西村音響店

カセットテープのノイズリダクション戦略―熾烈な賛否の争い。

 

皆さん、こんにちは。こんばんは。

西村音響店の西村です。

いつも音響店のブログをご覧くださり、ありがとうございます。


 

 下記のページで実施中の「ノイズリダクションアンケート」ですが、さらに多く回答が集まり、計51件に達しました。
http://nishimurasound.jp/blog/archives/9540

 皆さんの熱いご意見をお寄せいただき、ありがとうございました。

 集計結果の発表はこれで3回目ですが、今回はノイズリダクション賛否の熾烈な争いというテーマで、使う派、使わない派、両者の視点からお話ししたいと思います。

 

 

5/16現在の集計結果

 1問目は、使ったことのあるノイズリダクションを複数選択する質問です。

 ドルビーBとドルビーCはさすが知名度も高いので、多くの方が経験ありという結果になっています。dbxはやや人数が減って3番目に多い結果になりました。対応機種が限られることが原因だと考えられます。ドルビーSも同様ですが、使われた期間が短いこともあって人数は少なめになっていると思います。

 それ以外のマイナーな方式は少数に留まっています。ただ、東芝やビクターのデッキを使っていた方であれば、adresやANRSの経験があるのではないかと思います。

 

 2問目は、最も多く使ったノイズリダクションを1つ選択する質問です。割合にして、実に86%の方がノイズリダクションを多用していたという結果になりました。

 音質重視でノイズリダクション無しの方が多いのではと思いましたが、この結果は意外でした。

 

 

使う派の意見

 カセットテープでやはり避けては通れないのが、ノイズの問題です。専門的にはヒスノイズと呼ばれます。

 「カセットは音が悪い」という印象がある理由の1つに、このノイズが挙げられると思います。皆さんはそのような事は思っていないと思いますが…

 

 さて、カセットテープのノイズを解決するために登場したのが、ノイズリダクションシステムです。

 ノイズを減らすために使うのはもちろんなのですが、もう少し言い方を変えると、

 

ダイナミックレンジを稼ぐため。

 という目的でノイズリダクションを使うという見方もありますね。

 

 ヒスノイズを目立たなくさせるには、録音レベルを出来るだけ大きく取ることが必要です。しかし、カセットテープにも限界があります。録音レベルをMAXにしたら、1本1万円のテープでも流石に歪んでしまうことでしょう。

 となると、上が駄目なのであれば、下を攻めるという戦略になります。ノイズリダクションの出番です。

 

 図で表すと、このようなイメージになるかと思います。

 +2dBで歪んでしまう点はさておき… +2dB以上で歪んでしまうのであれば、-50dB以下に目立つノイズを減らすことが有効です。

 より強力なノイズリダクションを使えば、ノイズがより減ってダイナミックレンジを広く取れます。

 

 特に音の強弱の差が大きいクラシックは、ダイナミックレンジが重要になってくると思います。あまりノイズが多いと、楽器の余韻と入れ替わりでヒスノイズが徐々に聞こえてくることでしょう。

 僕ですと、最近は癒し系のピアノソロを聴きます。ピアノソロもヒスノイズは大敵です。ですので、より強めのドルビーCを使っています。

 ヒスノイズが耳に触ると癒されないどころか、若干ストレスになります…だったらCDで聴けばいいじゃん(爆)

 

 さいごに、こんな意見も頂きました。

 

ノイズを低減させるために開発された技術だから
使わない手はない。

 

 ごもっともです。

 もし、カセットテープにノイズが全く無かったら、そもそもノイズリダクションは開発されていないでしょう。もしかしたら、歴史も変わっていたのかもしれません。

 

 

使わない派の意見

 いくらノイズを減らせるからといって、利点だけではありません。必ず欠点があります。

 今度は、使わない派の視点に回ってみましょう。

  

 ノイズリダクションを使うことにより、ネックとなるのが音質変化です。特に、息継ぎ現象(ブリージング)の発生には気を遣う部分ではないでしょうか。録音したデッキと違うデッキで再生した場合は、息継ぎ現象が発生しやすいです。

※息継ぎ現象・・・音の余韻が強制的に消されてしまうような状態。例えば、シンバルを叩くと暫く余韻が続きますが、この余韻がすぐに消えてしまうような現象をいいます。

 さらに、ノイズの低減効果が強くなるほど、やはり息継ぎ現象が発生しやすくなります。

 ドルビーCで録音して他のデッキで再生しようとすると音がおかしくなる、という話はよく聞きます。

 

 そのため、ノイズリダクションを使わないという選択肢があります。

 純粋にカセットテープの音を楽しむのであれば、これが正解なのかもしれません。

 

 カセットテープにどっぷり浸かっている方は、ヒスノイズも演出の1つだと捉えてしまうのではないでしょうか。

 リーダーテープから磁気テープの部分に移ると、「シー」という音が大きくなりますよね。この瞬間が、「いよいよ来るなっ!」という高揚感をくすぐられます。これは、カセットテープでしか味わえませんね。

 僕が小学生のころ、ラジカセで遊んでいた理由の1つに当てはまるかもしれません。その時はドルビーなんて知りませんでしたから(笑)

 
 
 ドルビーを知らないでいると、ノイズはあって当たり前という感覚になります。

 

 

賢く使い分ける

 ノイズリダクションを使うにしても使わないにしても、利点・欠点はあります。

 ノイズを減らせば減らすほど、音質変化のリスクが大きくなり、トレードオフの関係になっていると言ってもよいと思います。

 

 物理的にノイズを減らしたいのであれば、ハイポジを使うといった策が良いでしょう。

 メタルでも減らせますが、メタルはどちらかというと録音レベルを大きく取ってダイナミックレンジを稼ぐという意味合いが強いです。

 つまり、上を攻めるのがメタル、下を攻めるのがハイポジです。

 ノーマルは?というと、標準的なグレードのテープであればノイズリダクションを使って下を攻めて、高級グレードであれば上を攻める、といった戦略でしょうか。

 

 いずれにしても、状況によって策を使い分けることが、カセットテープに良い音で録音するために必要な事だと思います。

 
 
 加えて、使い分けのポイントとなるのは、使うデッキよる都合ですね。例えばデッキがドルビーCに対応していなかったり、dbxが対応していなかったりと、機種や年代で異なります。

 となると、ドルビ-Bが最も対応機種が多いのでドルビーBを使う、という戦略もあります。

 dbxはもの凄く低減効果が強力ですが、対応しているデッキが限られるところが弱点です。ドルビーSも同様ですね。マイナーなものでは、ビクターのANRSや、東芝のadresなどがあります。

 

 

まとめ

 カセットテープの音質を左右する、ノイズリダクション戦略

 ヒスノイズをどう攻略するかが、アンケートで伝わってきました。ありがとうございました。これからもカセットテープが存在する以上、この戦略は続きます。

 イイ音で録音するために色々考えさせられるのがカセットテープですね。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

 

 

 

  

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