西村音響店

カセットデッキのアジマス◇調整の仕組みを解説・言葉だけじゃムズイ!

 

色んなカセットデッキを色々並べて楽しんでいると立ちはだかる問題の1つ。それがヘッドのアジマス調整です。

テープに記録された音を漏れなく拾うため(一言でいえば音質改善)に欠かせない調整ですが、この「アジマス(Azimuth)」という言葉が非常に厄介です。

しっかり説明しようとすると見事な小論文が出来上がってしまいます。ちなみに直訳すると「方位」という意味になるのですが…「ヘッドの方位」と言われてパッとイメージが膨らむ人は、きっと神がかった空間能力の持ち主です(笑)

ですので、僕は全部一括りにして「アジマス調整=ヘッドの調整」と説明するようにしています。

さて、一体アジマス調整ってどんな事をいうのか、今回はこれを少し解説してみたいと思います。


◆CAUTION!
ご自身で挑戦される場合は自己責任で行ってください。万が一、音質が元に戻らなくなったり、デッキの調子が悪くなったりしても、申し訳ありませんが責任はとれません。

 

ネジを回すとヘッドがどう動く?

早速ですが、問題です。

こちらのヘッドの場合、AとBどちらのネジを回すとアジマスを調整できるでしょうか?

 

バネが噛まされている方のネジを回すと、バネの伸縮に連動してヘッドが動きます。

例えばネジを締めると、向かって奥の方へバネが縮まっていきますので、それに連動してヘッドも奥の方へ動きます。

一方、左側のネジにはバネが噛まされていませんので、ずっと固定したままです。ネジを回しても調整はできません。

つまり、左側のネジの部分を支点にして、ヘッドの右側だけが奥の方へ動きます。

 

 

…う~ん、やっぱり言葉だけ説明するのは難しい。

 

ならば視覚的に説明してみましょう。

真上からの視点でヘッドがどのように動くか、アニメーションを作ってみました。

カセットデッキのアジマス調整の仕組みアニメーション

実際はこんな極端にネジを回すことはありませんが、テープに対して少し斜めになります。この角度を調整するのがアジマス調整です。

 

 

ネジが3つも付いている!どれを回せばよい?

先ほどの例は、ヘッドを固定しているネジが2個でしたが、今度は3個のタイプです。

さて、ネジが3個の場合、どのネジを回せばアジマス調整できるか。ですが…

 

やっぱり言葉で説明するのが難しい!

(半分めんどくさいというのもありますが…笑)

 

なので、図にまとめました。全部で4パターンあります。赤丸が付いているネジがアジマス調整用のネジです。

アジマス調整でどこのネジを回す?

赤丸が付いていない残り2個のネジは回さない方がよいです。これらはアオリ角度や高さを調整するためのネジで、テープの走行に影響してきます。

簡単に説明すると、ヘッドを手前側あるいは奥側に傾けたり、ヘッドの水平を保ったまま手前や奥に移動したりする調整のことなのですが…僕でも非常に難しいです。もう熟練工のレベルになってしまいます。

 

実は、デッキのキャビネットに調整方法が記されているものもあります。こちらはソニーのTC-K777のキャビネットで、ひっくり返すと親切にアジマス調整のやり方が書かれています。
TC-K777のキャビネット裏にある説明書き

 

どうしてもという時だけほんの少し弄る。

ヘッドはテープに記録された磁気信号を電気信号に変える大切な部分です。アジマス調整が上手くできると、想像以上にクリアな音になることもあります。

もしかしたら、この感動が仇となってアジマス中毒を引き起こすかもしれません。ナカミチのDRAGONに付いているNAAC(自動アジマス補正機能)みたいなことを試みようとしていたら結構な中毒です(笑)

自動でアジマス調整するナカミチDARGON
自動でアジマス調整するナカミチのDARGON

 

しかしながら、アジマス調整は間違うと音質を大きく損なうリスクがあるため、積極的なおススメはできません。

確かにアジマス調整したらそのテープはイイ音で再生されるかもしれませんが、今度は他のテープが上手く再生されなくなる可能性があります。すると、また調整しなくてはならなくなります。

結果的にいちいち調整する羽目になって、アジマス中毒になってしまうかもしれません(笑)

音質をさらに良くするためにアジマス調整で追い込むということは慎みましょう。

 

音が籠りすぎてどうしても聞けないというときに、ちょっとだけネジを回してあげる程度にした方が安全です。回す角度で言うと30度まで。無暗にやたらにネジをぐるぐる回すのは、元に戻せなくなって危険です。

万が一元に戻せなくなっても、調整用のテストテープという必殺兵器はありますが、入手は困難です。稀にオークションにも出てきますが、価格は何千円単位、状態のいいものは1万円以上するかもしれません。

 

繰り返しになってしまいますが、たかがネジを回すだけの調整ですがリスクを伴います。積極的にはおススメできません。

それでもトライするという方は、しっかり予習をして、どうぞ集中して臨んでください…

 

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