SONYのカセットデッキがお好きな方であったり、詳しい方ならきっとご存知かと思います。
それは…
2種類のレーザーアモルファスヘッド。
今回は3ヘッド方式に限定した話になりますが、2種類あります。
①昭和生まれのデッキに搭載されていた独立懸架型ヘッド。
②平成生まれのデッキに搭載されていたコンビネーションヘッド。
そしてきっと、前者は摩耗しやすいという話もご存知かと思います。なので、昭和生まれのデッキでもコンビネーションヘッドに交換されている事もあります。
さて、ここで一つ疑問が浮かびました。
「コンビネーションヘッドに交換されてるなら、逆もできるじゃないの?」
そんな率直な疑問から、今回はコンビネーションヘッドを独立懸架ヘッドに交換するお話です。もう交換というよりは、改造です…
CAUTION:
ご自身で挑戦する方は、どうぞ自己責任でお願いします。万が一、デッキが故障したり、火災や感電などの事故が起きたりしても責任はとれません。それよりも改造は強くおススメしません。
交換はできた。しかし、道のりは長かった…
最終的にはこのような感じで無事にTC-KA3ESのメカニズムに装着できました。
ヘッドを固定するネジの位置が同じなので、ポン付けできそうです。
あとは調整さえしてあげればOKと、自分でデッキを修理している人にとっては結構簡単に見えますが…甘かった。
なぜか逆はできない!
なぜなんでしょう?
実は、ヘッドをメカニズム側に取り付けるための台座に違いがあります。比べてみると、少し形が違うのです。
したがって、独立懸架用の台座をそのままKA3ESのメカニズムに取り付けようとしても、他の部分と干渉しまって不可能です。ヘッドが上がらなくなってしまいます。
「これじゃ無理ですわ…」
しかし、ここで諦めるのは早計です。
かくなるうえは強硬手段。
削る!
実は独立懸架ヘッドはこのように、録音ヘッド・再生ヘッド・台座と3つに分解することができます。
そして当たる部分をミニルーターでひたすら削ります。
削る面積としてはたった1センチ平方ですが、1日では終わりません。先端ビットがダイヤモンドにも関わらず全然削れていかないので、気が遠くなります。相当固い金属です。
不眠不休でぶっ通しで作業すれば1日で終わるかもしれませんが、きっとその前にミニルーターが煙を噴きます。
一気にキレのある音に変化。
独立懸架ヘッドとコンビネーションヘッドでは音質が結構違います。もちろん音の感じ方には個人差がありますが、コンビネーションヘッドの方が音が少し丸いです。
僕はこの丸い音がどこか好きになれず、無理やり独立懸架ヘッドに載せ替えというわけのわからない事を決行してしまいました。
結果的には想像していたような音と近い感じになって、結構気に入っています。
コンビネーションヘッドも良い点はあります。摩耗に強いのはもちろんですが、音の繊細さではコンビネーションヘッドの方が優れていると思います。独立懸架ヘッドはちょっと荒っぽいです。
【コンビネーションヘッド】
【独立懸架ヘッド】
音源:魔王魂
改造後に失うもの
最後に、独立懸架ヘッドに載せ替えた後に起きる最大のデメリット。
ソニーは元々からドンシャリ傾向な音質にありますが、さらにドンシャリが強くなります。それによって、録音がまともにできなくなります。特にキャリブレーションは全くダメです。
中にはテープの特性で上手く補正されて録音できるものもありました。TDKのMA・SA(どちらも1990年頃のテープ)あたりは問題なさそうでした。SONYのMetal-ESは逆に全くダメです。
ということで、半分再生専用デッキという状態になっています。
元々のアンプの設計と大きくずれることになるので、これは仕方ないです。車をチューニングしてパワーアップするのはいいけど、街乗りしにくくなるといった感じと同じです。
『何かを得たら何かを失う』
改造ってそんなものだと思います。
今回ご紹介した改造ですが、独立懸架ヘッドは1984年のTC-K333ESから移植しています。
応用すれば、S&Fヘッドに載せ替えることも不可能ではありませんが…
まぁこれくらいにしておきましょう。むやみやたらにデッキを生贄にするのは、あまりよろしくないです。
本当にボロボロでもうレストアのしようがないというデッキがあれば、再び挑戦もありでしょうか(笑)