皆様こんにちは、西村音響店の西村です。
いつも音響店のブログをご覧下さり、ありがとうございます。
今回は、音響店の所有デッキである、SONY TC-KA3ESが、
また更にパワーアップいたしましたので、ご紹介します。
音響店のTC-KA3ESを簡単に自己紹介。
初めての方へ、簡単に音響店のTC-KA3ESをご紹介しますと、普通のTC-KA3ESは、録音ヘッドと再生ヘッドが一体型になったコンビネーションヘッドを搭載しているのですが、音響店のTC-KA3ESは、本来は交換出来ない旧型の独立懸架型ヘッドを搭載しています。
独立懸架型ヘッドというのは、1982年のTC-K444、TC-K555ESから始まって、TC-K555(333)ESRまで使われていたヘッドです。僕自身、このヘッドが奏でる重低音の迫力がとても好きで、カセットデッキの愛好者として好き嫌いを申すのはあまり相応しくありませんが、中身まで一新されたESGよりは、古いESR方がお気に入りです。ただ、デザインの面で気に入ったのはTC-KA3ESで、やっぱりあのゴールドカラーには惚れてしまいました。
「ヘッドは旧型の方が良いけど、デザインは新型の方が良い。
どっちも捨てがたい。なら、融合してみよう。」
こんな背景で、コンビネーションヘッドから、旧型の独立懸架型ヘッドへの交換に挑んだのが、音響店のTC-KA3ESです。昨年の4月ごろから改造に挑戦し、それから1年経過しました。改造ができた時の達成感はとても鮮明に残っていますが、その頃は現在の僕より技術力が無かったので、トラブルが頻発しました。でも、腕が上がる度によりベストな調整ができるようになり、KA3ESのコンディションも良くなってきて、就寝前のリスニングで活躍しています。寝る前にイイ音でカセットを聴くと、よく眠れるんです(笑)
ちなみに、旧型ヘッド⇒新型ヘッドの交換なら、ご存知の方は沢山いらっしゃると思います。よく言われているのが、旧型ヘッドは摩耗が早いという大きな欠点を持っているので、修理に出すと新型に交換されるというものですね。しかし、音響店はその逆です。
高級パーツでさらに音質を追求。
再生ヘッドアンプ部分のコンデンサーは、電源平滑にニチコンのMUSE-KZを、信号のカップリングにはPARC-Audioのコンデンサーを採用しました。どちらも電解コンデンサーの中では最高級グレードで、オーディオ用に特化したコンデンサーです。再生ヘッドで拾った信号を増幅するオペアンプは、新日本無線のMUSES8920を採用しました。数ある候補の中から、重低音の響きと、少し硬めの音をチョイスし、このMUSES8920を選択しました。ソケットを取り付けているので、いつでもオペアンプの交換ができるようになっています。
ノイズリダクション周辺の電解コンデンサーは、東信工業のUTSJに交換し、音質だけでなく見栄えにもこだわりました。また、ドルビーS用の回路に表面実装されているオペアンプも、より高性能な新日本無線のNUM8901Eに交換しました。
ライン出力用のオペアンプも交換しました。再生ヘッドアンプと同じ、MUSES8920です。こちらもソケット付きで、いつでも好きなオペアンプに交換することができます。再生ヘッドアンプとの組み合わせを、色々試してみるといった面白いこともできます。
また、オペアンプの近くに水色の電解コンデンサが写っていますが、ここにもPARC-Audio。ノイズリダクションの回路を出た信号をカップリングするためのコンデンサです。信号が通る部分には、とことん高級パーツを使いました。ですが、まだまだブラッシュアップの余地はありますので、今後どうなっていくかが楽しみです。
録音系の部分には、ニチコンのFGシリーズの電解コンデンサー、新日本無線NJM2114Dのオペアンプを使いました。再生のみならず、録音系も改良してイイ音で録音出来るようにしました。
電解コンデンサーを、再生系は「銀色」、録音系は「金色」というように、回路基板を眺めたときの見栄えも意識しました。オペアンプについては、音が通る部分はすべてJ-FET入力のオペアンプにしています。
このような感じで、今回はオペアンプを高性能なものに交換したり、電解コンデンサーを高級品に交換にするといったカスタマイズを行ってみました。1カ月ほど分解したままになっていましたので、久しぶりにKA3ESの音を聴くことになりました。何となく前よりも、低音の迫力が増したような気がします。
カスタマイズ後の音がこちらです。
♪音源を聴く(WAV 96kHz-24bit 86.5MB)
ハイレゾで収録しているため、かなりファイルが大きいですので、再生まで時間がかかる場合があります。
今回は、電解コンデンサーとオペアンプを中心にブラッシュアップを行いました。あと、今後はフィルム系のコンデンサを変えてみて、どう変化するかも実験したいところですね。自分で楽しんでいる部分もありますが、音響店のフルメンテナンスに+α出来ないかどうかの実験も兼ねて、こういったカスタマイズを行っています。
音質の追求だけで終わらないのが、音響店のKA3ES。
こちらは基板を全部取り外したKA3ESです。元々は、こんな感じでしたが…
銅メッキ…ではありません。塗りました。
遊び半分でやってみましたが、けっこう高級感が出てしまいました。
実際に、フラッグシップモデルであるTC-KA7ESは、シャーシが銅メッキになっています。KA7ESは本物の銅メッキですが、KA3ESは銅メッキ「風」。音質に好影響をもたらすかどうかは分かりませんが、定価6万円台のKA3ESが、あたかも9万円のデッキに早変わり。
無意味かもしれませんが、これでいよいよ世界に1台しかないTC-KA3ESに仕上がってきて、前より愛着もかなり湧いたように感じます。クルマでも、純正より自分で弄ったクルマの方が愛着が強くなると思うのですが、まさにそうです。だって、自分で作り上げたマシンですから。
もちろん、ちゃんとデッキの底面も銅メッキ風になってます。銅メッキのカセットデッキって、だいたい高級機種ですから、重たいイメージが浮かぶと思います。でもこれは、銅メッキじゃないし、電源トランスも小さいので、全然重くありません(笑)高級機種がなぜ重たいのかといえば、電源トランスが大きいからなんですね。 電源をより安定して供給するために、余裕を大きく取ってあるのです。
おわりに
今回のKA3ESのカスタマイズは、音質面だけでなくドレスアップまでやってしまいました。オーディオって、音質に目が行きやすいかもしれませんが、ドレスアップもアリだと思います。
ただ正直、今回銅メッキ風にしたのは、普通に使っている時には目に見えないところですので、やっぱり無意味かもしれません。
しかし、自分で修理をやられる方ならキャビネットを開けるでしょうから、開けた時に銅色の輝きが目に入ってくると、安いモデルなのに高級機と錯覚してしまうかもしれません。同じKA3ESでも、自分だけ超豪華仕様?になっているので、ちょっとした自慢ネタになるかも…。
こんな感じで、遊び心も大切にしてカセットデッキを楽しめる方法も模索しています。あのオペアンプは音が良いとか、あのコンデンサはあまり良くないとか、そういった感想を読んで選ぶより、片っ端から実験してみた方が面白いですね。
この度も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。