SONY TC-KA7ES(黒) クォーツなのに音揺れが酷いのはなぜ?

 

こんにちは、西村音響店でございます。

年を追うにつれて価格が高騰している1台に、TC-KA7ESがあります。下手すれば中古でも定価と数万円ほどしか変わらないというプレミアっぷりです。やはりソニーのマジックナンバー「7」の力なんでしょうか(笑)

今回はワウフラッターが酷いという症状で入ってきたデッキをご紹介します。タイトルの通り、クォーツロックを使っているのでそこまで酷いのかな?と思ってしまいました。

しかし実際に電源をONにしてみると、何やら異音が…

これはどこか怪しいです。

 

 

異音の正体を探る

部屋を静かにしてデッキに耳を澄ませます。

するとなにやら、

 

「キュ キュ キュ キュ キュ キュ キュ キュ キュ キュ…」

 

小さくこんな音が聞こえてきます。

音がなる周期(リズムの速さ)からして、キャプスタンの辺りが怪しいと予想します。

さらに詳しく見ていくと、原因の場所にたどり着きました。

ここです。

目を凝らしてみると、どうやら黄色で示した部分にある速度センサーの基板に接触している模様です。

右側(巻取り側)キャプスタンのフライホイールには、回転速度を検知できるようにマグネットが付いています。真上から見ていていると、何故かその磁石が何故か左右揺れています。

普通はセンサーの基板と接触するはずはないので、ただ基板の固定が緩んでいるのではと予想して分解することにしました。

 

 

ひとまずメカニズムを完全に分解して、部品の洗浄や潤滑を済ませます。

ここまでは何ら変わりない修理の光景です。

今回のTC-KA7ESは既に修理されていて始めから動く状態でしたが、この機会にリフレッシュしました。多くの場合はベルトが伸びたり切れたりして、再生ができなくなってしまった状態から修理に入ります。

 

さて、問題の異音の原因を探しましょう。キャプスタンの周辺であることは、周期的な異音の鳴り方からして確定です。

まずはキャプスタンの部分を分解してみます。

冒頭でご紹介した原因と思われる部分を分解して確認してみると…

これは一体!?

茶色い傷が入っています。間違いなくキャプスタンのフライホイールが当たっていたことでしょう。

今までこのような現象に遭遇したことがなかったので、経緯がピンと思いつかずこの記事を書いている時点でも不可解なままです。

経年で磁石が歪んでしまうことは考えにくいですし、まさかの不良品が出荷されてしまったなんて事も考えにくいですし…

残念ながら、不可解なままです。

 

一旦左側のキャプスタンを外して右側だけ装着して手で回してみます。どこかに引きずっていれば回転が早く止まってしまうはずです。

すると、キャプスタンの先端を下に向けると回転が早く止まってしまいますが、天井方向に向けると何故かスムーズに回ります。

センサーの基板を固定しているネジを増し締めしてみると、ほんの少し回ししろが残っていました。とりあえずこれで組み立ててみて様子を観察することにしましょう。

 

 

試運転していたら新たな問題発生!?

さて、再び良い音を鳴らしてくれるようになったTC-KA7ES。

ただここで直ったからといって安心してはいけません。もしかしたら何か問題が発生するかもしれないので、1週間くらいは様子を見ます。実際は1ヶ月くらいお預かりするので、2~3週間くらい様子を観察できます。

1週間経過しても問題なく良い音を聞かせてくれているので、これでもう安心です。

 

・・・

 

「キュ キュ キュ キュ キュ…」

 

もしやこの音は…

 

残念なことに、またあの音です。再び鳴りだしてしまいました。

今度は音揺れが顕著に表れるほどではありませんが、やはりこの音は不快です。

ここでキャプスタンを傾けると回り方が変わることを思い出し、ダイレクトドライブの基板を少し指で押してみると音が大きくなりました。

 

ひとまずダイレクトドライブの基板を固定しているネジをほんの少しだけ緩めて、異音が鳴らないように処置をして様子を見ることにしました。

出来ればキャプスタンを移植してしまいたいところですが、ドナーとなるデッキにも数に限りがあります。もし再発したら最終手段として移植を行うことにしましょう。

しかし、マグネットが左右に揺れてしまうのは何故か僕もわかりません。デッキによって多少個体差があることは確認していますが、部品を引きずるまでのものは初めてです。

 

 

録再ヘッドの状態は無事どころか素晴らしい。

TC-KA7ESに使われている録再ヘッドは一見普通のコンビネーション型ですが、ご存知の人はご存知、金メッキが施されているちょっと特殊なものです。

違う所は金メッキだけかと思いきや、なんと内部のコイルに巻かれている銅線に6N鋼と呼ばれる電気の伝導率に優れるものが使われています。

したがってもし劣化で駄目になった時に移植は難しいという難点があります。金メッキでなくてもよければ無理やり移植できますけどね。しかしそれではKA7ESである意味がなくなってしまうので悩ましいところです。

今回のKA7ESは幸いにも素晴らしい状態で生き残っています。

素晴らしい状態とは、ヘッド表面が摩耗していないというだけではありません。カタログ値通りの周波数特性が出ていて初めて素晴らしい状態と呼んでいます。

実際にホワイトノイズを録音してみると、このような結果が出てきました。

緑線が左ch、赤線が右chです。2本の線が終始重なっています。これが理想的な特性です。

KA7ESのカタログスペックは、メタルテープで20~22000Hz ±3dB(-20dB録音)となっています。実測でもその音域が録音されているということは遺憾なく性能が発揮できているといってよいでしょう。

 

では、もしヘッドに劣化があった場合はどうなるというと、下のようなグラフになります。

デッキの機種は伏せますが、これは左chに劣化があるパターンです。周波数が高くなるにつれて、右chとの差が大きくなっていきます。

もっと酷いものとしては、両chとも高音域が出なくなってしまうパターンもあります。

ヘッドが摩耗したから高音域が出にくくなったという話は何となく想像しやすいと思いますが、どうやら摩耗だけの問題ではなさそうです。劣化というよりもダメージという表現の方が近いかもしれません。

このような劣化の減少をさらに詳しく調査すべく、専門書などを漁って原因を追究中です。そのために僕にとって図書館はなくてはならない施設です。大学卒業後もお世話になると思います。

 

 

まとめ

今回は年々希少価値が高まるTC-KA7ESで、ちょっと珍しい不具合をご紹介しました。

故障の判定でポイントとなったのは、どのくらいのテンポで異音が周期的に鳴っているかをチェックすることです。

カセットデッキはキャプスタンの他に、ピンチローラーや巻取り軸など、回転する部分が多くあります。今回のように比較的テンポが速ければキャプスタン周辺、遅ければピンチローラー、といった感じで異音が故障箇所を探すためのヒントになります。

もしお持ちのデッキで何か異音が発生したら、音がなるテンポに注目してみてください。

【このデッキの音質】
1000ZXLで録音したスーパーメタルマスターを再生


機材協力:北海道 高野さま