お持ちのカセットデッキやラジカセに、こんな文字が書かれていませんか?
『◁AUTO REVERSE▷』
ひょっとしたら当たり前のように、その機能を使っているかもしれません。読み方はオートリバース。
なになに?自動で後ろに下がる?
「♪オ~トバックスッ!」じゃないですよ(笑)
オートリバースです。
さて今回は、オートリバースの仕組みを簡単に紹介します。
ひっくり返さなくとも裏面を再生できる秘密
ご存知の通り、カセットテープにはA面B面という風に、オモテとウラがあります。
ずーっと録音or再生していって、最終的にテープの終わりがくると自動的に止まります。そうしたら、一旦テープを出して、ひっくり返して、また録音or再生するというのは、カセットテープを使ったことがある方なら当たり前の光景ですね。
ただ、「一々そんなことをするのは面倒。」「録音中にそんなことをしていたらタイムロスだ。」という時の強い味方がオートリバースです。
通常、カセットテープを再生するときは、テープが反時計方向に回っています。そして裏面を再生するときは逆で、時計方向に回ります。
でもテープだけ逆に回したら逆再生になってしまいます。なのに、なぜ裏面を再生できるのでしょうか?
秘密はここにあります。
なんと、ヘッドがくるっと回転します。
カセットテープの表裏は、テープの幅を半分ずつに分けることで実現しています。なので、ヘッドを180度回転させて反対側に記録された音を読み取ってあげれば、カセットテープをひっくり返さなくとも裏面を再生できるというわけです。
別のオートリバースデッキの画像を見てみましょう。
オートリバースデッキのヘッドは、概ねこのような形になっています。①の銀色が録音と再生を行うヘッド、②の黒色が音を消すための消去ヘッドです。
録音の時には消去ヘッドを使うので、消去ヘッドも一緒に回転できるように隣り合わせになっています。これがオートリバース用ヘッドの大きな特徴です。
キャプスタンにも秘密が。
キャプスタンとは、録音or再生中にテープを常に一定のスピードで送りために欠かせない部品です。カセットテープを入れる部分の下の方にある金属の棒です。録音or再生中に回転します。(デッキによっては常に回っているものもあります)
ここにも秘密があります。
オートリバースデッキの場合、このようにキャプスタンが2つ付いています。ポイントは左側と右側で回転方向が互い違いになっていることです。
右側のキャプスタンは向かって左から右へテープを送れるように、左側のキャプスタンは逆に右から左へテープを送れるように回転しています。
一長一短。オートリバースの短所
利便性という長所をもつオートリバースですが、実はいうと短所もあります。利便性と引き換えに音質はやや劣ります。要因の1つとしては、録音と再生を1つのヘッドで兼用している点です。
録音用と再生用でそれぞれ専用のヘッドを設けた3ヘッド方式と比べると、どうしても音質面では一歩譲ることになります。ところが中には、音質と利便性を上手く両立させたオートリバースデッキも存在するため、一概に音質が劣るとは言い切れません。
3ヘッド方式でオートリバースという変態デッキや、ヘッドを回転させるのではなくカセットテープ本体を回転させてしまう魔物デッキも存在します。
ほかにもヘッドの調整(アジマス)がずれやすいという欠点もありますが、非常に専門的になってしまうので今回は割愛です。しかし人によっては、この欠点を嫌ってオートリバースを使わない方もいます。
さて、オートリバースは利便性が長所と紹介しましたが、今の時代はもうその長所は残念ながら薄くなっています。やはり、何百時間と録音できるICレコーダーには勝てません。
そういった事情もあるためか、中古でもオートリバースは不人気です。逆を言えば手に入れやすいという事になりますけどね。ただ、先ほど少し紹介した変態や魔物といった、仕様が特殊なデッキは例外です。
まとめ
カセットテープをひっくり返さなくとも裏面を録音・再生できる秘密。それは、回転するヘッドと、互い違いの方向に回るキャプスタンにあります。
オートリバースデッキの利点は、何と言っても利便性です。自宅のオーディオで楽しむ分には億劫にならないかもしれませんが、カーステレオやカセットウォークマンで片面が終わるたびにカセットテープを取り出すのは、やっぱり面倒ですね。できればA面からB面への切替えもシームレスにしたいものです。
はたまたラジオなどの長時間録音でオートリバースが付いていなかったら、片面が終わったら誰か操作しない限りずーっと止まったままです。かといって、120分テープを使って片面60分録音するのも、ちょっと抵抗があります。これもご存知かもしれませんが、120分テープは薄いですからね。すぐに伸びてしまいます。
残念ながら今はもうオートリバースの長所を発揮するのは難しいです。スマホでどこでも音楽を聴ける便利な今日ですが、その便利さを追求した軌跡にオートリバースがあります。
ではまた(・ω・)ノ