西村音響店

じきに磁気を帯びる!―ヘッドイレーサーを使った消磁のやり方

カセットデッキのいろは 第46回
 

どうもこんにちは、こんばんは。西村音響店の西村です。

音響店のブログをご覧くださり、ありがとうございます。


 

カセットデッキの再生ヘッドは、
じきに磁気を帯びます!

 

汚れが付着したら綿棒やクリーニング液で掃除をしたりするのは、いつも行っているかもしれません。お勧めはできませんが、クリーニングテープを使う方法もあります。

でも実は、汚れを掃除するだけでは足りません。

消磁が必要です。

カセットデッキの再生ヘッドも、しょせんは鉄を含む金属ですから、文房具のクリップと同様に磁気を帯びてしまいます。

そのまま再生すると、ちょっと悪影響が出てしまいます…

 

 

ヘッドイレーサーを使って消磁しましょう。

早速ですが、消磁のやり方をご紹介します。

ヘッドイレーサーには、金属棒を近づけるタイプと、カセットテープの形をしたタイプの2種類があります。

今回は、前者のタイプでご紹介します。

 

消磁の準備をしましょう。

カセットデッキを扉(カセットホルダー)を開いた状態で電源を切りましょう。

 

手順1:
カセットデッキから離れた位置で電源を入れる

目安としてデッキから30cm以上離してください。

 

手順2:
ゆっくり再生ヘッドに近づける

電源をONした状態で、ヘッドイレーサーの先端をゆっくり再生ヘッドに近づけます。

 

手順3:
ヘッドの表面に触れないように、左右に動かす。

ゆっくり左右に5回ほど動かします。先端がヘッドの表面にギリギリ触れないところまで近づけると、より消磁の効果を得られます。

 

手順4:
ゆっくり再生ヘッドから離す

近づける時と同様に、ゆっくりと再生ヘッドから、カセットデッキから離してください。

 

手順5:
電源を切る

電源を入れる時と同様に、デッキから30cm以上離れた位置で電源を切ります。

 

★消磁のポイント

 

イレーサーは、ゆっくり動かす。

 

特に消磁中の時です。

ヘッドイレーサーの先端からは、磁気がN極とS極が絶えず入れ替わって出ています。これを交流磁気といいます。

実はカセットテープの消去も同じ仕組みで、テープ交流磁気を与えることで消去します。

ただし、中途半端に与えただけでは消磁しきれません。テープで言えば音が残ってしまったり、再生ヘッドで言えばかえって磁気を帯びさせてしまう原因になります。

ですから、ゆっくり動かし、十分に交流磁気を与えてあげることが大切になってきます。

念のため、キャプスタンも同様の手順で消磁しておくと、よりOKです。

 

なぜ消磁が必要なのか?

再生ヘッドが磁気を帯びると、高音域が出にくくなったり、僅かながらテープの音を消したりする現象が起きます。極端な例を挙げれば、先端が磁石になっているドライバーを常に接触させているような状態です。

もうご存知かもしれませんが、カセットテープに磁石を近づけたら、音が消えてしまいます。

 

では、なぜ再生ヘッドは磁気を帯びるのでしょうか。

 

再生ヘッドが何の素材で出来ているかがポイントです。実際には主に5種類の素材がありますが、共通していえるのが『』を含んでいることです。

鉄は磁石になることは、たぶん小学校の理科で習ったと思います。再生ヘッドも同じで『鉄』を含んでいる以上、磁気を帯びてしまいます。

 

どのくらい強く磁気を帯びるかを表すのに保磁力という値があります。この値が高いほど強く磁気を帯び、消磁するには強い磁気エネルギーが必要です。

メタルテープが良い例でしょう。安いラジカセでは音が消えないのは、消去に必要なエネルギーが足りないためです。

 

カセットテープは磁気で記録しなければならないので、保磁力はある程度必要です。しかし、再生ヘッドは逆に出来るだけ0(ゼロ)に近い方が理想です。

でも実際は、ゼロではありません。ですので、僅かではありますが磁気を帯びてしまいます。

 

2ヘッドデッキでも消磁は必要?

僕は、必要だと思います。

2ヘッドデッキは、録音と再生を1つのヘッドで兼用しています。録音モードにすれば、ヘッドに交流のバイアス電流が流れます。バイアス電流は、テープを消去するのに使われますので、これをヘッドの消磁に利用できると思います。

ただし、しっかり消磁をするのであれば、ヘッドイレーサーは必要です。

 

もし、ヘッドイレーサーを使わずに消磁をするのであれば、カセットを入れない状態で録音状態にします。すると、メタルテープで使う強い交流バイアス電流がヘッドに流れ、消磁効果が得られると思います。

ですが、この方法はコツが要ります。普通は、カセットテープを入れないと操作ができません。

そのような事もあって、2ヘッドデッキでも、ヘッドイレーサーは必要だと考えています。

 

3ヘッドデッキは絶対に必要です。再生専用のヘッドに交流バイアス電流が流れることはないため、常に磁気を貰いっぱなしの状態になっています。

再生するたびに、どんどん磁化されていきますので、定期的に消磁をしましょう。頻度は50時間に1回が目安とよく言われています。

 

まとめ

今回は『消磁』についてのお話でした。

ヘッドイレーサーは必要と言われてはいるのですが、なぜ必要なのかを知るとより必要性を感じると思います。

ヘッドの汚れと違って、徐々に序に音質が悪くなることに気づきにくいのが、ヘッドの帯磁です。

カセットテープの音を痛めてしまわないように、ぜひ定期的に消磁を行いましょう。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

 

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