突如としてダイソーの電気用品コーナーに姿を現したハイポジションテープ。
まさか、100円ショップでハイポジが新発売されるとは、カセットテープファンでも多くの方が予想だにしなかった事だと思います。大手電機メーカーが次々にカセットテープの製造から撤退するなか、ダイソーはまだまだ頑張っていました。
当時、再びカセットテープに目覚めた高校3年生の僕は、ダイソーのハイポジのために昼食代を切り詰め、通学路にあるダイソーに寄っては数本買うということをしていました。
見つけては数本買うというほど非常に気に入っていたテープですが、カセットテープファンにはどのように映ったのでしょうか。
残念ながらもう販売はされていませんが、名カセットテープということで今回はダイソーのハイポジションテープを振り返ってみたいと思います。百均カセットテープの黄金時代の最後を飾ったといっても過言ではありません。
これが定価100円のハイポジションテープ!
未開封品の外観
こんな水玉模様のパッケージです。ばっちりとHIGH POSITION TYPEⅡの文字が。
当然ながら、2015年なんてカセットテープの需要はもうありません。細々と汎用のノーマルテープが売られているだけの時代です。なのにハイポジを新発売してくるとは驚きです。恐るべしダイソー。
ちなみに2020年には、ノーマルテープですが再び新商品を発売しました。まだまだ売る気満々なのでしょうか。
高音の表現に優れ、音楽を録音するのに適しています。
ごもっとも。
ハイポジションの強みはヒスノイズの少なさです。おかげでダイナミックレンジが広くなり、微かな音(音楽用語でいうとピアニッシモ)がノイズで消されにくく、特にクラシック音楽には非常に向いています。僕はヒーリング系の曲を聴くことが多いですが、ヒーリング系にもハイポジはかなり有効です。
もう一つ、高音の表現に優れているとありますね。確かに一理ありますが、一応ノーマルテープでも高音が出やすいテープはあります。なのでここでは、ヒスノイズの少なさを最大の利点として推しておきたいと思います。
ここで1つ素朴な疑問が。
「これ、ノーマルテープしか使えないラジカセに入れる人っているのかな?」
なんとなく高品質で低ノイズという謳い文句に誘惑されそうな雰囲気があるのですが…
大丈夫です。安心してください。ちゃんと注意書きがあります。しっかり指でなぞりながら声に出して読んでみてください(笑)
ちょっとカセットテープの事を知っている方なら、きっと気づくと思います。
「ノーマル対応のデッキ」って…そうです。該当するのは地球上ほぼ全てのカセットデッキですw
まぁダイソーのハイポジを買ったことがある人なら、有名なツッコミどころかもしれません。
逆に「ノーマル非対応のデッキってあるのか??」と疑問に思うかもしれませんが、実はあります。いっぺんに4つの音声を録音できるマルチトラックデッキと呼ばれるものがそうです。ただ、完全な業務用機器ですので、ほぼお目にかからないと思います。
カセットテープ本体
全体的に緑色が基調になっています。ケースはハードタイプで厚型なのか薄型なのか中途半端な厚さです。実は2005~2006年ごろに販売されていたflower seriesというダイソーのテープも同じケースでした。
手に持ってみた感じ、ハーフを少し叩いてみた感じでは、特に造りが悪いという印象はありません。カセットテープとしては標準的な造りです。
磁気テープは…
コバルトブラック!
ハイポジらしい黒色です。真っ黒と表現してもよいですが、せっかくなので少しカッコイイ色の名前を付けてみました。ならば、メタルテープなら「メタリックブラック」ですかね。(うーん、なんか地味やな…)
ハーフの頭の部分には、オートテープセレクターで使うハイポジ用の検出孔があります。この穴を使う事で、デッキがハイポジだと自動的に認識する仕組みです。
性能や特性はどの程度?
それでは実際にデッキを使って、性能や特性を見ていきたいと思います。今回、検証に使うデッキはTEACのV-8000S。TEACの最上級モデルで、キャリブレーション(録音感度補正・バイアス調整)を左側と右側で別々に行える優れモノです。
まずはキャリブレーションのツマミを中央(±0)にした状態で、メーターがどう触れるかです。
LEVEL、BIASともに▼の1目盛下まで振れました。メーターで見る限りでは悪くない結果です。この状態であれば、LEVELのツマミを少し右に回せば▼に合います。
LEVELだけ調整すれば概ね▼に合いましたが、若干バイアスを調整する必要がありました。BIASのメーターで▼の1つ上の目盛が点滅していたので、少しだけバイアスを多くした感じですね。
調整自体はすんなりといきました。しかし、これだけでは一体どの程度のポテンシャルを持っているのかわかりません。
そこで、多くのデッキでハイポジの基準テープにされたTDKのSAに登場してもらいます。昔のテープと比べてようやくダイソーのハイポジの真価が分かります。
はたして結果は…
おぉ!意外と近い!
SAの方がLEVELとBIASのメーターともに1目盛大きく振れました。ということは、レベルだけ少し下げてあげれば▼に合いますね。バイアスの設定はほぼ同じで良さそうです。これは凄いです。となればこのダイソーのハイポジションテープ、価格にしては恐ろしい性能を持っていると思います。
正真正銘のハイポジが定価100円です。
ハイポジの低価格帯(SR,CDing2)と比べたら殆ど変わらないようなスペックだと思います。
僕が初めてダイソーハイポジを買ったときは、ラジカセ(一応ハイポジ対応)と、入門モデルのTEAC V-1030くらいしか機材がありませんでした。もちろん、安い機材でも満足に録音を楽しめましたが、今こうやって高級デッキで使ってみると、いかにコストパフォーマンスが最強かを思い知らされた次第です。
ちなみにホワイトノイズ(-20dB)を録音したときの周波数特性はこのようになりました。
なかなかイイ感じです。
録音可能な周波数の範囲が狭いのはV-8000Sの仕様なので仕方がないですが、16kHzまでの音域はしっかりとフラットな特性が出ました。
これだけ綺麗なグラフが出れば、デッキとの相性も◎です。V-8000S以外にも、下位モデルのV-7000やV-5000でも同じような特性を得られると思います。(アンプとヘッドが共通です)
100円のハイポジってどんな音質なのか?
さて、最も気になるのは音質です。今までは無料の音源を使っていましたが、今回新たに生演奏の音源を購入しました。制作会社にもOKを頂いたので、今後はこの音源をメインに使用していきたいと思います。
この記事を公開する前にYouTube動画で先にレビューしましたが、動画だとどうしても音声が圧縮されてしまいます。理想は実際に生で聴いていただくのが一番ですが、せめて生に近い音源でお届けしたいところです。
というわけで、ここでは無圧縮音源でもご紹介します。
お使いの閲覧状況に合わせて、2形式の音声ファイルを用意しました。通信環境が良ければぜひ無圧縮のWAVでお聴きください。
生の音源
まずはカセットテープに録音する前の音源です。他の機器に通さず、生の音源データどのように聞こえるかをチェックしてみてください。
【MP3 320kbps (2.6メガバイト)】
【WAV 96kHz-24bit (40.5メガバイト)】
カセットテープに録音した音
こちらが今回のダイソーのハイポジションテープに、TEAC V-8000Sを使って録音した音です。
【MP3 320kbps (2.6メガバイト)】
【WAV 96kHz-24bit (42.2メガバイト)】
僕が生で聴いた感想ですが、まずヒスノイズが少ないのは利点が大きいですね。そして録音レベルも結構高くとれます。この曲の場合だと+8dBまではギリギリ行ける感じでした。さすが、SAに匹敵するようなポテンシャルを持っているだけあります。
今回はフュージョン系の曲を選びましたが、やはりハイポジにフュージョンは合いますね。ドラムのハイハットといった高音もきれいに入っています。V-8000Sも変に低音が強かったりせず癖のない音質ということで、ベストマッチな組み合わせでした。そこにアナログ特有の音の滑らかさが加われば、最高の録音になると思います。
ちなみに音源購入前には、試聴用のサンプル音源で上手く録音できるかを試していました。ただそのサンプル音源がMP3の128kbpsということでかなり圧縮されています。16kHz以上の音域が完全にカットされている状態です。実際に聞いてみると、ちょっと電子音っぽく聞こえる部分がありますね。これだと、いくらカセットテープに録音してもデジタル音が残ったままでした。
まとめ
さて今回はダイソーの名カセットテープ(一部、迷カセットテープな部分もありましたが…)、ハイポジションテープをご紹介しました。繰り返しになって恐縮ですが、これだけのスペックを誇って定価100円ですからね。恐ろしいです。
今回のテープは正真正銘のハイポジションですが、その前にハイポジもどき(?)、なんちゃってハイポジ(?)という、迷カセットテープが販売されていたそうです。残念ながらその頃はカセットテープから離れていて、今になって買っておけばよかったと後悔しています…持っていたら紹介したかったですけどね。
やっぱりどの業界でも、名○○と迷○○はありますね。鉄道なら名列車と迷列車といった感じでしょうか(;´∀`)
それでは、また。(・ω・)ノ
使用機材
デッキ
・TEAC V-8000S (1991年製)
⇒レンタルでご提供中。詳しくはこちら。
テープ
・ダイソーハイポジションテープ
・TDK SA (1990年ごろ)
使用楽曲
・音作品創作工房ナッシュスタジオ MN-M-0427
動画バージョン