カセットテープってどうやって再生していると思いますか?
デッキやラジカセに入れて再生ボタンを押すと音が鳴る不思議なアイテムです。まぁ仕組みが謎なものは、何でも不思議に思ってしまうのが人間ですが…
今回は初心者向けに、カセットプレーヤーの仕組みをご紹介します。
ちなみにレコードの音が鳴る仕組みは、もしかしたら想像がつきやすいかもしれません。レコード盤に刻まれた溝を針がなぞることで音が出ますよね。(厳密はアンプで音を大きくする必要があります)
では、カセットテープってどうやって再生しているのでしょう?
実はカセットデッキ・カセットプレーヤーは、どんなに安くてもどんなに高級でも、録音や再生に絶対欠かせない部品があります。
クルマに例えるならば、エンジン、ギヤ(トランスミッション)、タイヤ、ブレーキといった部品です。これらは、走るために欠かせないですよね。
このような形で、まずはカセットデッキ・カセットプレーヤーの基本的な部品を勉強してみましょう。
基本構造を確認する
まずはこちらの画像です。カセットテープを入れる部分を覗くとこのようになっています。
最もオーソドックスなもので、基本となる構造です。高級な機種になると余計なものが付いたりしますが、ラジカセや一般的なカセットデッキは、殆どこれと同じと思っていただいて結構です。
カセットテープの録音と再生に重要な部品は、矢印で指している5つの部品です。では、順番に詳しく見ていきましょう。
①録音再生ヘッド
記録された音を読み取る、記録する、消すといった、テープの読み書きをする部品をまとめてヘッドと言います。
真ん中に設置されている銀色のヘッドが、テープを再生するために欠かせない部品です。再生ボタンを押すと、このヘッドが上にせり上がってテープと接触します。
左から右へ送られているテープにこのヘッドを接触させることで、磁気記録された音を電気信号に変換するという仕組みです。
ところで、録音用のヘッドはどこいったのでしょうか? さぁ、探してください。
左側にある黒いヘッドですか?
残念!
正解はこちら。
一緒やないか!
実は、カセットテープの録音と再生は1つのヘッドでこなすことができます。ちなみに、録音用と再生用が別になっているものもありますが、その多くが高級機種です。
ラジカセや高級ではないカセットデッキは、録音と再生を1つのヘッドで兼用するものが多いです。そのようなことから、録音再生ヘッド、もう少し略して録再(ろくさい)ヘッドと呼ばれます。
難しく考えなくても、録音と再生するヘッドを単にヘッドと覚えていただいても差し支えありません。次にご紹介する消去ヘッドが少し特殊なので、こちらは略さずに消去ヘッドと呼ぶことが多いです。
②消去ヘッド
先ほどの録再ヘッドとは別に、もう一つヘッドが付いています。こちらは消去(しょうきょ)ヘッドと呼びます。その名の通り、テープに記録された音を消すためのヘッドです。
録音する時だけに働くヘッドですが、なぜ音を消す専用のヘッドがあるのでしょうか?
身近なもので例えてみましょう。鉛筆を使った書写の授業です。
このようにマスの中に漢字を書きました。
ではここに上から別の漢字を書くとどうなりますか?
このように餓鬼の落書きみたいになります。もう何が書かれてるのか、(書いた本人は判るかもしれませんが)他の人が見たら落書きにしか見えません。ちなみに「気」という字を上から書きました。
では、「磁」を書いたあとに消しゴムで消してから「気」を書くと…
はっきり読めますよね。これと同じ事がカセットテープにも言えます。
消去ヘッドは、まさしく消しゴムの役割を果たします。もし消去ヘッドが無かったら、古い音と混ざって何の曲か分からない状態になってしまいます。
違う音を記録する前に古い音をしっかり消すことで、カセットテープの特徴でもある上書き録音が実現されているというわけです。ただ、実際には一度消してから新たに音が録音されるので、厳密には上書きではないですけどね。
つまり、カセットテープに録音するためには、「音を消す工程」と「音を記録する工程」が必要です。ということで、録音するためのヘッドとは別に、消去専用のヘッドが付いている理由につながっていきます。
③キャプスタン
聞きなれない用語が出てきました。テープデッキ特有の用語です。
キャプスタンは、銀色に光っている金属の棒のことをいいます。先ほどのヘッドは音を読み取る部品でしたが、キャプスタンは再生スピードを決める部品です。
例えばピアノの「ド」の音がテープに録音されていて、再生したら「ド」の音が聞けるのはキャプスタンのお陰です。
キャプスタンは、録音中、再生中、常に同じ速さで回転しています。表現を変えるならば、テープを送るスピードを決めているのが、このキャプスタンです。高級機種になるほど、キャプスタンの回転をより安定させるための工夫がされており、カセットテープ特有の音のたわみが少なくなります。
ただ、キャプスタンだけではテープを送ることができません。キャプスタンが送るスピードを決める役割に対し、次のピンチローラーがテープを送る役割を果たします。
④ピンチローラー
キャプスタンの下側にあるゴム製のローラーを、ピンチローラーと呼びます。テープを、先ほどのキャプスタンと挟み込むことで、常に同じ速度でテープを送る役割を担っています。
もし、ピンチローラーが無かったらどうなるのか…
気になる方は、実は試す方法があります。ただし、安いラジカセをお持ちの方限定です。
再生中に一時停止を半押しにしてみてください。ラジカセによって、できるできないがありますが、再生速度がメチャクチャ早くなります。一時停止を押すと、ピンチローラーがキャプスタンから離れた状態になるので、それを利用した裏技(?)です。
余談はさておき、カセットテープの再生では、常に同じスピードでテープを送り出してあげる事がとても大切になります。
⑤ハブ駆動軸
テープを巻き取る部品です。早送り・巻戻しの時には高速で回転し、再生の時にはゆっくり回ります。
プレーヤーによって、早送り・巻戻しの速度は様々です。例えば60分テープの場合、標準は大体1分で全部巻き取ることができます。しかし、中には1分半以上とメチャクチャ遅かったり、40秒程度で巻き取ってしまう超高速タイプもあります。
テープが回る様子は見ていて楽しいですが、やりすぎてテープを傷めないように気を付けましょう。
まとめ
機種によって多少の構成の違いはあるものの、カセットデッキ・カセットプレーヤーという広い範囲で見ると、構造はみな一緒です。
最後に、今回ご紹介した5つの部分の復習です。
基本はこの5つによってカセットテープが再生されるのですが、高級機種になると高性能な部品になるなどして、音質の向上が図られています。クルマで言うなら、普通車のサスペンションと高級車のエアサスといった感じです。
一概に高級機種といっても、メーカーが違えば設計や音質も違いますので、カセットプレーヤーの個性が表れるところに繋がっていきます。さらにカセットテープの方も、メーカーが違えば音質も違いますからね。
こういった所が、カセットテープ好きの心をくすぐっていると思います。僕もその一人です。(笑)
ではまた(・ω・)ノ