電解コンデンサーが激しく劣化するとこうなる。カセットデッキも稀にあり。

 

みなさん、こんにちは。西村音響店です。

このブログでは、いつもはカセットデッキが主役の記事をお送りしていますが、今回はちょっと違います。カセットデッキは脇役。主役はなんと電子部品、電解コンデンサーです。

電解コンデンサーというと、電子工作ではお馴染みの部品です。もしかしたら、中学校の技術家庭科でも触っているかもしれませんね。ゲルマニウムラジオが懐かしいです。

 

さて、今回のカセットデッキは1982年製のAKAI GX-F71をご用意しています。でも実はこのデッキ、カバーを開けて点検すると、なにやら怪しい電解コンデンサーが1つ。

このまま放置したら…

 

 

電解コンデンサーから怪しい白い粉が…

怪しい白い粉というと、所持していたら捕まるアレを想像してしまいますが、違うので安心してください。

ただ、怪しい粉には変わりありません。

 

さて、機種にもよりますが、カセットデッキには100個前後の電解コンデンサーが使われています。中には200個近く使われているデッキも存在します。

今回のカセットデッキは1982年製ということで、電解コンデンサーもその頃に製造されたものが付いています。長くても15年とすべき寿命を過ぎているどころか、とうに2倍以上の年月が経過しています。

それでも電源を入れれば、見た目は普通に使えてしまうので驚きです。

ポリ袋に入っているのは、取り外した古い電解コンデンサーです。ぎっしりと詰まっているわけですが、怪しい電解コンデンサーが1つ入っていました。取り出してみましょう。

 

よく見ると、本体を包んでいるフィルムがぐにゃぐにゃになっています。どう見ても何かが悪さをしたに違いありません。さらには、頭部に白い汚れが。

そして、電解コンデンサーの端子部分を見てみると、こうなっていました。

 

中に封入されていた電解液が蒸発して出来たと思われる白い粉が付着しています。この粉を持ち歩いていたら、きっと職質で検査されるでしょうね(笑)

※電解液が蒸発する現象はドライアップと呼ばれます。

 

電解コンデンサーが劣化といったら、パッと思いつくのが「容量抜け」です。劣化が進むと、電気を蓄えられる量が少なくなってしまいます。

この電解コンデンサーの元々の容量は4700μF。電源を安定させるためのコンデンサーということもあって、大容量です。

※μF・・・コンデンサーの容量を示す単位。マイクロファラドと呼びます。

はたして、どれくらい容量抜けしてしまっているのか、恐る恐るテスターで測定してみましょう。

このコンデンサーが付いていた時でも、普通に電源は入りました。なので、それ程抜けてはいないだろうと思ったら、半分どころか、3分の1しか容量が残っていないではありませんか。これには僕自身もビックリです。

もっと恐ろしいのは、電源は入るので普通に使っている分には劣化に気づかないこと。卓越した予感能力を持っている人なら直感が働くかもしれませんが、僕でもカバーを開けて点検しなかったら気付かなかったと思います。

 

でも1つ、実は気になっていた現象がありました。電解コンデンサーを交換する前、「何となくテープの巻戻しが遅い気がする…」と思いながら様子を見ていました。

それでも一応テープは回るので、別に異常はなさそうに見えましたが、いざコンデンサーを交換してみると、やる気スイッチが入ったのか勢いよく回るようになりました。

見事に容量抜けの影響が現れていました。容量抜けで安定した電圧を保てず、例えば通常12Vのところが、平均7Vくらいまで下がっているような状態です。

いやぁ、気づいて本当によかった…(冷汗)

 

 

これほど劣化するには何かある!

ひとまず、新しい電解コンデンサーに交換することで解決はできました。しかし、なぜあのコンデンサーだけ激しく劣化していたのでしょうか?

今回のカセットデッキには、大容量の電解コンデンサーがいくつか使われていますが、例の1個以外は、粉が噴き出すほどの劣化はありませんでした。

ところで、先ほどコンデンサーのフィルムがぐにゃぐにゃになっている画像をご紹介しました。何かで溶けたような外観。これから考えられるのは、やはり「発熱」です。

 

というわけで、今度は劣化したコンデンサーが付いていた部分の温度を測ってみましょう。テスターに専用のリードを装着し、新品のコンデンサーの頭に当てて測定してみます。

はたして結果は…

けっこう暖かい。でも、触り続けるのはちょっとしんどいです。油断すると低温やけどになるかもしれません。

 

電解コンデンサーの劣化を予測する方法に、「アレニウスの法則」あるいは「10℃2倍則」があります。(詳しく知りたい方は検索してみてください。)

後者の方が、分かりやすい名前ですね。名前からイメージできるように、温度が10℃変わると劣化スピードに倍の差が出るという法則です。

例えば、電源を入れて33℃を保っている電解コンデンサーと比べたら、粉を噴いたコンデンサーは倍のスピードで劣化が進行するということになります。

 

ところがどっこい。

実は更に熱くなっている電解コンデンサーがありました。ちょっと気になって隣の電解コンデンサーの温度を測ってみたら…

なんと46℃。

こちらはもう暖かいというレベルではないです。熱いです。明らかにこちらの方が早く劣化すると思うのですが、幸いも白い粉が噴き出すようなことにはなっていませんでした。

「先ほどの4700μFの方が不良品だったのでは?」とはあまり疑いたくなるところですが、さすがに1982年製のコンデンサーとなれば、確率的に考えても壊れるのは不思議ではないと思います。

もしかしたら容量抜けしている最中にもっと温度が上がっていたかもしれません。

電子工学の専門家ではないので詳しいことは分かりませんが、熱で劣化すると電解液が漏れ出す確率が高くなってくるのではないかと思います。

もちろん電解コンデンサーの中でも種類は豊富にあり、劣化の進行スピードや寿命に差があります。いずれにしても共通して言えるのは、熱が与える悪影響は非常に大きいということでしょう。

電解コンデンサーに限らず何でもそうですが、熱は寿命を縮めます。特に今の日本の夏は、昔と比べて熱さが違いますからね。もはや「極暑」ではなく「獄暑」です。人間にとっても、カセットデッキにとっても、過酷な環境になっています。

 

 

回路設計によっては激しく劣化が進むことも

電解コンデンサーは、別名ケミコンとも呼ばれています。

ケミは、ケミカル(chemical)のケミ。電子部品の中で唯一、化学物質を使っています。そのため寿命も短いです。

年月は進み、往年のカセットデッキはいよいよどれも製造から30年を経過する状況となってきました。

古い電解コンデンサーを無作為に選んでチェックしていると、幸いなことにも、大きく容量抜けをしているコンデンサーは少ないです。

もちろん容量抜け以外にも、充放電の時に電気の流れが悪くなる(ESRの上昇)という劣化もありますので、安心はできません。少なくとも30年も経っていれば何かしらの劣化はあると思われます。

※ESR = 直列等価抵抗

しかし、今回ご紹介した熱による劣化は、カセットデッキの生存に大きく影響する問題だと考えています。

温度を測定して分かったように、新品の電解コンデンサーに交換してもあれだけ発熱するという事は、電子回路の設計に原因がありそうです。

 

もし交換しないままにしたら…

 

実際にどうなるかは怖くて実験できないですが、少なくとも何かしらの悪影響を及ぼすでしょう。カセットデッキの動作に必要な血液とも例えられる電流が異常になって、次々と電子部品を壊していくかもしれません。

今回、無事に気づいて安堵しました。

 

今後も色々なデッキと接しながら、今回のようなアッツアツの電解コンデンサーが潜んでいないかを確認していきたいと思います。もしデッキに今回のような電解コンデンサーが潜んでいたら、例え新品に交換しても注意しながら付き合っていく必要がありそうです。