してみてください。気に入ったらぜひ存続のためにもリピート購入を。

 


ちょっとCM
今回使用した3台のデッキ(A&D GX-W930,TEAC V-8000S,SONY TC-KA7ES)は、2020年6月1日よりレンタルが開始されます。ただいま予約受付中です。詳しくはレンタルデッキの商品ラインナップページをご覧ください。

 

使用楽曲:魔王魂

 

 

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